普段プログラミングをされている方で、「生成AIの導入についてよく知らない」「してみたいけどまだできていない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、そうした方向けに、「プログラマの生成AI導入」について生成AIエンジニアのますみさんに伺いました。ますみさんは、生成AIの可能性に感動してGalirageを創業。生成AIに特化したシステム開発、コンサルティング、研修支援をしている、生成AIのプロです。そんなますみさんが「開発が3倍早くなった」という生成AIの使い方を教えていただきました。
ますみさん
株式会社Galirage(ガリレージ)代表
X:https://twitter.com/umi_mori_jp
YouTube: https://youtube.com/@masumi_engineer
プログラマが初めて使うのにおすすめの生成AI
生成AIを使うこと自体が初めてのプログラマにおすすめなツールは、GitHub Copilot(ギットハブ・コパイロット)です。

GitHub Copilotは「AI支援機能を搭載した開発ツール」で、コードの補完機能とチャット機能が大きな特徴となっています。コードの補完機能とは、例えばコードを書く際に途中まで書いた残りの部分を瞬時にレコメンドしてくれるような機能です。チャット機能では、ChatGPTなどと同じようにチャットでバグの解消方法を質問したりコード生成を指示したりすることができます。
コードの補完機能を実際に試してみます。例えば、エクセルを読み込んで、ageという列の平均を求めるコードを書くとしましょう。そして、defで関数を書くと、下にグレーで候補が表示されました。

ここでTabキーを押すと、あっという間にコードが補完されます。

このようなコードの補完機能が非常に便利なのです。一方で、チャットの精度はまだ十分でない部分もあると感じていて、Claudeを一緒に使うのをおすすめしています。ここで、ChatGPTではなくClaudeがおすすめなのにも理由があります。私が実際に使って比べてみたところ、コード生成やコードレビューなどのプログラミングという観点ではClaudeの方が精度が高かったのです。
ただ、ChatGPTにも使いどころがあります。ChatGPTはClaudeよりも多機能なので、Web検索を絡めたい場合や、画像生成をしたい場合などは便利に使えます。例えば、プログラミングの知識を新しく知りたい時や最新のパッケージについて質問をしたい時、簡易的に挿絵やアイコンを手軽に作りたい時はChatGPTを使うのが良いでしょう。
生成AIでできること、まだ難しいこと
現時点では、簡単な機能の開発であれば今すぐにでも可能です。ただ、“依存関係が複雑な機能”の開発はまだ難しく、工夫をしないと生成AIを上手く活用できないのが現状です。
依存関係が複雑な機能とは、会社の信用調査をするシステムの場合で例えると、株式会社Aの信用スコアを出す時、決算書を見に行って、会社のホームページを見に行って、代表の人のSNSを見に行って……と、複数のデータにアクセスをしなければなりません。このように複数の機能が依存し合っている場合は、依存関係が複雑だと言えます。
こうしたシステムだと、どのような要件で各機能ができているかなどを加味して開発しなければならないので、情報量がたくさん入力されるんですね。そうすると、複雑な背景情報を生成AIが処理しきれず、あまり精度の高いコードが生成されない場合があるのです。
明日から使える!GitHub Copilotのインストール方法
GitHub Copilotは独立したツールではなく、コードエディタにプラグインをインストールすることで使えるようになります。そのため、コードエディタは別でインストールが必要です。現在、GitHub Copilotが使えるコードエディタは、VS Code(Visual Studio Code)、Visual Studio、JetBrains、Neovimです。今回は、VS CodeにGitHub Copilotをインストールする方法をご紹介します。
なお、GitHub Copilotは有料のサブスクリプションサービスです(個人向け:月額10ドル、年払100ドル)。インストールの前には有料プランへの登録も済ませておきましょう。
※GitHub Copilotの有料プランへの登録方法はこちらもチェック
ますみ/生成AIエンジニア「GitHub Copilotのインストール方法」
まず、VS Codeを開き、左側のメニューから「拡張機能」をクリックします。

