日本建築学会論文集 2026年8月号まとめ
日本建築学会論文集 Vol.91 No.846 (2026年8月発行) の各論文情報を構造系、計画系、環境系に分類してまとめています。
- 構造系論文
- 12年間のウレタン防水層の動暴露試験により見いだされたこと
- 入力地震動の空間変動が傾斜基盤を有する地盤上に建つ杭基礎免震建物の杭応力に及ぼす影響
- 遠心載荷実験における杭の軸力保持能力低下と建物の沈下・傾斜の関係
- 縁切引抜工法における既存杭撤去・埋戻しに伴う周辺地盤の緩みに関する数値解析を用いた要因検討
- 3層枠組壁工法住宅の震動台実験に基づく終局性能分析
- スギ直交積層接着部のブロックせん断強度の基準値に関する考察
- 孔あき鋼板ジベルで補強したコンクリート充填角形鋼管柱に接合される鉄骨梁端接合部の構造性能
- H形鋼柱を用いた既存鋼構造骨組における柱梁接合部の塑性変形能力評価
- 骨組節点の回転剛性を用いた節点移動のない柱の座屈長さ係数評価法
- 火災区画位置と大梁温度に着目した鋼構造床架構の火災時崩壊挙動解析
- 計画系論文
- APPLICABILITY OF CNC-FABRICATED WOODEN JOINERIES IN BRAZILIAN SOCIAL HOUSING
- 緑化中庭をもつ住宅の設計者言説にみる生活行為と中庭特性の対応関係
- 大学の拡張型ラーニングコモンズにおける行動の多様性
- 山間地域における自治体(鳥取県日南町)のコミュニティ持続計画に関する研究(その3):旧村地区の施設活用型の事業とコミュニティを支える共助の取組み
- 東北地方に現存する地歌舞伎の実態と地域における役割に関する研究
- 元小屋の統括拠点機能と空間構成
- 高密度居住の集落における<従たる住居>の利用実態
- 中国における大学キャンパスの郊外新設動向と地域との関係性の変容
- 中書島の小規模飲み屋群にみるスナックの空間性
- 人口・世帯・住宅の変動から見た大都市圏郊外住宅地の変化
- インフォーマル市街地における住宅投資と賃貸化が居住環境と居住主体に与える影響
- 救助実施市による応急仮設住宅供給のあり方に関する研究
- 学童期のテリトリー及び境界の認識とその要因に関する基礎的研究
- 公開情報を活用した公共施設建物の寿命推計
- 坂東三十三所・秩父札所の三間堂に備わる半屋外礼拝空間
- 越後大工・五代小黒杢右衛門が造営した大庄屋住宅の配置構成
- 洋鉄角釘の生産が本格化した時期と併用された角釘と丸釘の販売
- 中国河南省嵩山における登拝道の成立とその背景
- 19世紀初頭におけるミラノ城の再利用構想に関する研究
- シャルロット・ペリアンにおける写真と建築(その1):写真壁の制作
- ベニス憲章の邦訳にみる日本における建築遺産保存修復理念の言語化とその理解
- 環境系論文
- 回復性室内環境デザイン:多感覚バイオフィリック刺激の心理・生理的効果
- 定常的な地盤環境振動の振動源定位の基礎的検討
- オフィスの自然換気が執務者の積極的快適性に与える影響
- 病院などのエネルギーセンターにおけるMCP強化に関する研究(その1):設備機能トリアージに基づく給電制限と台数制御による非常用発電機の発電可能時間の評価
- 屋上緑化用軽量人工土壌の排水特性と流出遅延効果の検討
- 熱源システムの最適運転計画における運転指標による省CO2効果と省コスト効果の検証
- 動的CO2排出係数を用いた既存戸建住宅における改修手法および設備運用の評価
- 深層学習を用いた厨房従事者の動線データとウェルネス性の関連性の分析
構造系論文
12年間のウレタン防水層の動暴露試験により見いだされたこと
著者: 中島 由美子, 石原 沙織, 塚越 雅幸, 鴨志田 峻輔, 田中 享二
概要: 本研究は、トップコートを施したウレタン防水層の長期耐久性を静的・動的屋外暴露試験で評価した。静的試験ではひび割れが生じなかった一方、動的試験では下地接合部上の防水層底部とトップコート表面を起点とするひび割れが確認された。トップコートのひび割れ発生時期は主にウレタン層厚と目地の動きに依存し、その関係を表す数理モデルを構築するとともに、FEM解析で発生位置を検討した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.900
入力地震動の空間変動が傾斜基盤を有する地盤上に建つ杭基礎免震建物の杭応力に及ぼす影響
著者: 伊東 薬師, 飛田 喜則, 宮本 紗弥, 劉 虹, 永野 正行
