業界動向

日本建築学会論文集 2025年10月号掲載論文まとめ

私たちの暮らしを支える建築技術は、どこまで進化しているのでしょうか。セメントの改良によるインフラの長寿命化、免震技術の経年変化の解明、そして都市の記憶を未来に繋ぐための景観研究まで。日本建築学会の最新論文42件から、建築分野の今とこれからを探ります。

Contents
  1. 構造系論文
  2. 計画系論文:
  3. 環境系論文:

構造系論文

フライアッシュを用いたセメント硬化体からのセシウム溶出抑制メカニズム

著者: 村上一夫, 道正泰弘, 山本武志

概要: 本研究は、フライアッシュ(FA)が放射性セシウム(Cs)の溶出を抑制するメカニズムの解明を目的とする。FA置換率を変えた硬化体の溶出試験や微細構造観察を実施した結果、70%置換時に細孔径の縮小とCa欠損C-S-H表面への選択吸着という二重の効果により、Cs溶出を90%以上抑制する配合閾値が示された。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1097

強熱減量を指標とする浮遊選鉱法の改質水準調整がフライアッシュの物性およびモルタル特性に及ぼす影響

著者: 劉子浩, 高巣幸二, 陶山裕樹

概要: 強熱減量(LOI)を指標に浮遊選鉱で改質したフライアッシュ(FA)のモルタルへの適用効果の検証を目的とする。LOIを3水準で調整したFAの物性評価とモルタル試験の結果、LOI約2%で粒径が最適化され、流動性・圧縮強度・乾燥収縮の全てが改善し、エア練りも削減できることが確認された。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1109

炭酸化養生が高炉セメントC種を用いた低炭素型コンクリートの収縮挙動とクリープ特性へ与える影響

著者: 羊本友, 杉本裕紀, 全振煥, 笠井浩, 今本啓一

概要: 高炉セメントC種(BBFC)を用いたコンクリートに対し、炭酸化養生(CC)が収縮およびクリープを抑制できるかを検証する。標準養生と炭酸化養生で比較実験を行った結果、炭酸Caの生成により早期強度が25%向上し、クリープ係数も15%低減されるなど、実用設計への有効性が示された。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1117

低水セメント比気泡コンクリートの経済的調合の探索およびその基礎物性の検討

著者: 陶山裕樹, 秋吉善忠, 保木和明, 高巣幸二

概要: 低水セメント比の気泡コンクリートにおいて、所定の強度・密度範囲内で最も経済的な配合を決定することを目的とする。応答曲面法(RSM)を用いてコストと強度の最適解を探索した結果、単位コストを最小化する配合を特定し、その弾性係数が見積式より20%低いことなどを明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1126

杭基礎を有する超高層RC造建物の動的地盤ばねの特性と簡易評価式の提案

著者: 山本真太朗, 劉虹, 永野正行

概要: 超高層RC造建物の杭基礎における動的地盤ばねを簡易に評価する式の構築を目的とする。軸対称FEM解析と多数のパラメータ解析から重回帰分析によって簡易式を導出した結果、実データベースに対し±20%以内の精度で動的杭ばね定数を推算できる式を提案した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1134

墓石被害調査に基づく2024年能登半島地震の地震動強さの推定

著者: 地元孝輔

概要: 地震発生後、迅速に地震動強度分布を把握するため、墓石の転倒率を指標とする手法の確立を目指す。能登・富山350地点での墓石転倒状況調査を通じて、転倒脆弱性曲線から加速度を推定した結果、震源距離と転倒率の明瞭な相関を確認し、即時的な震度分布推定手法としての有効性を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1146

鉛プラグ入り積層ゴム支承のエネルギー吸収に対する降伏荷重の定式化

著者: 山本雅史, 高山峯夫, 森田慶子

概要: 鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)において、鉛の温度とひずみ速度依存性を考慮した降伏荷重の評価式を構築することを目的とする。大型動的実験とFEM解析を組み合わせ、Arrhenius形式でパラメータを決定した結果、実験値と平均5%以内で一致する降伏応力の定式化に成功した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1158

