インタビュー

【初心者向け】仕事での生成AI活用入門 – 基礎知識からおすすめツール、実践プロンプトまで-

「AIを仕事で活用したいけれど、どうしたらいいか分からない」「取り入れてみたけど挫折してしまった」そんな方は少なくないのではないでしょうか。調べてみても情報がたくさんあり、何が正しいのか見極めるのも一苦労です。そこで今回は生成AIの活用術を発信する杉田海地さんに、仕事に生成AIを取り入れる方法やおすすめのツール、具体的なプロンプトまで詳しく教えていただきました。

杉田 海地 さん
「なくてはならない」を創る|法人向け生成AI活用支援|「ChatGPT活用チャンネル-杉田海地-(登録者9,500人)」運営|法人向けに生成AI社内研修、講演を展開|その他複数社顧問|同志社大学→法人向けSNSマーケティング支援で独立→法人向けAI導入活用支援 & YouTubeチャンネル 開設
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生成AIを仕事で活用するための基礎知識

「生成AI」と一口に言っても幅広く、例えばテキスト生成AIや画像生成AI、動画生成AIなど沢山あります。その中から自分の仕事で生成AIを適切に活用していくために最も重要なのは何だと思いますか?生成AIを制御するための指示や質問である「プロンプト」の書き方だと思うかもしれませんが、実はそうではないのです。

まず重要になるのは、「生成AIでできること、できないことを理解しておくこと」です。やっぱり使い始めは何から指示をしたらいいかが分からないと思います。その原因の一つが、生成AIでできることが分からないために、やりたいことが出てこないからなのです。

そこで、Webで「生成AI できること」と検索することでも構わないので、まずはできることを知ることから始めましょう。そうすると、要約や議事録生成といった具体的にできることや、それができる生成AIツールが分かります。そこで自分の業務に取り入れられそうなものから試してみましょう。その先で、何かでつまづいたり、さらに使いこなしたくなったらプロンプトの書き方を学び始めると良いと思います。

また、仕事での生成AI活用においては、「自分の業務をいかに客観的に理解しているか」も非常に重要です。例えば、クライアントに送るメール一つでも生成AIを活用できるのに、日常的になりすぎていて無意識で自分でメールを作成しているなど、そもそも活用できると認知していないこともあるからです。

生成AIでできることを理解し、日々自分がどんな業務をしていることを理解したうえで、それらをかけ合わせることが一番大切なのです。

初心者にオススメの無料で使える生成AIツール

無料ですぐに使えて、日本語の性能が高くて会話が流ちょうにできるChatGPTClaude(クロード)が、初めての方には使いやすいと思います。

AIと会話をしながらいろいろ試してみましょう。自分のしている業務を開示して、それをやってもらうためのプロンプトを生成してもらったり、「生成AIでできることって何?」とClaudeに聞いてみたりしてもいいかもしれません。

生成AIの効果的な3つの学習方法

生成AIの学習方法には「静的な知識習得」「動的な知識習得」「実践的学習」の3つがあります。これらをうまく掛け合わせることで、より効果的に学ぶことができます。

まず「静的な知識習得」とは、技術革新が進んでも変わらない情報や技術に関する知識による学習のことです。例えば生成AIの技術の活用の仕方は増えていっても、その根本的な仕組みは変わりませんよね。そのような変わらない情報が静的な知識です。

そして「動的な知識習得」は、技術革新によって日々変わるような情報や知識による学習のことです。XやYouTubeなどのSNSやニュースで日々新しく出る技術やトレンドを追うようなイメージですね。私が良く使うのはarXiv(アーカイブ)という海外の論文検索サイトです。そこから情報を引っ張ってくるGoogle Apps Script(GAS)のコードを作成して、論文をスプレッドシートに一覧にして情報収集しています。

最後に「実践的学習」は自分で試すことによる経験や講演・勉強会などによる実践的な学習です。これら3つをかけ合わせて学んでいくことで、自分の業務に使えそうなものやその活用の仕方もだんだん明確になってきます。ぜひ、意識して取り組んでみてください。

生成AIの活用シーン別プロンプト例と7Rフレームワーク

様々ある生成AIの中でも私がよく使っているのは、ChatGPTやClaudeなどの「テキスト生成AI」と呼ばれるものです。例えば、YouTubeのタイトルやキャッチコピーを考えたり、YouTubeのマーケティング戦略の壁打ちをしたりと、一般的な文書の生成と、戦略立案の主に2点で使っています。

その中で私が日ごろ活用しているのが、生成AIとの対話をより効果的にするためのフレームワーク「7Rプロンプト」です。このフレームワークでは次の7つの「R」の要素でプロンプトを書きます。

