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求められる情報リテラシーってどれくらい?大学入学共通テスト2025「情報Ⅰ」解説 第2問 – ビジネスパーソンのためのIT教育最前線

2022年からは高等学校で「情報Ⅰ」が共通必修科目となり、2025年度の大学入学共通テストからは受験における必須科目にもなりました。現代の情報社会において必要な知識やスキル、リテラシーを習得するため、あらゆる人にとって重要な科目であると位置づけられているのです。

近年は小学校や中学校でもプログラミングが必修となっており、ITに関する知識やスキルはもはや「持っていて当たり前」になってきているともいえます。それに伴い、企業や働く人の情報リテラシーの底上げが求められます。

では、実際にどのような内容やレベルでの学習をしているのでしょうか。それを体感すべく、本記事から4回に分けて2025年度の大学入学共通テストで実際に実施された「情報Ⅰ」の試験内容を紹介・解説します。実際に解いたり解説を見たりすることで、内容や難易度が体感できると思いますので、ぜひ実際に解きながら読み進めてみてください。

今回は全4問のうち第2問の内容と解説です。第2問は、問題の難易度は高くなく、情報の知識がなくても読み解くことで解ける問題になっています。ただ、情報を的確にとらえて活用する力や、プログラミングの基礎となる場合分けでの考え方など、情報リテラシーとしての基本となる知識や能力があるとより解答しやすい問題ともいえるでしょう。

なお、問題や解答は以下に公開されていますので、こちらも合わせてご覧ください。

令和7年度 本試験の正解https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7/r7_honsiken_seikai.html


第2問

次の問い (A・B) に答えよ。 (配点 30)

【A】高校生のYさんは, 職業体験のため全国チェーンの総合スーパーマーケット「LikeWing」 駒谷南店を訪れている。 レジを担当したYさんと店長の会話文を読み、後の問い (問1~4) に答えよ。

Yさん: レシートにはたくさんの情報が印字されていますね(図1)。 このレシートには「ポイント会員ID」が載っていますが, ポイントカードは店側にとってどんなよいことがあるのですか?

店長: LikeWingでは, ポイントカードを作成する際に、お客様の名前,性別、生年の三つの属性情報をポイント会員情報として登録してもらっています。そして, (A) ポイント会員情報とレシートに印字されている情報を組み合わせて分析することで販売促進につなげています。

Yさん: それらの情報には大切な情報も多いですよね。 どう管理されているのですか? 

店長:はい。 ポイント会員情報とレシートに印字されている情報は,LikeWing の本部の情報システムで一括して管理しています。(B)本部、 各店舗,商品を製造するメーカー、商品を店舗に配送する配送センターの間で情報をやり取りしていて、 商品は本部が一括して発注し、 配送の指示を出します。 

Yさん: LikeWing のネットショッピングサイトは有名ですね。 そのネットショッピングサイトと, この情報システムはつながっているのですか?

店長:今まさに,連携を検討しているところです。 これらが(C)連携するメリットは多くあります。

問1

問題文

次の文章を読み, 空欄(ア)~(ウ)に入れるのに最も適当なものを、図1の0~8のうちから一つずつ選べ。 ただし,空欄(イ),(ウ)の解答の順序は問わない。

LikeWing全体での「時間帯ごとの総売上額(消費税込)」 の比較を行うには,図1の「購入時刻」と「(ア)」に表されている情報から分析する。また,「曜日別の各商品の購買の状況」 を把握するには、 図1の「購入日、曜日」 と「(イ)」と「(ウ)」に表されている情報から分析する。

解説

(ア) 5
空欄のある一文をかみ砕くと、「どうしたら時間帯ごとの総売上額(消費税込)を求められるか」と聞かれています。問題文では「購入時刻」、つまり「時間帯ごとの」の部分の情報は提示されているため、もう一つの「総売上額(消費税込)」の部分に当てはまる選択肢を探しましょう。それが「購入した商品の合計金額」にあたる5になります。

(イ)(ウ) 3,4

前の問題と同じようにかみ砕くと、「どうしたら曜日別の各商品の購買の状況を求められるか」を聞かれています。問題文では「購入日、曜日」の情報が提示されているため、「各商品の購買の状況」に当てはまる選択肢を探しましょう。

ここで注意したいのが、単に購買の状況ではなく「各商品」の購買の情報が問われていることです。つまり、合計ではなく、何がどれくらい購入されたか知りたいということになります。それを踏まえて考えると、必要な情報は「商品コード,購⼊商品名」と「購⼊した商品の個数」になります。

問2

問題文

下線部(A)の分析によって得られない情報として最も適当なものを,次の0~3のうちから一つ選べ。

0 顧客が商品を購入した理由。 

1 同じ顧客に,繰り返し購入される傾向がある商品。 

2 ある商品を多く購入している顧客の年齢層。 

3 年齢や性別の違いによる, 来店する時間帯の傾向。 

 