実建物で使用されている天然ゴム系積層ゴムの経年変化に関する研究

著者: 山上聡, 安井健治, 舟木秀尊, 小山慶樹, 洲鎌星, 三須基規, 清水美雪, 高山峯夫, 森田慶子

概要: 実運用30年の免震建物から抜き取った天然ゴム系積層ゴム(NRB)の水平剛性の経年変化を把握する。実建物から抜き取った試験体と加振歴のない監視試験体を比較解析した結果、監視試験体の剛性低下率が熱老化加速試験の予測値より大きく、加速試験の温度条件を見直す必要性を示唆した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1167

ライブホール床の継続的な振動計測データに基づくタテノリ動作による加振力の研究

著者: 吉田直人, 小槻祥江, 冨吉雄太, 青木貴

概要: ライブホールにおける観客の縦揺れに対し、慣性マス装置を付加した浮動床による振動低減効果を実証する。1年間の床振動データから加振力スペクトルを算出し、慣性質量比を周波数に応じて最適化した結果、慣性マス床が反力を従来比で最大40%低減できることを確認し、新たな制振設計指針を提示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1177

温度荷重解析の繰り返しによる膜構造の形状解析手法

著者: 小川司, 藤井英二

概要: 膜構造の設計において、専用ソフトを使わず汎用FEMだけで均一応力形状を探索する手法の確立を目的とする。均一応力面と負温度荷重を与えた膜面の微分方程式が近似的に等価であると定式化し、温度荷重の繰り返し解析で形状を収束させる手法を開発した結果、誤差2%以内で形状決定できることを実証した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1187

1層ロッキングCLT耐力壁構造の地震時挙動と耐震性能

著者: 百瀬奏, 辻拓也, 五十田博, 中川貴文, 荒木康弘, 松田昌洋

概要: 一般的な金物を用い、中小地震では無損傷で、大地震時にはロッキング挙動により復元力を発揮するCLT耐力壁の地震時挙動を解明する。実物大のCLT壁を振動台で加振し、崩壊限界まで負荷を与えた結果、設計層間変形角1/120では無傷、1/50でロッキングが作動し、1/30でも崩壊しない高い耐震性能が確認された。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1195

モンテカルロシミュレーションを用いたCLTの面外曲げ性能の推定手法に関する研究

著者: 大木文明, 平松靖, 宇京斉一郎, 宮武敦, 井道裕史

概要: CLT(直交集成板)の面外曲げ性能を確率的に推定するシミュレーション手法の確立を目指す。曲げ試験と物性値の相関実測に基づき、モンテカルロ法で仮想CLTボードを生成して確率モデルを構築した結果、性能分布が対数正規分布とよく一致し、設計用の部分係数を提案できた。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1203

木質構造用ねじによるめり込み補強

著者: 戸塚真里奈, 稲山正弘

概要: 圧延直交集成材の梁端部などを想定し、ねじを打ち込むことによる圧縮耐力・剛性向上の効果を定量的に評価する。スギとカラマツの試験体にねじ本数を変えて圧縮試験を実施した結果、6本以上の補強で耐力が2.7倍、剛性が2.6倍に向上することを確認し、樹種による既存算定式の適合性の違いを明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1213

ウェブとフランジの強度が異なるH形鋼の実大引張実験に基づく降伏引張応力度と降伏ひずみ度の評価

著者: 宍戸唯一, 增田浩志, 小橋知季, 佐藤圭一, 中安誠明, 廣嶋哲

概要: ウェブとフランジで強度が異なる溶接H形鋼について、部材全体の降伏応力度と降伏ひずみ度を評価する算定式の提案を目的とする。強度差のある部材の実大引張実験と非接触ひずみ計測を行った結果、全断面降伏後のひずみ硬化を考慮した評価式を提案し、その有効性を実証した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1222

複数の薄板軽量形鋼をドリルねじ接合した薄板組立圧縮材の軸圧縮耐力

著者: 小橋知季, 三井和也, 桑田涼平, 佐藤圭一

概要: 冷間成形の薄板軽量形鋼をドリルねじで複数接合した組立材の軸圧縮耐力を評価する実用的な設計法を提案する。実大圧縮試験と有限要素解析(FEA)を併用し、曲げ座屈とねじれ座屈のうち小さい方を弾性座屈応力度とする設計式を検証した結果、実験最大耐力を±10%以内の精度で評価できることが示された。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.90.1234

