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完全自律型AIエージェント「Manus」をやさしく解説

Manus(マヌス)とは何か?

Manus(マヌス)は、中国のスタートアップMonicaによって開発された自分で考えて行動できるAI(人工知能)エージェントです。普通のチャットボットは質問に答えたり指示されたことをするだけですが、Manusは与えられた目標に対して自律的に計画を立て、判断し、作業を進めます。簡単に言えば、とても優秀な秘書やアシスタントのように、初めから終わりまで仕事をやり遂げてくれる存在です。

例えば、あなたが「来月旅行に行きたいから計画して」と頼むとします。するとManusはインターネットで旅行先の情報を調べ、あなたの好みに合いそうなプランをいくつか考えて提案します。そして、選んだプランに基づいて飛行機やホテルの予約を代行し、最後に旅行の日程や持ち物リストなどをまとめた旅程表(旅行のしおり)まで作ってくれます。まるで有能な秘書がそばにいて、旅行の準備を全部任せているような感覚になります。

このようにManusは、単なる会話相手ではなく「自分で目標達成まで動いてくれるAI」です。これが完全自律型AIエージェントと呼ばれるゆえんで、人間の指示の細かい部分まで逐一教えなくても、Manus自身が最適なやり方を考えて実行してくれるのです。

Manusはベータ版で招待コードが必要でしたが、執筆時点(2025年3月25日)では、ウェイトリストに参加することで数時間後には利用ができました。

Manusサイト:https://manus.im/app

Manusを支える技術と仕組み

Manusがこのように賢く振る舞えるのは、背後にいくつかの先進的な技術が組み合わさっているからです。専門的な言葉をなるべく避けて、その仕組みを説明します。

  • 大規模言語モデル(LLM)の活用:
    Manusの「頭脳」にあたる部分には、AnthropicのClaude 3.5 SonnetやAlibabaのQwenといった巨大なAIモデルが使われています。これにより、Manusは人間の指示を理解し、必要な情報を生成したり推論したりできます。簡単に言えば、膨大な知識を持つAIの頭脳がManusのベースにあるのです。

 

  • プランニングと実行の自動化:
    Manusは内部でいくつかの役割を持つAIが協力して動いています。まず「プランナー」の役割を持つAIが、ユーザーの依頼内容を分析し、やるべきタスクを細かいステップに分けて計画を立てます。次に「実行者」の役割を持つAIが、その計画に沿って一つ一つの作業をこなします。必要に応じてウェブサイトを閲覧したり(情報収集)、表計算ソフトでグラフを作ったり、他のアプリを操作したりと、人間がパソコンで行うような操作を代わりに自動で行ってくれるのです。このように複数のAIがチームのように連携することで、複雑な仕事もこなせます。

 

  • 外部ツールの利用:
    Manusの大きな特徴は、インターネット上のさまざまなツールやサービスと直接やり取りできることです。たとえばブラウザを自動操作して情報を集めたり、Excel(エクセル)のようなソフトにデータを入力してグラフを作成したり、必要に応じてプログラムのコードを実行することもできます。人間がアプリケーションを切り替えながら作業する代わりに、Manusがそれらを一手に引き受けてくれるイメージです。

 

  • クラウド上での実行:
    Manusは自分の作業をインターネット上のサーバー(クラウド)で行っています。そのため、処理が行われている間、ずっとパソコンを開いて待っている必要はありません。Manusに仕事を任せたあとは、たとえあなたがパソコンの電源を切っても、クラウド上で処理が進み、完了したら結果が通知されるようになっています。これは、裏側でManusが非同期処理(バックグラウンドで同時進行する処理)をうまく使っているからです。難しい言葉ですが、つまり「待っている間も休まずクラウド上で働いてくれている」ということです。

 

  • 高い処理能力:
    Manusは高度なAIモデルと効率的な仕組みによって、非常に高い処理能力を持っています。GAIAベンチマーク(AIエージェントの能力を測る指標)では、Manusが他の最新AIシステムよりも優れたスコアを記録しています。例えば、レベル1の正答率では86.5%を記録し、比較対象となるOpenAIのDeep Research(74.3%)を上回りました。これは、Manusが多段階のタスク(ステップの多い仕事)をしっかりやり遂げる力や、論理的に推論する力が評価された結果です。ただし、Manus自身が全て独自に発明した技術だけで動いているわけではなく、既存の優れたAIサービス(例えば他社のAIモデル)も組み合わせて活用しています。言い換えれば、現在考えられる最先端のAI技術を上手に寄せ集めて実現した総合力がManusの強みなのです。

 

Manusの活用事例(どんなことに使える?)

