用語解説

建設分野のシェアエコ事例をご紹介!シェアリングエコノミーとは?

シェアリングエコノミーはそのテクノロジーにより生活者の購買行動を所有から利用へと変え、世界的にさまざまな分野で大きな進展を続けている。中でも、中国ではGDPの10%がシェアリングエコノミーであるといわれ、市場規模も2017年時点で60兆円を超えたといわれている。
一方、我が国でも、政府の成長戦略に2016年から3年連続で重点施策として記載されるなど、人口急減社会を支える共助のインフラとして社会的に大いに期待されている。

ここでは、一般的なシェアリングエコノミーの特徴やカテゴリーなどについて解説します。

シェアリングエコノミーとは?

シェアリングエコノミーは、明確な定義はありませんが、空き家や家の前のスペースなど目に見えるもの(有形資産)から、スキルや権利など目に見えないもの(無形資産)まで、「眠っている資産(遊休資産)を、インターネットを介して必要としている人と共有するサービス」を指すのが一般的な解釈です。呼称も「シェアリングビジネス」「シェア経済」「共有(型)経済」とそれぞれで、所有から共有ヘシフトし、「必要なものを、必要なときに、必要な分だけ」という観点から、オンデマンドエコノミーともいわれています。

シェアリングエコノミーは、サービスを運営している会社のプラットフォーム上で金銭などを利用者と提供者間でやり取りするのが特徴です。提供パターンには個人と個人の「CtoC」もあれば、企業と個人の「BtoC」、企業と企業の「BtoB」がありますが、最も多く見られるのが個人と個人の「CtoC」の形態です。

シェアリングエコノミーの種類
日本のシェアリングエコノミーの関連事業者が数多く所属する、一般社団法人シェアリングエコノミー協会では、以下の5つのカテゴリーに分けて、シェアリングエコノミーを定義しています。

共有対象 概要 サービス例
空間 ルームシェア、会議室、農地、空き家や別荘、駐車場などの空間をシェアする Airbnb、スペースマーケット、akippa、軒先パーキングなど
モノ 不用品やときどきしか使わないものをシェアする メルカリ、ジモティー、air Closetなど
スキル スキルや時間がある人と、解決してほしい課題を持つ人がタスクを共有する(家事代行、育児、知識、料理、介護、教育、観光、デザイン) ランサーズ、AsMama、タスカジ、クラウドワークス、エニタイムズなど
移動 自家用車の相乗りや貸自転車サービスなど、移動手段をシェアする Uber、notteco、Anyca、Lyft、滴滴出行、OpenStreet、ラクスル(ハコベル)など
お金 プロジェクトや企画次第で、他の人々や組織から資金調達ができる。寄付型・投資型・購入型などがある Makuake、READYFOR、Crowd Realty、CAMPFIREなど

 

シェアリングビジネスをさせるテクノロジー

シェアリングエコノミーは、価値創出のサイクルを生み出すマッチングビジネスの1つです。その領域では、集約したビッグデータとさまざまなテクノロジーを使った試みが行われています。シェアリングエコノミーに役立てているテクノロジーの事例を見ていきます。

AI(人工知能)

シェアリングエコノミーには、AI(人工知能)の技術がいくつか活用されています。

シェアリングエコノミーを成立させるためには、サービス提供者と利用者の最適なマッチングが重要です。利用者が提示する条件にマッチングした提供者を探すには、検索という機能を使います。検索には利用者が求めている情報にたどり着くためのアルゴリズム(問題の答えを効率的に求めるための手法)が必要で、これがAI(人工知能)の本体と言われているものです。

また、短い時間でかつ効率よく訪問できるルートや膨大な価格データから商品に適した価格の提示など、行動の最適化や予測も、AI(人工知能)の得意分野です。AI(人工知能)の活用で、シェアリングエコノミーに対するハードルを下げる取り組みが行われています。

使用例:人と人またはモノ、時間のマッチング、需要予測、適正価格の提示など

IoT

IoT(モノのインターネット)とは「Internet of Things」の略称で、パソコンやスマートフォン、テレビや車、エアコンなどのモノにセンサーを搭載し、インターネット経由で情報やデータをやり取りする仕組みです。

センサーと通信機能を搭載したIoT機器から集められたデータは、サーバーに蓄積されます。サーバーにおいて処理をしたデータに基づいた結果に基づいて、モノ(デバイス)にインターネットを通じて指示を送って作動させます。こうした一連のIoTの仕組みを応用し、車や機械、工場の生産設備の状態や稼働状況を分析することで、他のユーザーや企業に車や機械、工場を貸し出せます。

使用例:工場や農地のシェアリング、コインロッカー、シェア対象の機器・機械の予防・予知保全(部品をあらかじめ定めた耐用年数ではなく、故障の兆候に応じて保守・交換すること)、遠隔修復・自動修復など