計画系論文:

VR空間における天井形状と空間寸法が美術館展示室の印象評価に与える影響

著者: 周乙茹, 宗方淳

概要: 本研究は、美術館の展示室において天井形状や天井高、平面比が来館者の空間印象にどう影響するかを明らかにすることを目的とする。VR技術を用いた印象評価実験を実施した結果、天井形状が空間の印象評価や体積知覚に与える影響を定量的に示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2111

土を用いた建築のあり方に関する研究(その1): 国内外の報告事例に基づく近年の動向に関する調査

著者: 森下啓太朗, 山田宮土理

概要: 循環型経済と環境負荷低減の観点から、近年の「土を用いた建築」の動向を把握することを目的とする。国内外の報告事例を調査・分析した結果、機能に応じた安定剤の選択的利用や、機械化・乾式工法の多様化など、現代建築の要求に対応する実践的な動向が明らかになった。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2121

港町久礼の都市形成と文化的景観 (その1): 近代期の運材経路と木材関連施設に着目して

著者: 橋田竜兵, 菊地成朋, 天満類子, 菊地稚奈, 浦井亮太郎

概要: 港を中心とした人間活動と自然環境の相互作用が、どのように文化的景観を形成したかを解明することを目的とする。高知県久礼を事例に、木材産業の歴史に着目して調査した結果、港の発展、人間活動、海岸開発のダイナミクスが一体となって現在の景観を形成した過程を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2131

製鉄集落・山内の領域性

著者: 武藤美穂子

概要: 1920年代まで続いた「たたら製鉄」の製鉄集落「山内」が持っていた社会的境界と領域性を明らかにすることを目的とする。歴史資料に描かれた山内の物理的領域を分析した結果、鉄を生産する「山内門」の内側と、農業を営む「地解集団」との間に明確な社会的境界が形成されていたことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2141

臨港地区「無分区」の土地利用実態に関する研究

著者: 宇野晃平, 藤賀雅人

概要: 日本の主要港湾において、用途が指定されていない「無分区」の臨港地区の土地利用実態を明らかにすることを目的とする。実態調査の結果、無分区地域は商業施設などが立地する市街地的な利用と、区域設定が困難な未利用区域の2種類に大別され、定期的な見直しの必要性があることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2153

都市再生特別措置法(2002)制定以降の東京都都心三区のホテル計画に関する研究

著者: 幕田早紀, 豊川斎赫

概要: 都市の国際競争力強化を目的としたホテル計画の実態を、都市再生特別措置法の運用から把握する。東京都心三区で容積率緩和制度を利用したホテルを調査した結果、外資系ホテルの増加や、MICE機能促進のための近隣施設との連携といった動向を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2163

長崎県壱岐市4町(旧壱岐郡4町) 中心部の変容過程

著者: 森田健太郎, 黒瀬武史

概要: 離島振興法制定から平成の大合併に至るまで、長崎県壱岐市の中心市街地がどのように変容したかを分析する。公共施設整備とインフラ開発に着目して分析した結果、海岸線に沿った物理的拡大と、それに直交する形での機能的拡大という2つの変容過程を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2175

公営住宅の整備・管理計画と都市構造との整合性に関する研究 (その1): 立地適正化計画策定以前の公営住宅等長寿命化計画に基づく公営住宅の立地実態

著者: 山梨裕太, 荒木笙子, 姥浦道生

概要: 公営住宅の配置計画が、都市全体の構造とどの程度整合しているかを評価することを目的とする。既存住宅の閉鎖と新設住宅の立地傾向を分析した結果、新設住宅は誘導区域内に集中する一方、老朽化住宅の立地が集積状況に大きな影響を与えていることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2187

SPATIAL CORRELATION BETWEEN REDUNDANCY OF ROUTE OPTIONS AND COMMERCIAL FACILITY LOCATIONS IN STATION FRONT AREAS

著者: Dai ZHONG, Takehiro SAKURAI, Takatoshi ARAI, Kotaro IMAI

概要: 災害計画用に開発された経路の冗長性指標(RI)を、都市空間分析の指標として応用できるか評価する。主要駅周辺の歩行者ネットワークを対象に、RI値と飲食店集積の相関を分析した結果、RI値が高い区域ほど飲食店が集積する強い相関が見られ、空間的多様性を示す指標としての有効性を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2199