概要: 傾斜基盤を有する地盤上の杭基礎免震建物について、入力地震動の空間変動が杭応力に及ぼす影響を解析した。長手方向を基盤傾斜方向に合わせた単純な建物・二次元地盤モデルを用いた結果、長手方向の地震動位相差により建物両端の杭応力が増加し、基礎の軸剛性による拘束から生じる軸力伝達が主因であることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.906
遠心載荷実験における杭の軸力保持能力低下と建物の沈下・傾斜の関係
著者: 田村 修次, 岡崎 柊治, 北村 俊樹, 柏 尚稔, 林 和宏, 新井 洋
概要: 2スパンおよび1スパン基礎を持つ上部構造の動的遠心載荷実験により、杭の破壊が不同沈下と杭・基礎梁応力に及ぼす影響を検討した。1スパン基礎では杭の塑性変形により不同沈下が急速に進み、パイルキャップが地表に接触すると沈下が停止した。一方、2スパン基礎では接触せずに沈下が停止し、杭破壊後の曲げモーメントには基礎梁の傾斜と杭頭水平力が影響した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.918
縁切引抜工法における既存杭撤去・埋戻しに伴う周辺地盤の緩みに関する数値解析を用いた要因検討
著者: 金田 一広, 青木 雅路, 森 利弘, 中井 正一, 中井 照夫, 須藤 友輔
概要: 既存杭を縁切引抜工法で撤去・埋戻しする際の周辺地盤の緩みについて、Subloading tij modelを用いた数値解析で発生要因を検討した。杭撤去に伴う平均有効応力の低下が、観測される地盤強度低下の主要因であることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.926
3層枠組壁工法住宅の震動台実験に基づく終局性能分析
著者: 太田 和杜, 高谷 和樹, 長江 拓也, 高橋 武宏
概要: 2019年に実施された3層枠組壁工法住宅の実大震動台実験を基に、耐震等級3で設計された建物の終局性能を分析した。基礎固定・JMA神戸波100%入力時に1階耐力壁脚部の金物で引張破断が生じ、建物全体の転倒モーメントと終局抵抗モーメントの比較により架構脚部の破壊を評価できることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.935
スギ直交積層接着部のブロックせん断強度の基準値に関する考察
著者: 高梨 隆也, 大橋 義徳, 森 拓郎, 宮武 敦, 宮本 康太, 中島 史郎, 谷口 翼
概要: スギを直交積層接着した試験体について、繊維直交方向と斜め方向から採取した試料のブロックせん断試験を実施した。多重回帰分析から密度が強度に大きく影響し、接着面も寄与する可能性を確認した。統計モデルでは対数正規分布が最も適合し、その結果を基にブロックせん断強度の基準値を提案した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.947
孔あき鋼板ジベルで補強したコンクリート充填角形鋼管柱に接合される鉄骨梁端接合部の構造性能
著者: 上瀧 敬太, 日向 大樹, 久保田 淳, 澤本 佳和, 瀧 正哉
概要: コンクリート充填角形鋼管柱に接合される鉄骨梁端を孔あき鋼板ジベルで補強し、構造実験により性能を評価した。柱スキンプレートの面外変形が抑制されることで、補強した梁端接合部は高い耐力と変形能力を示し、施工性に課題のある水平ハンチの代替となる可能性を確認した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.956
H形鋼柱を用いた既存鋼構造骨組における柱梁接合部の塑性変形能力評価
著者: 吉川 隼翔, 西山 恒平, 聲高 裕治, 石井 大吾, 森井 雄史, 寺田 岳彦
概要: H形鋼柱を用いた既存鋼構造骨組から切り出した十字形部分架構の定振幅繰返し載荷試験を行い、パネル降伏型溶接柱梁接合部の塑性変形能力を検討した。梁端の亀裂発生・破断までの変形能力曲線を作成し、変動振幅試験で評価法を検証するとともに、時刻歴応答解析からパネル降伏が梁端の累積損傷に与える影響を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.967
骨組節点の回転剛性を用いた節点移動のない柱の座屈長さ係数評価法
著者: 西村 拓真, 城戸 將江