ブロックチェーン

ユーザーの本人確認情報やサービス利用に関する信用情報を、ブロックチェーン上で管理し、シェアリングエコノミーを提供する事業者同士で共有する取り組みがスタートしています。

プロックチェーンの事実上改ざん不可能な特性と、スマートコントラクト(人や業者が介在しなくても、利用者と提供者間で契約を結んで履行する機能)の活用により、本人確認やユーザー審査の手間が不要です。提供者は低コストでサービスを提供できる他、利用者も提供者のサービス履歴を閲覧できるなど安心して利用できます。

使用例:自動車や自転車、バイクなどのライドシェアリング、民泊など

建設分野における、海外と国内のシェアリングエコノミー事例

世界中で市場規模を急激に拡大させているシェアリングエコノミー。建設分野では主に、ショベルカーやダンプカーなどの建設機械のシェアリング、職人と現場のマッチングなどの領域で活用が始まっています。この領域の市場は今後、さらに拡大していくことが予想されます。

海外と国内の、建設分野における事例をいくつかご紹介します。

EquipmentShare(エクイプメントシェア)

「EquipmentShare(エクイプメントシェア)」は、2014年創業のアメリカのスタートアップ企業です。ショベルカー、フォークリフト、掘削機、クレーン車などの建設機械をシェアリングできるプラットフォームを開発・提供しています。

EquipmentShareには、品質が保証された機材のみが登録されています。シェアリング対象の機械には全て、「EquipmentShare Track」という電子デバイスが装着されており、GPSによる車両や資材のリアルタイムな位置情報、正確な使用率など、機械の重要なデータを収集して、所有者がいつでも閲覧できるシステムを構築。また1日、1週間、1ヶ月単位で所有者自身で料金を設定、シェア中の故障にも24時間対応など、所有者に手厚いサポート体制が整っています。

ちなみに、建設機械における海外のシェアリングエコノミーの同業他社としては、Caterpillar、機材コンシェルジュのGetable、カナダのDozrなどがあります。

EquipmentShare
https://equipmentshare.com/

ツクリンク

「ツクリンク」は、ツクリンク株式会社が2017年にリリースした、職人の募集、工事の受発注がインターネット上でできる、日本最大級のマッチングプラットフォームです。2021年7月現在、登録建設業者数は50,000社を超えています。登録料無料で、建設関連業者であれば個人・法人問わず利用可能です。

ツクリンクでは、以下のサービスの提供により、建設業界において課題となっている職人の不足や業者間のネットワークの拡大、新規顧客の獲得、新たなエリアでの業務拡大に貢献しています。

  • 元請けや協力会社の募集を、地域別・業種別に検索
  • 依頼内容に合わせて、リフォームや内装、塗装などの工事の情報をツクリンク上に登録すると、施工可能な会員から取引連絡が届く
  • 自社のプロフィールページを作成(無料)

ツクリンク
https://tsukulink.net/

Jukies

Jukies(ジューキーズ)は豊田通商株式会社(以下、豊田通商)が2017年7月から手掛けている、建機シェアリングサービスです。遊休状態の建設機械や仮設資材、工具などを貸したい人(所有者)が、貸したいときに登録。それらを一時的に利用したいユーザーに、有料で貸し出しします。費用は、ユーザーと所有者で直接やり取りせず、プラットフォーム提供者の豊田通商にユーザーが支払います。

また、貸出中の事故や破損、盗難、ユーザーのこれまでの利用履歴など、所有者に手厚いサポートも整っており、法人・個人のどなたでもWeb上で建設機械や仮設資材、工具などを安心して貸し借りできる仕組みを提供しています。

Jukies
https://jukies.net/

まとめ

シェアリングエコノミーの市場規模は、ほとんどの調査機関が今後も世界的に拡大傾向であると推測しています。価値観が多様化し、経済や世界情勢の変化が日々起こる現代、購入・所有を目的とした自社の製品・サービスの売り切り型のみを続けていては、成長路線を歩むことは難しいでしょう。余剰人員や放置されている建設機械、工具、設備をシェアリング活用すれば、事業の活性化が期待できます。

「設備や機械は本当に所有したままでよいのか」「別の形態で必要とする個人や企業などに提供できないか」などの観点から、自社が所有する資産や事業を見直すことが重要です。

<参考図書>
「いちばんやさしい人工知能ビジネスの教本~人気講師が教えるAI・機械学習の事業化」二木 康晴・塩野 誠 2017年 株式会社インプレス
「超図解ブロックチェーン入門」桜井 駿 2017年 日本能率協会マネジメントセンター
「図解入門ビジネス 最新 シェアリングエコノミーがよ~くわかる本」上妻 英夫 2018年 秀和システム
「不動産テックを考える」赤木正幸・浅見泰司・谷山智彦 2019年 プログレス
「IoTのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」IoT検定ユーザー教育推進ワーキンググループ 2020年 技術評論社
「未来IT図解 これからのDX デジタルトランスフォーメーション」内山悟志 2020年 エムディエヌコーポレーション