機能と規模による「小さな拠点」の類型化と各類型の利用実態に関する研究

著者: 前垣灯里, 森山大成, 城本大暉, 小沢啓太郎, 田村将太, 田中貴宏, 塚井誠人

概要: 山間部などで生活機能を維持するために整備される「小さな拠点」を類型化し、その利用実態を明らかにすることを目的とする。機能と規模によって拠点を分類し、利用実態を調査した結果、人口集中度や利用実態が類型によって異なることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2209

地域特性に対応した避難者支援の検討手法に関する研究

著者: (著者名の記載なし)

概要: 災害時において、地域ごとの特性に基づいた避難者の動向を予測し、効果的な支援策を検討する手法を提案する。地方自治体を事例に、地域特性の分類、避難シナリオの推定、支援経路の評価を段階的に実施し、その検討プロセスの有効性と今後の課題を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2219

職業能力開発校における木造大工技能者の育成システムに関する研究

著者: 榎優志, 焦子鈺, 石垣文, 角倉英明

概要: 職業能力開発校における木造大工技能者の育成システムの現状と課題を明らかにすることを目的とする。育成システムを5つの要因から分析した結果、「専門知識」や「施設」は充足している一方、「訓練士」「資金」「訓練生」の確保が課題であることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2227

総合建設業の建築設計者における離職の意思決定プロセスに関する研究

著者: (著者名の記載なし)

概要: 総合建設業に所属する建築設計者の離職要因を分析し、人材定着のための管理の枠組みを特定する。離職の意思決定プロセスを分析した結果、離職は単一ではなく複数の要因が複雑に作用しており、定着には自身の役割と仕事の意義を実現できる環境が重要であることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2239

2021年における建物寿命の推計

著者: 小松幸夫, 堤洋樹

概要: 全国の固定資産建物台帳データに基づき、日本の建物の平均寿命を推計する。人間の平均寿命を推計する手法を応用した結果、2021年時点での全建物の推定平均寿命は69.59年、うち木造戸建住宅は69.53年、RC造事務所は69.47年であることを明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2251

解体現場におけるCLTパネルのリサイクル手法の提案と評価

著者: 王索奥, 池田靖史

概要: CLT(直交集成板)建築物の解体時において、効率的なリサイクル手法を提案し、その効果を評価する。BIMモデルによるリサイクル計画の事前策定や切断ガイドブックの作成といった手法を導入した結果、作業効率、安全性、品質管理が改善され、期待以上のリサイクル効率を達成した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2259

金属板被覆草葺民家の発生と展開

著者: 大井隆弘, 谷口賛

概要: かつて茅葺きであった民家が、いつ頃から金属板で覆われるようになったのか、その実態を明らかにすることを目的とする。三重県伊賀市の10集落で聞き取り調査を実施した結果、新築の茅葺住宅は1960年頃に途絶え、金属板による被覆工事は1955年頃から始まり1970年頃にピークを迎えたことがわかった。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2270

沖縄の平和祈念公園におけるランドスケープデザインの変遷

著者: 真木利江

概要: 沖縄の平和祈念公園が、終戦から2001年までにどのような景観デザインの変遷を辿ったかを明らかにする。公園の設計変遷を時系列で分析した結果、当初の南北軸を基本とした設計から、同心円状のモニュメント追加に伴い、東部海岸へ抜ける新たな軸線が設定されていった過程を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2281

横井謙介の建築活動とその建築作品の特徴に関する研究

著者: 項一朗, 西澤泰彦

概要: 20世紀初頭に中国東北部で活動した建築家・横井謙介の活動と作品の特徴を明らかにすることを目的とする。職業経歴と設計特性を分析した結果、セセッション様式など西洋の建築様式を取り入れたブロック型の建築物が、当時の中国東北部の都市発展に寄与したことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2292

シドニーオペラハウスにおける建築家三上祐三の事跡

著者: 岡崎ほのか, 元岡展久

概要: シドニーオペラハウスの設計に携わった建築家・三上祐三の具体的な貢献を、新発見の一次資料を用いて明らかにすることを目的とする。図面や手紙などの資料を分析した結果、3度のプロジェクト参加を通じて、コンコースの梁やシェル屋根など4つの主要な建築要素の設計に貢献したことを明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2304