概要: 節点移動を伴わず座屈する骨組について、座屈挙動を支配する節点と周辺部材からなる縮約モデルの座屈解析により柱の座屈長さ係数を求めるRS法を提案した。推定値は実値に対して約-1.5%から2.5%の誤差範囲となり、一般的な評価法としての有効性を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.979
火災区画位置と大梁温度に着目した鋼構造床架構の火災時崩壊挙動解析
著者: 淺井 薫平, 高木 次郎
概要: 長スパン大梁と無耐火被覆の小梁を持つ一般的な鋼構造オフィス床架構を三次元有限要素モデルで解析し、火災区画位置、大梁温度、床スラブ配筋が崩壊挙動に与える影響を調べた。カテナリー作用と膜作用により鉛直荷重の伝達経路が変化し、条件によっては大梁を無耐火被覆とする性能設計の可能性を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aijs.91.991
計画系論文
APPLICABILITY OF CNC-FABRICATED WOODEN JOINERIES IN BRAZILIAN SOCIAL HOUSING
著者: Isabelle Thamie SARAIVA NOBAYASHI, Ryo MURATA
概要: ブラジルのソーシャル・ハウジングが抱える環境負荷、費用、品質上の課題に対し、CNC加工木部材の適用可能性を検討した。CNC加工は設計自由度、環境負荷低減、材料調達、少人数での迅速施工に利点がある一方、現行の住宅予算を上回る課題があり、地域条件に即した追加検討が必要と結論づけた。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1830
緑化中庭をもつ住宅の設計者言説にみる生活行為と中庭特性の対応関係
著者: 神山 響, 藤井 伸介
概要: 2001~2024年の『新建築住宅特集』に掲載された緑化中庭を持つ住宅103事例を対象に、設計者言説から生活行為と中庭の配置・囲まれ方・空間連続性・仕上げ・植栽の関係を分析した。12類型を抽出し、中庭が鑑賞対象から生活・自然・地域を媒介する多機能空間へ変化してきたことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1840
大学の拡張型ラーニングコモンズにおける行動の多様性
著者: 木村 琉星, 北代 沙季, 宮崎 慎也, 四ヶ所 高志, 野田 りさ
概要: 図書館併設型から多様な形態へ発展した大学の「拡張型ラーニングコモンズ」を対象に、10大学12施設28フロアで9,734人の行動を調査した。時間変化、集団規模、行動特性を定量分析し、5つの特徴的な行動パターンとそれに対応する空間特性を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1851
山間地域における自治体(鳥取県日南町)のコミュニティ持続計画に関する研究(その3):旧村地区の施設活用型の事業とコミュニティを支える共助の取組み
著者: 久保 早智, 細田 智久, 三島 幸子, 中園 眞人
概要: 鳥取県日南町の旧村地区を対象に、学校統合後に残る廃校舎を活用した事業、買い物支援や自然環境のブランド化を図る多里地区の共助活動、まちづくり協議会と事業者の連携実態を調べ、山間地域のコミュニティを持続させる仕組みを考察した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1859
東北地方に現存する地歌舞伎の実態と地域における役割に関する研究
著者: 浦部 智義, 渡邉 洋一
概要: 東北地方に現存する地歌舞伎について、新型コロナウイルス流行前後の活動と運営体制の変化を調査した。地域や外部協力者との関係が途絶えても公演日程を維持した団体がある一方、流行後に運営体制を拡大した団体もあり、伝統芸能の地域的役割と継承条件を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1871
元小屋の統括拠点機能と空間構成
著者: 武藤 美穂子
概要: 中国地方で唯一現存する菅谷たたら山内の元小屋について、現地調査と史料分析から機能と空間構成を解明した。元小屋は事務所にとどまらず、帳場と鍛冶場を中心に製鉄活動と集落生活の社会基盤を統括する複合拠点であり、伝統的製鉄集落を理解する新たな枠組みを提示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1883
高密度居住の集落における<従たる住居>の利用実態
