用語解説

2D・3D設計できるソフトウェア「AutoCAD」とは?

建設業界において、1982年に登場以来、幾度もの改変を経て長く使われてきたソフトウェアがあります。アメリカのAutodesk社が開発・販売しているCAD(※)ソフト「AutoCAD」です。建設をはじめ、土木・建築などの分野で広く活用されています。

今回はAutoCADについて特徴や使用方法、価格などをまとめました。

▼CADについて知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
建築の設計・製図から製造業、アパレルで活用!「CAD」とは?

AutoCADとは?

AutoCADは、精度の高い2D図面を作成できるCADソフトウェアです。建築設計、機械、土木、エンジニア、施工といったさまざまな分野の業務に広く利用されています。また、2Dを得意としますが、3D図面も作成可能です。また、デスクトップやタブレット、ブラウザなどさまざまなプラットフォームからアクセスして作業できます。

ほとんどのCADソフトには、図面を作成する「作図ツール」、複数のオペレーターでの共同作業や設計管理をサポートする「設計支援ツール」などの機能が備わっています。AutoCADもCADソフトのこうした機能を基本としているだけでなく、他のCADソフトとの互換性も高いため、多くの企業で利用されているのです。

Revitとの違い

2D図面の作成ソフトの代表格であるAutoCADは、3D図面も作成できます。その点はRevitも同じですが、AutoCADとRevitでは何が違うのでしょうか。

AutoCADは2Dおよび3Dの作図ソフトウェアで、設計・製図に適しています。一方Revit は、建物の3D モデルを作成するためのツールを備えたBIM専用のソフトウェアで、建築プロジェクトの全てのフェーズにおいて、設計や製図だけでなくフェーズごとのファイルの閲覧・編集ができます。つまり、2Dおよび3Dの作図ソフトがAutoCAD、BIM専用に開発されたソフトがRevitです。

ちなみにAutoCADで作成した3D図面をRevitプロジェクト内に組み込んで編集もできるので、AutoCADとRevitは相互運用かつ同時に使用可能です。

AutoCADの特徴

建築や土木、機械、電気の各分野において、AutoCADは日本のみならず世界でもユーザー数が多いCADソフトです。では、AutoCADにはどんな特徴があるのでしょうか。

拡張性の高さ

拡張性が高いことは、AutoCADの最大の特徴です。AutoCADには、建築設計、土木設計、機械設計、電気制御設計などの専門分野に特化した以下のツールセットがあり、AutoCADとの併用で作業効率化が図れます。

  • Architectureツールセット
    建築オブジェクトの中から、建築図面と設計図書を作成
  • Mechanicalツールセット
    機械設計に特化した機能を有し、画層管理、パーツ一覧の生成、部品表(BOM)を作成
  • Electricalツールセット
    電気制御システムのドキュメント作成、パネルレイアウトや回路図の設計
  • MEPツールセット
    機械、電気、配管オブジェクトを使った建物システムの作図・設計・ドキュメント作成、ダクト、電線管、空調設備の経路や配管、電気系統の設計
  • Plant 3Dツールセット
    プラント設計とエンジニアリングに特化した機能を有し、プラントのレイアウトや回路図などを短時間で作成
  • Map 3Dツールセット
    地理情報システムとCADデータを統合し、プランニングや設計を実行
  • Raster Designツールセット
    AutoCAD環境でラスターイメージ(画像を「ピクセル」と呼ばれる小さい正方形、つまりドットと呼ばれる点の羅列・集合体として表現する方式)を簡単に編集、補正し、ベクトル図面に変換

世界で普及しているソフトウェアであること

CADソフトには、日本発のソフトや日本国内に限定して使われているソフトもありますが、AutoCADは世界中で普及しています。CADソフトが同じであれば、データを受け渡す際にデータ変換の必要がありません。また、使い方が分からないときも、多くのユーザーが参加するコミュニティで質問を投げたり、販売店やカスタマーサービスへ問い合わせてサポートを受けられたりと、導入後も安心して利用できる環境が整っています。

Webアプリとモバイルアプリの存在

AutoCADには、デスクトップで使用可能なソフトウェア以外にも、ブラウザ上で編集できるWebアプリと、タブレットなどで使用できるモバイルアプリ(AutoCADモバイル アプリ Premium)があります。時間や場所を選ばず、どこからでもAutoCADで作成したファイルにアクセスして作図・図面を編集可能です。

AutoCADが使えるシーン

AutoCADを使うシーンは主に、次の場面で用いられることがほとんどです。

2D・3Dの図面・ドキュメントの作成

平面図、立面図、断面図などの図面を、ソフトウェア内で2Dまたは3Dで作成します。CADソフトでは、作図後に発生した、図面の修正や要素の削除、追加も可能です。また、図面にテキスト、寸法値、引出線、表を使用して注釈をつけることもできます。

3Dモデリングおよびビジュアライゼーション

モデリング(Modeling)とは、3D-CADソフトを使ってパソコン上で建築物の形や大きさを表現するための手法で、モデリングにより生み出されたものをモデル(Model)と呼びます。ソリッド、サーフェス、メッシュオブジェクトを使用して3Dモデルを作成・編集できます。また、設計者やクライアントがイメージする完成図を、視覚的に再現すること(ビジュアライゼーション)で、イメージの共有がしやすくなります。

AutoCADの入手方法と使用方法

ここからは、AutoCADの入手方法と、使い始めるまでの方法をご紹介します。

(1)お使いのパソコンの動作環境を確認する

まずは現在使用中のパソコンの動作環境をチェックしましょう。
動作環境はAutodeskの公式ホームページにも記載されていますので、導入する前にこちらもチェックしてみてください。また、30日間無料で利用できる体験版があり、実際にAutoCADを導入後のパソコンの動作を試してみたい方は、そちらもおすすめです。

(2)ライセンスを購入する

販売店やAutodeskのオンラインストアで、業務内容や目的に合わせて、サブスクリプションを購入します。

AutoCADはこれまで、永久ライセンスで購入できていましたが、サブスクリプション形式に変更となりました。月払い・年払いと3年の3種類から選択可能で、Autodesk社の公式Webサイトより必要な期間分購入後、ダウンロードしてお使いいただけます。費用は以下のとおりです。
1ヵ月契約:8,800円
1年契約:71,500円
3年契約:193,600円

(3)Autodeskのマイアカウントにサインインしてインストールする

事前登録しておいたメールアドレスにメールが届きますので、表示に従ってサインインを行い、ソフトをダウンロードします。

(4)パソコンを再起動後AutoCADを起動し、利用規約に同意する

インストールの完了後、パソコンを再起動します。AutoCADを開くと利用規約(オートデスクプライバシーステートメント)が表示されますので、目を通して同意をすれば、ソフトを利用できます。

まとめ

1982年に初めて登場したとき、建築業界に革命をもたらしたと言われるCAD。近年ではBIM(Building Information Modeling)の導入や建設業界の作業効率化が求められるようになりましたが、BIM導入には費用やソフトウェアを扱える人材の不足などの課題が山積しています。そのため、建設業界のさまざまな分野で利用者が多く、費用も安価なAutoCADには今後も需要増が見込めます。