検索欄に「GitHub Copilot」と入力すると、「GitHub Copilot」と「GitHub Copilot Chat」が出てきます。青い「インストール」ボタンをクリックして、インストールしましょう。この際、GitHub Copilotと同時にGitHub Copilot Chatもインストールされる場合があるので、確認してみてください。

インストールが完了したらVS Codeを再起動し、GitHub Copilotの認証を行います。VS CodeとGitHubアカウントを既に連携している場合は自動で認証が行われますが、連携していない場合は、VS Codeの画面下部にあるベルのアイコンをクリックして、認証を行ないましょう。
生成AI導入による変化
私がGitHub Copilotを導入してからは、体感で3倍ほど開発が速くなったと感じています。また、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)の観点でもメリットが大きいですね。余った時間を使って品質改善に取り組んだり、時間が削減できてコストカットになったり、早く終わる分早く納品できたり。
加えて、付随的な効果として精神的な負荷の軽減によるエンゲージメント向上も感じています。みなさんは「5分しかかからないけど、やりたくない仕事」はありませんか?私にとってはテストデータの作成がまさにそうで、テストをするために、要件をもとに考えられるパターンをひたすらExcelに打ち込んでいく、といった作業は精神的負荷が大きいものでした。
そこで生成AIを導入することによって、やりたくない仕事をしなくてよくなったのです。コスト的には大きく変わらないかもしれませんが、精神的な負荷が減るだけでどれだけ仕事が楽になるか。きっと想像に難くないと思います。
また、GitHubの公式もGitHub Copilotを使うことでどれくらい業務が改善されるかを調査して公開しています。95名の開発者を、GitHub Copilotを使う45名のグループと、使わない50名のグループにランダムに分けます。そして、Javascriptのコードを書くタスクを与えたところ、GitHub Copilotを使ったグループのうちタスクが終わったのは78%、かかった時間の平均は1時間11分。GitHub Copilotを使わなかったグループのうちタスクが終わったのが70%、かかった時間の平均が2時間41分だったそうです。

この結果を見ると特に時間においては2倍以上もの差が出るほど顕著な違いがあります。それくらい、GitHub Copilotを使うことによる効果があるのです。
生成AIを使いこなすステップ
生成AIを業務で使いこなすステップは大きく次の4段階です。
①生成AIに触れる
②業務で活用する
③周りに波及させていく
④ワークフローに落とし込む
①生成AIに触れる
実際に触れてみると、その生成AIができることや、得意なこと、苦手なことがだんだん分かってきます。そのため、まずは自分で触れることが非常に大切です。
②業務で活用する
実際に触れてみて生成AIに少しずつ慣れてきたら、業務で実践して活用してみましょう。最初にお話しした通り、初めて生成AIを使うプログラマはGitHub CopilotとClaudeが最初に使うツールとしておすすめです。段々慣れてきた場合や、既に使い慣れている人など、もう少し高度な生成AIを使いたい場合はCursor(カーソル)がおすすめです。

③周りに波及させていく
徐々に業務で使えるようになってきたら、チームメンバーなど周りの人にも波及させていきましょう。生成AIの領域は先端的で、知っている人や活用している人もまだまだ少ないです。そこで生成AIを波及させていくことで、周りの人たちを、自然にAIを活用する“AIネイティブ”にしていきましょう。
④ワークフローに落とし込む
AIを“使う”のではなく、業務の中に生成AIが“組み込まれている”ところまで落とし込むことで、人が介在する部分がほとんどない状態にまですることができます。
まとめ
今回は、生成AIエンジニアであるますみさんに「プログラマの生成AI導入」について伺い、GitHub Copilotのインストール方法についてもご紹介しました。
GitHub Copilotのインストール後の詳しい使い方や活用の仕方については、ますみさんが体系的にまとめた『サクッと始めるAIネイティブ開発【GitHub Copilot / ChatGPT】で非常にわかりやすく解説されているので、是非こちらもご覧ください。
これを機に、まずは生成AIを触るところから徐々に取り入れて、システムの開発スピードを速くしたり、嫌な業務にかかる時間を削減したりとどんどん活用していきましょう。