解説

(エ) 0

下線部(A)には「ポイント会員情報とレシートに印字されている情報を組み合わせて分析する」とあります。

まず、ポイント会員情報とレシートからどのような情報を得られるか把握しておきましょう。会話文を読むと「ポイント会員情報」には「お客様の名前、性別、生年」の3つの情報が登録されているとあります。また、レシートに印字されている情報は図1を見ると分かるように、購入した商品や時刻など購買に関する情報とポイントカードに関する情報です。これをもとに各選択肢を見てみましょう。

0:得られない情報。顧客が商品を購⼊した理由については、ポイント会員情報として登録されている情報からも、レシートからも把握することはできません。

1:得られる情報。ポイント会員情報の「お客様の名前」と、レシートにある「商品コード,購⼊商品名」を分析することで、誰が何を購入したか特定することができます。過去の情報をたどることで、その人が何回その商品を購入したかも特定することが可能です。

2:得られる情報。ポイント情報の「生年」とレシートにある「商品コード,購⼊商品名」から、どの年代の人が何を買ったかを特定することが可能です。それぞれの商品に対して購⼊した顧客の⽣年を分析することで、ある商品を多く購⼊している顧客の年齢層を知ることができます。 

3:得られる情報。ポイント会員情報の「性別」「⽣年」と、レシートにある「購入時刻」から、年齢や性別の違いによる来店する時間帯の傾向を知ることができます。

問3

問題文

図2は, 下線部(B)に示すLikeWingの情報システムにおける主な情報の流れと商品の流れを表している。 なお, 顧客は必ずポイントカードを提示して商品を購入するものとする。 

図2の中で、次のI・IIの情報のそれぞれが必要とされる情報の流れ (図2のあ〜う)を過不足なく含むものを,後の0~6のうちから一つずつ選べ。

I 店コード (オ)

II ポイント会員ID (力) 

0 あ 

1 い 

2 う 

3 あ、い 

4 あ、う 

5 い、う

6 あ い う 

 

解説

(オ)3

店コードがどこで必要になるか、つまり「お店を特定する必要がある箇所がどこか」を問われています。それぞれに当てはめてみて、必要かどうかを考えてみましょう。

あ:必要。「LikeWing 配送センター」は「LikeWing 店舗」に商品を配送する際、どの店に

送るかを特定する必要があります。

い:必要。会話⽂に「レシートに印字されている情報は,LikeWing の本部の情報システムで⼀括して管理しています」とあります。図1を見てみるとレシートに店コードが印字されています。つまり、レシートに印字されている情報は「LikeWing 店舗」から「LikeWing 本部」に送られる情報として必要であることが分かります。

う:必要でない。商品を購入する際に、顧客から店コードの情報は得られません。

(カ) 5

ポイント会員IDがどこで必要になるか、つまり「名前・性別・ ⽣年の情報が必要になる箇所はどこか」を問われています。

あ:必要でない。「LikeWing 本部」から「LikeWing 配送センター」へ配送情報などを提供するときには必要でない。

い:必要。会話⽂に「レシートに印字されている情報は,LikeWing の本部の情報システムで⼀括して管理しています」とあります。ポイント会員IDはレシートに印字される情報であるため、「LikeWing 店舗」から「LikeWing 本部」に送る情報として必要であることが分かります。

う:必要。顧客は必ずポイントカードを提示して商品を購入するため、そのときポイント会員IDの情報が顧客から「LikeWing 店舗」に提供されることになります。

 

問4

問題文

下線部(C) の連携するメリットとして,次の I~IIIが考えられる。 これらを実現するために、 後の 【条件】 あ~うのうち, LikeWing の情報システムに求められる条件はどれか。空欄(キ)~(ケ)のそれぞれについて, 【条件】 あ~うを過不足なく含むものを、後の解答群のうちから一つずつ選べ。 なお, LikeWing のポイント会員であるか否かにかかわらず, ネットショッピングを利用する顧客は, ネットショッピングのアカウントを作成して,宅配のための自宅の住所を登録するものとする。

連携するメリット

I 顧客がネットショッピングサイトにログインしたときに、現在のポイントカードのポイント数と自宅に近い実店舗の広告チラシが自動的に表示される。 

条件(キ) 

II 顧客がネットショッピングで商品を購入しようとするとき,その顧客がポイントカードをよく利用する実店舗のうちで、その商品の在庫がある実店舗の情報が表示される。

条件(ク) 

III 顧客がネットショッピングサイトにログインしたときに,商品の購入傾向が実店舗も含めて類似している他の顧客の購入履歴をもとに, おすすめ商品を画面に表示する。 