著者: 松下 藍子, 佐久間 康富, 森 友里歌
概要: 和歌山市雑賀崎地区の高密度集落における「従たる住居」の利用を調査した。目的に合う住居を先に選び仕事・交流に広く開く「用途先行型」と、主住居近くの空間に後から用途が生まれる「空間先行型」の2類型を確認し、複数住居の利用が生活条件の向上と居住環境の維持に寄与することを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1892
中国における大学キャンパスの郊外新設動向と地域との関係性の変容
著者: 盧 泉林, 斎尾 直子, 三井 健吾
概要: 1978年以降の中国で進む大学キャンパスの郊外新設について、北京・上海・広州の分布と政策を比較し、7つの大学城を事例分析した。高等教育拡大と都市化政策によるキャンパス再編が、都市スプロール、農村・都市環境、土地利用、地域構造の変容と結びつくことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1903
中書島の小規模飲み屋群にみるスナックの空間性
著者: 清山 陽平, 神吉 紀世子
概要: 歴史的市街地縁辺に位置する中書島の小規模飲み屋群を、資料調査、スナック経営者への聞き取り、建物実測から分析した。地区内に広く点在するスナックの分布と、各店舗が街路との微妙な距離を操作する空間構成を明らかにし、地域住民の居場所としての特質を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1912
人口・世帯・住宅の変動から見た大都市圏郊外住宅地の変化
著者: 西原 まり, 饗庭 伸
概要: 八王子市の住宅地を対象に、2000年以降20年間の人口、世帯数、住宅延床面積の変化を5年刻みで分析した。人口減少は対象地区の30%で見られたが世帯減少は中心市街地などに限られ、住宅地の形成類型によって変化パターンが異なり、ニュータウンの増加率が最も高いことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1924
インフォーマル市街地における住宅投資と賃貸化が居住環境と居住主体に与える影響
著者: 松下 航太郎, 小野 悠
概要: ザンビア・ルサカのインフォーマル市街地を2009年と2023~2024年に調査し、住宅投資と賃貸化が居住環境と居住者に与える影響を分析した。建物密度と賃貸住戸は増加したが建替えは限定的で、既存建物の継続利用による賃貸化が進み、同一区画内で家主世帯と借家世帯が共存することで居住環境と定住意識に差が生じていた。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1935
救助実施市による応急仮設住宅供給のあり方に関する研究
著者: 石渡 真琴, 藤賀 雅人
概要: 救助実施市による応急仮設住宅供給の体制を検討した。都道府県が進めてきた対応を引き継ぎながら市が準備を開始しており、都道府県が供給計画と広域調整を担い、市が配分など具体策を進める役割分担が有効であること、災害状況に応じた調整方法を供給団体も含め事前協議する必要性を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1943
学童期のテリトリー及び境界の認識とその要因に関する基礎的研究
著者: 山田 脩馬, 山田 圭二郎
概要: 19人が作成した認知地図と聞き取りを分析し、学童期に形成されるテリトリーと境界の認識、その要因を検討した。テリトリー形成を5モデルに分類し、境界形成に影響する8要因を抽出した。これらは空間構造、視覚、社会、心理、探索行動、非日常性などを通じて子どもの自律的行動を制約していた。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1952
公開情報を活用した公共施設建物の寿命推計
著者: 服部 駿史, 石田 航星, 板谷 敏正, 石原 健司
概要: 東京都内の自治体が公開する情報を用い、Kaplan-Meier法で公共施設建物の実寿命を推計した。財政力の高い自治体ほど更新が活発で平均寿命が短く、大規模施設は解体の難しさから長寿命となる傾向を確認した。法定基準と実寿命には差があり、実績値を用いることで将来の維持更新費をより正確に予測できるとした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1962
坂東三十三所・秩父札所の三間堂に備わる半屋外礼拝空間