 

Request(依頼)
Role(役割)
Regulation(規制)
Rule(ルール)
Review & Refine(評価・改善)
Reference(参照)
Run Scenario(実行シナリオ)

そのうえで私は、ハッシュタグや箇条書きで構造化されたマークダウン記法でできるだけ具体的にプロンプトを作成します。具体的なプロンプトの型の例がこちらです。
※マークダウン記法は、簡単な記号や文字を使って文書の構造や書式を指定する方法です。例えば、`#`を使って見出しを作ったり、`**`で囲んで文字を太字にしたりします。この記法を使うと、プレーンテキストでありながら読みやすく構造化された文書を作成できます。 

 

#依頼:

私が動画の目次を入力するので、YouTube動画の導入文を作成してください。

#制約条件:

-重要:{#作成フォーマット}の()の中の指示に従い、適切な文章を埋めること。

-非常に重要:ターゲットが文章を読むと自分ごとに捉えられるぐらい曖昧な表現は省き、最大限に具体的に記載すること。

#作成フォーマット:

「(タイトルに興味がある想定ターゲットの具体化)」に当てはまる方、以下のような悩みはありませんか?

「(想定ターゲットが持つ詳細かつ深刻な悩みの代弁)」

「(想定ターゲットが持つ詳細かつ深刻な悩みの代弁)」

同じようなお悩みを抱える人は多くこの動画は、以下の視聴者像に合わせて作成しています。

「(1つ目の視聴者像を具体的に書く)」

「(2つ目の視聴者像を具体的に書く)」

その解決方法として、この動画では以下の2つを中心に解説します。

「(与えられたタイトルをもとにメイントピックを記載)」

「(与えられた目次のサブトピックの概要)」

この動画を最後まで見ると、

「(動画テーマや内容を見ると理解できること)」が分かり、

「([#ターゲットのベネフィット]の中から1つ選定し、さらに文章を編集し、具体的なターゲットの未来を記載する)」が可能です。

#ターゲットのベネフィット:”””

-既に行っている業務の生産性向上

-業務や人員のコストダウン

-注力したい業務への集中

“””

このプロンプトのかっこの中を埋めていくだけで、動画の導入やターゲットが分かったり、何を話してどんなスライドの構成にするか、スライドの中にはどんなことを書くかといった台本までできてしまうんです。

生成AI使用時の注意点:精度、セキュリティ、著作権

注意することは大きく3点です。1点目は生成AIは嘘を言う(ハルシネーション)ことがあると認識しておくことです。いくら人間が正確な情報を適切なプロンプトで生成AIに聞いたとしても、嘘を言うことがあります。リスクがあることを前提として使うように注意しましょう。

逆に、嘘を言いづらい生成AIもあることを知っておくと良いでしょう。リサーチに特化した生成AIで、Perplexity AI(パープレキシティAI)とGenSpark(ジェンスパーク)は、ウェブサイトから情報を収集し回答を導き出すので、ハルシネーションの可能性が低くなっています。一方、NotebookLM(ノートブックLM)は、ユーザーが学習させた特定のデータセット(PDFや指定したサイト等)をもとに回答を生成するため、そのデータ範囲内での正確性が高くなります。これらのツールをChatGPTなどの汎用AIと組み合わせて使用することで、より信頼性の高い情報を得られる可能性があります。

2つ目はセキュリティです。多くの生成AIサービスは、モデルの改善のためにユーザーの入力データを学習に使用することがありますが、これはプランやサービスによって異なります。例えば、一部の有料プランやエンタープライズ向けサービスでは、ユーザーデータを学習に使用しない設定が可能な場合があります。また、オンプレミス型のAIソリューションを採用する企業もあります。

しかし、どのようなセキュリティ対策を講じていても、”絶対”に安全なシステムは存在しません。そのため、特に重要な個人情報や社内の機密情報を扱う際は、以下の点に注意しましょう:

  1. 使用するAIサービスのセキュリティポリシーと利用規約を確認する
  2. データ保護機能のある有料プランや専用サービスを検討する
  3. 極めて機密性の高い情報は、AIシステムに入力しないことを原則とする
  4. 必要に応じて、社内のセキュリティガイドラインを策定し、従業員に周知する

このように、セキュリティに関しては一律の対応ではなく、状況に応じた適切な判断と対策が必要です。

そして3つ目が著作権です。作成されたものが著作権を侵害していれば重大なトラブルになりかねません。最近は生成AI側がストップをかけてくれることもありますが、自分でしっかり確認するようにしましょう。