ル・コルビュジエのナンジェセール=エ=コリのアパルトマンにおける装飾 (その1): もうひとつの「蜂窩」

著者: (著者名の記載なし)

概要: ル・コルビュジエが設計したアパルトマンにおいて、「蜂窩」という概念がどのように展開されたかを分析する。建物の構築過程を分析し空間構成の変遷を追った結果、ドミノシステムによる柱とスラブの構造にもかかわらず、最上階のヴォールト屋根が流動的な室内空間を生み出していたことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2315

STUDY ON TRENDS OF CONTEMPORARY ASIAN ARCHITECTURAL THOUGHT BY DISCOURSES OF ARCASIA

著者: Yiwen ZHANG, Dukwoo KIM, Mina KOJIMA, Shigeki MATSUBARA, Michihiro KITA

概要: アジア建築家評議会(ARCASIA)での議論を通じて、現代アジアの建築思想の動向を分析する。1984年から2021年までの会議の基調講演を統計的に分析した結果、「現代主義への反省」「地域・文脈」「自然・環境」が主要なテーマであり、4つの時代区分を特定した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2325

PHENOMENOLOGICAL EXPERIENCE DESIGN THEORY IN THE DISCOURSE EXPRESSIONS OF RYUJI NAKAMURA

著者: Shengya QIN, Takahiro TAJI

概要: 建築家・中村龍治の言説から、彼の体験設計に関する理論を構築することを目的とする。KJ法などを用いてキーワードを抽出し構造化した結果、建築家、作品、利用者の3つの関係グループからなる体験設計の理論図を構築した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2337

空間の「分割」に着目した篠原一男の住宅作品の特徴の変遷: 平面の輪郭・屋根の形態・構造に関する分析を通じて

著者: 金沢将, 坂牛卓, 大村聡一朗

概要: 建築家・篠原一男の住宅作品の設計手法が、空間の「分割」という視点からどのように変遷したかを明らかにする。3Dモデルを用いて平面輪郭や屋根形態などを分析した結果、各様式の主題概念と空間の分割手法との間に明確な対応関係があることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2349

ジュネーヴ「国際機関地区」における「メゾン・デ・コングレ」 設計競技案の空間構成に関する研究

著者: 中村茉生, 堀田典裕

概要: 1958-59年に行われたジュネーヴの「メゾン・デ・コングレ」設計競技の入賞案を対象に、その空間構成を評価する。入賞6作品の空間構成を分析した結果、「プラットフォーム」が地形対応や歩車分離に、「ヴェランダ」と「テラス」が景観の眺望点として機能していたことを明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.90.2361

環境系論文:

空き店舗の多寡が商店街全体の印象に及ぼす影響に関する研究

著者: 宇野隆之介, 西名大作, 金田一清香, 姜叡, 簡士杰, 張勤怡

概要: 商店街に存在する空き店舗の数が、街全体の印象にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とする。全天球画像を用いた印象評価実験を実施した結果、空き店舗数は商店街の印象に大きな影響を与え、その数によって評価の構造自体が変化することを明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.90.473

廊下空間の誘導灯の探索性と視認性に関する研究

著者: 矢部周子, 原直也, 船木菜々子

概要: 幅3mの廊下空間におけるC種誘導灯の探索性および視認性を検証することを目的とする。誘導灯の輝度や背景、設置位置など77の条件で実験を行った結果、輝度コントラスト、見かけの大きさ(実体角)、設置位置が発見時間に影響を与えることを定量的に分析した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.90.484

現代日本の庁舎における環境配慮・防災併活用に関する研究 (その2): 環境配慮・防災併活用技術(蓄熱槽) に関する実態調査

著者: 本多拓斗, 藤原紀沙

概要: 地方公共団体の庁舎再建において、環境性能の向上と防災機能の統合をどのように両立させるかを検討する。特に蓄熱槽の活用に着目し、環境配慮と防災機能を併用する技術の実態調査を行った結果、平常時の環境配慮と非常時の防災機能を統合する技術の現状と課題を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.90.492

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