条件(ケ) 

 

【条件】 

あ ポイント会員IDとネットショッピングのアカウントが対応付けられている。 

い ネットショッピングで扱われている商品に実店舗で用いられている商品コードが割り当てられている。 

う 商品コードと店コードから実店舗における商品の在庫数を調べることができる。 

 

キ~ケの解答群

0 あ 

1 い 

2 う 

4 あ、う 

5 い、う 

6 あ、い、う

 

解説

それぞれのメリットを成立させるために必要な条件かどうか、ひとつずつ考えてみましょう。

(キ) 0

あ:必要。ポイント会員IDとネットショッピングのアカウントが対応付けられていなければ、ネットショッピング用の住所の情報とポイントカードの情報が紐づけられません。

条件い・う:必要でない。ログインによって「ポイント数」と「⾃宅に近い実店舗の広告チラシ」 を表⽰するためには、商品コードの割り当てや在庫数といった情報は必要ありません。

(ク) 6

条件あ:必要。ネットショッピングの際に、その顧客がよくポイントカードを利用する実店舗の情報を得るためには、ポイント会員IDとネットショッピングのアカウントが対応付けられている必要があります。

条件い:必要。顧客がネットショッピングで購⼊しようとしているのと同じ商品の実店舗の在庫を調べるためには、ネットショッピング上の商品に実店舗と同じ商品コードが割り当てられていなければなりません。

条件う:必要。顧客がネットシ ョッピングで購⼊しようとしているのと同じ商品の在庫が実店舗にあるかどうかを確認するためには、商品コードと店コードから実店舗の在庫数を調べる必要があります。 

(ケ) 3

条件あ:必要。ポイント会員IDとネットショッピングのアカウントが対応付けられていないと、ネットショッピングサイトにログインした顧客の実店舗における商品の購⼊傾向を知ることはできません。

条件い:必要。ネットショッピングサイトと実店舗の両⽅の購⼊履歴をもとにしておすすめ商品を表⽰するためには、ネットショッピングの商品に実店舗と同じ商品コードを割り当てる必要があります。

条件う:必要でない。ネットショッピングサイトと実店舗の両⽅の購⼊履歴をもとにおすすめ商品を表⽰するだけのため、実店舗における在庫数の情報は必要ありません。 

 

【B】次の文章を読み, 後の問い (問1~3)に答えよ。 

Mさんは, あるグループの会計係をしており10人のメンバーから一人6,000円ずつ集めることになった。 Mさんは,以前集金をしたときにおつりに困ったことがあったので,メンバー全員におつりを渡すための千円札を何枚用意しておくのがよいか、 次の条件でシミュレーションすることにした。

・グループのメンバーは,来た順番に一人ずつMさんにお金を支払う。 

・メンバーは,必ず千円札 6枚(6,000円) または一万円札(10,000円) のいずれかでMさんに支払う。 

・メンバーが一万円札で支払った場合, おつりの4,000円は千円札4枚で渡す。 

・メンバーが千円札 6枚で支払う確率を30%, 一万円札で支払う確率を70%と考える。

シミュレーションは表計算ソフトウェアで1以上10以下の整数が同じ確率で出現する乱数を用い, 次のように考えて行った。

rが3以下の場合: 千円札 6枚で支払う 

rが4以上の場合: 一万円札1枚で支払う 

 

問1

次の文章を読み,空欄(コ)~(セ)に当てはまる数字をマークせよ。 

Mさんの手元の千円札の枚数を最初0枚として, シミュレーションをした結果、 表1のようになった。

なお、この表の「手元の千円札の枚数」 が負の数の場合, Mさんが渡さなければならないおつりの千円札が, その数の絶対値の枚数分不足していることを意味する。 そこでMさんは, 「手元の千円札の枚数」 の最小値を調べ,その絶対値の枚数の千円札を事前に準備しておけば, おつりに困らないと考えた。この考えによると, 今回行った1回のシミュレーションの場合,千円札(ス)(セ)枚を事前に準備しておけば, 一度も千円札が不足することなく集金できることになる。

 

解説

表1を埋めながら考える必要がありますが、実際に頭の中でお札のやりとりをイメージするとスムーズに埋めていけるでしょう。

(コ) 5

1人目から順にたどって条件の通りに考えていくと、5人目の時点で手元の一万円札は4枚、千円札は-10枚になります。

続いて、6人目は乱数が4なので、1万円で払った場合で同じように考えます。すると手元の一万円札は5枚、千円札は-14枚になります。

(サ)(シ) 1,2

同様に計算していくと7人目は手元の一万円札は6枚、千円札は-18枚です。続いて8人目は、乱数が3なので千円札6枚の支払いです。その場合、手元の一万円札は6枚、千円札は-12枚になります。なお、このまま10人目までも埋めておくと次の問題も考えやすくなります。