著者: 宮部 瑛理
概要: 坂東三十三所・秩父札所の三間堂に設けられた礼拝空間を、室内儀礼専用型、室内儀礼と半屋外礼拝の併設型、内陣周囲の半屋外礼拝型の3類型に整理した。後二者は仏教儀礼と民衆の礼拝要求を結びつける重要な役割を担ったと考察した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1972
越後大工・五代小黒杢右衛門が造営した大庄屋住宅の配置構成
著者: 目黒 新悟, 原田 宗周, 那須 聖, 山﨑 鯛介, 黒野 弘靖
概要: 越後大工・五代小黒杢右衛門が造営した大庄屋住宅の配置構成を、前身住宅と新潟県内の類例と比較した。彼の住宅は内部構成に共通点を持つ一方、前身や類例との一致は限定的であり、旧笹川家住宅を主要な参照モデルとした桂家住宅の建設が背景にあると考察した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1983
洋鉄角釘の生産が本格化した時期と併用された角釘と丸釘の販売
著者: 平山 育男
概要: 日本で洋鉄角釘の本格生産が始まった時期と、角釘・丸釘の販売実態を調べた。本格生産は1873~1874年に始まり、明治中期には両方を扱う販売者が存在した。明治後期に洋鉄角釘の生産は衰退したが、和船釘、鋲釘、蹄鉄釘などは限られた業者により生産・販売が続いた。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.1995
中国河南省嵩山における登拝道の成立とその背景
著者: 楊 佳楽, 藤川 昌樹
概要: 中国河南省嵩山の3本の皇帝登拝道と1本の遊覧道について、歴史文献と絵図から成立・変遷を分析した。登拝道の変化は山岳信仰の景観変容を反映し、いずれも谷筋から尾根道へ上り山頂に至る共通の地形構造を持つこと、皇帝の事業と宗教変容が形成と利用を方向づけたことを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.2003
19世紀初頭におけるミラノ城の再利用構想に関する研究
著者: 横手 義洋
概要: 19世紀初頭のミラノ城再利用構想であるフォロ・ボナパルテ計画を分析し、城の堅牢で規則的な平面が用途転換を可能にし保存につながったことを示した。アントリーニの求心的計画は歴史建築のランドマーク性を、カノニカの軸線型計画は民間資本による都市計画実現を示し、当時の保存戦略の変化を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.2015
シャルロット・ペリアンにおける写真と建築(その1):写真壁の制作
著者: 千代 章一郎
概要: 建築家・デザイナーのシャルロット・ペリアンによる室内装飾の写真壁制作を分析した。1930年代の写真壁は子どもや自然を題材とし、フォトモンタージュによる政治的意味を帯びていたが、1941年の日本での展覧会以降はコンクリートの強固な物質性とは異なる新たな「壁」の表現へ変化した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.2023
ベニス憲章の邦訳にみる日本における建築遺産保存修復理念の言語化とその理解
著者: 金井 健
概要: ベニス憲章の初期邦訳に関わった日本の研究者・専門家が持っていた建築遺産保存の暗黙的理解と、国際的保存規範の受容過程を検討した。東京文化財研究所所蔵の関野克・飯田喜四郎による2種の翻訳原稿など新資料を用い、日本における保存修復理念の言語化と国際関係の形成を明らかにした。
DOI: https://doi.org/10.3130/aija.91.2034
環境系論文
回復性室内環境デザイン:多感覚バイオフィリック刺激の心理・生理的効果
著者: 張 楠, 蔡 鋼偉, 張 涛, 盧 韻琴, 黒木 荘一郎, 高 偉俊
概要: 視覚、視覚+嗅覚、視覚+嗅覚+聴覚のバイオフィリック環境で、主観評価、心電図、脳波を用いて心理・生理反応を比較した。全条件でストレス回復が見られ、多感覚刺激ほど効果が高かった。三感覚刺激は副交感神経活動を高め、視覚・嗅覚刺激は覚醒を抑えてリラックスを促進し、機械学習による快適性・選好予測は87%超の精度を得た。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.428
定常的な地盤環境振動の振動源定位の基礎的検討
著者: 成田 修英, 小阪 宏之, 宮田 悠理, 林田 拓己, 太田 愛子, 包子 翔平, 吉井 浩人, 小川 直人, 洲鎌 星
概要: 地球物理探査で用いられる周波数・波数解析を応用し、定常的な地盤環境振動の振動源を定位する方法を提案した。実際の地盤振動で適用性を検証し、振動源の所在範囲を絞り込めること、解析を反復することで必要な空間分解能まで範囲を狭められる可能性を示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.440
オフィスの自然換気が執務者の積極的快適性に与える影響
著者: 内山 祐樹, 鵜飼 真成, 新田 和紀, 山﨑 日菜子, 清水 昭浩, 木村 健太郎, 田辺 新一
概要: 自然換気エリアと機械空調エリアを執務者が選べる中間期のオフィスで、環境計測、日次アンケート、リアルタイム快適性投票を実施した。自然換気は室温変動を増やし温冷感を涼しい側へ移した。自然換気では瞬間的な心地よさが満足度に寄与する一方、機械空調では不満を避けることが重要であり、快適性の質が異なることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.449
病院などのエネルギーセンターにおけるMCP強化に関する研究(その1):設備機能トリアージに基づく給電制限と台数制御による非常用発電機の発電可能時間の評価
著者: 田中 翔大, 村上 公哉, 山川 智, 渡邉 崇
概要: 病院機能をJIS T 1022の医用室区分に基づく設備機能トリアージへ分類し、分電盤の時系列電力データから非常用発電機の発電可能時間を評価した。需要追従による運転台数制御は負荷率を高め燃料消費を抑えて運転時間を延長し、低優先度系統の段階的遮断との併用により重要機能を維持しつつ稼働時間をさらに延ばせることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.457
屋上緑化用軽量人工土壌の排水特性と流出遅延効果の検討
著者: 千家 正照, 大森 僚次, 梶川 昭則, 大塚 健太郎, 豊田 政幸, 牧 隆
概要: 屋上緑化に用いる火山礫系軽量人工土壌の流出遅延効果を、降雨強度と含水条件を変えた室内試験で調べた。ダルシー則に基づく簡易不飽和浸透モデルと回帰分析により、降雨強度、浸透速度、初期含水率から流出遅延を予測し、土壌厚の影響をシミュレーションする定量評価法を提示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.464
熱源システムの最適運転計画における運転指標による省CO2効果と省コスト効果の検証
著者: 笠井 愛, 安東 和奏, 田中 翔大, 村上 公哉
概要: 実建物の運用データから熱源システムモデルを構築し、2024年について通常運転、動的CO2排出係数による運転、市場連動電力価格による運転を比較した。価格基準運転は費用を4.9%、CO2を7.7%削減し、CO2基準運転はCO2を13.3%削減した一方で費用が4.0%増加した。価格基準のCO2削減量はCO2基準の58%だった。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.472
動的CO2排出係数を用いた既存戸建住宅における改修手法および設備運用の評価
著者: 鈴木 晶子, 金 ジョンミン, 渡邊 百花, 秋元 瑞穂, 柏原 誠一, 千葉 陽輔, 渡辺 直哉, 築山 祐子, 田辺 新一
概要: 動的CO2排出係数を用いたシミュレーションで、既存戸建住宅の断熱改修、設備更新、運転時間変更、太陽光発電・蓄電池導入を比較した。部分断熱で14%、全面断熱で22%、設備更新で約30%、太陽光発電・蓄電池で最大62%の排出削減となり、ヒートポンプ給湯機などの昼間運転も有効であることを示した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.480
深層学習を用いた厨房従事者の動線データとウェルネス性の関連性の分析
著者: 金巻 裕大, 加戸 啓太, 相川 安佐美, 冨永 隆一, 林 立也
概要: 厨房従事者の時系列動線を短い行動単位に分割し、オートエンコーダで表現・クラスタリングしてウェルネス指標との関係を分析した。静止行動のクラスタはWFunと正の相関を示し、3~13回の屈曲を伴う連続移動はUWESとESCの低下に関連した。日次集計では捉えにくい行動とウェルネスの関係を抽出した。
DOI: https://doi.org/10.3130/aije.91.491