(ス)(セ) 1,8

問題文中には「『⼿元の千円札の枚数』の最⼩値を調べ, その絶対値の枚数の千円札を事前に準備しておけば, おつりに困らないと考えた。」とあります。つまり、表の中での最小値が答えとなります。

問2

Mさんは、 1回のシミュレーション結果では判断できないと考え,このシミュレーションを10,000回行った。 図3は、各シミュレーションでの「手元の千円札の枚数」 の最小値を横軸に,その回数を縦軸に表したものである。この結果に関する考察として最も適当なものを、次の1~3のうちから一つ選べ。 

0 全員が一万円札で支払うケースはなかった。 

1 最後まで千円札が不足しなかったのは,全回数の1割以下である。 

2 別の乱数を使って 10,000回シミュレーションを行っても,最終的な結果のグラフはまったく同じになる。 

3 全員が千円札でお金を支払ったケースが1回以上ある。 

 

解説

(ソ) 1

0:誤り。全員が⼀万円札で⽀払うとどうなるかを考えてみます。 ⼀⼈集⾦するごとに千円札の枚数は4ずつ減少するので、10人から集めると⼿元の千円札の枚数の最⼩値が-40になります。図3には-40のケースも存在していることから、この文章は誤りとなります。

1:正しい。最後まで千円札が不⾜しない場合はどうなるかを考えてみると、⼿元の千円札の枚数の最⼩値が0の場合となります。図3を見ると、このケースは800回であり、10,000回中の0.8割になるため正しい文章です。

2:誤り。例えば1,2,3が出やすい乱数など、どのような乱数を使うかにもよるため、全く同じになるとは言えません。

3:誤り。全員が千円札でお⾦を⽀払ったケースでは「⼿元の千円札の枚数」の最⼩値は0 となります。ただし、最小値が0、つまり千円札が不足しない場合は必ずしも全員が千円札で支払っているとは言えません(例:6,000円で支払った人の千円札からお釣りを渡した場合)。そのため、全員が千円札でお⾦を⽀払ったケースが1回以上あるかどうかは、このシミュレーション結果からは読み取ることができません。

問3

次にMさんは,事前に千円札を20枚用意した場合について考えた。 この場合, メンバー10人から順に集金した際に起こることがないケースを, 次の0~3のうちから一つ選べ。  

 

0 最初の1人が千円札で支払ったとしても、途中でおつりの千円札が不足するケース。 

1 用意された千円札をまったく使うことなく全員からの集金を終えるケース。 

2 千円札で支払った人が5人いて、途中でおつりの千円札が不足するケース。 

3 一万円札で支払った人が8人いて、途中でおつりの千円札が不足せず全員からの集金を終えるケース。 

解説

(タ) 2

起こるかどうか、どのようなケースが考えられるかを順に見ていきましょう。

0:起こりうるケース。最初の1⼈だけが千円札で⽀払い, 残り9人全員がが⼀万円札で⽀払った場合はどうなるでしょうか。(20枚+6枚)+(−4枚)×9人=−10枚となるため、最終的に10枚不⾜します。 

1:起こりうるケース。例えば全員が千円札6枚で⽀払った場合、⽤意した千円札をまったく使うことなく全員からの集⾦を終えることができます。 

2:起こらないケース。「千円札でお⾦を⽀払った⼈が5⼈」とはつまり、⼀万円札で⽀払った⼈が10人中5⼈いて、残りの5人は千円札で支払ったということです。最初の5⼈が連続して⼀万円札で⽀払うと⼿元の千円札の枚数は20枚減少しますが、残りの5⼈は千円札での支払いになるため、⼿元の千円札の枚数は減少しません。そのため、事前に千円札を20枚⽤意すれば途中でおつりの千円札が不⾜することはありません。

3:起こりうるケース。「一万円札で支払った人が8人」ということは、千円札でお⾦を⽀払った⼈が2⼈、⼀万円札で⽀払った⼈が8⼈いたということです。手元にある千円札の最大値は、おつりが減らない状態で2人が千円札で払ってくれる場合で、(20枚+6枚×2人)=32枚。その場合に、あとの8人のおつりで必要になる千円札は(4枚×8人)=32枚です。この場合にはおつりが不足せずに集金を終えることができます。

まとめ

今回は情報Ⅰの第2問を解説しました。問題文をしっかり読み、何を聞かれているかをきちんと正しく読み解くことができれば難易度は高くはありません。ただ、その読解力こそ必要な力であり、それは現代社会でも同じです。正しく情報を受け取り、考える力が求められています。次回は第3問の解説です!少し難易度が上がりますが、自分がどれくらい解けるかぜひ挑戦してみてください。

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