Manusは旅行計画から金融分析、教育コンテンツ作成まで、さまざまなタスクを自動的に処理できるAIエージェントです。公式サイトで紹介されている具体的な活用事例を見ていきましょう。

旅行計画の全行程管理

Manusは旅行の全行程を完璧に管理します。例えば「4月に日本へ5日間旅行したい」と頼むと、以下のことを自動的に行います:

  • 季節や天候に最適な観光地を調査
  • 予算に合った飛行機やホテルの予約の提案
  • 観光スポットの所要時間や移動手段を考慮した詳細な旅程表作成
  • レストランや地元の名物料理の提案
  • 文化的なイベントやアクティビティの紹介
  • 持ち物リストや注意事項をまとめた旅行ハンドブックの作成

これにより、あなたは綿密な調査や予約の手間をかけずに、充実した旅行を楽しめます。

参考:Manusサイトの旅行のユースケース
https://manus.im/share/brWKUSp51ItvVMBpcXNCZ1?replay=1

金融分析とレポート作成

Manusは複雑な金融データも処理できます。例えば「Teslaの株価分析レポートを作成して」と指示すると:

  • 過去5年間の株価推移データを収集
  • 競合他社との比較分析
  • アナリストの予測情報の要約
  • 財務諸表の分析と重要指標の計算
  • 主要ニュースの影響分析
  • グラフやチャートを含む総合的なレポート作成
  • 将来トレンドの予測と投資推奨

プロのアナリストのような詳細な分析を、あなたの代わりにManusが行います。

参考:Manusサイトのテスラ株分析のユースケース
https://manus.im/share/xFgpHb15vKqfRPWIs3JJPJ?replay=1

教育コンテンツ作成

教育分野での活用も注目されています。例えば「中学生向けに運動の法則を説明するビデオを作成して」と依頼すると:

  • 理解しやすい説明文の作成
  • 日常生活での具体例を取り入れた脚本作り
  • アニメーションや図解の提案
  • 生徒の理解度を確認するクイズの作成
  • 年齢に適した言葉遣いと難易度の調整
  • ビデオ編集ツールと連携した素材作成

教師や学習者の負担を減らしながら、効果的な学習教材を提供します。

参考:Manusサイト運動量定理に関するインタラクティブコースユースケース
https://manus.im/share/pAdLIvlktJmV945593mFio?replay=1

保険比較と最適提案

「家族向けの健康保険を比較して」と頼むと、Manusは以下のプロセスで最適な保険を提案します:

  • 複数の保険会社のポリシーを詳細に調査
  • 家族構成や予算に合わせた補償範囲の比較
  • 免責額や月額保険料の計算
  • 特約やオプションの分析
  • 口コミや評判情報の収集
  • わかりやすい比較表の作成
  • あなたのニーズに最適なプランの推奨

複雑な保険の選択を、専門家のアドバイスに近い形でサポートします。

参考:Manusサイト保険プラン比較のユースケース
https://manus.im/share/1ICnnOiC9L3HMK07vG0iDn?replay=1

ウェブサイト制作もManusに

Manusはウェブサイトの設計・展開も可能です:

  • 個人ブログやポートフォリオサイトの作成
  • デザインテンプレートの提案と実装
  • コンテンツ構成のアドバイス
  • ホスティングサービスの設定支援
  • 基本的なSEO対策の実施
  • ソーシャルメディア連携の設定

プログラミングの知識がなくても、あなた専用のウェブサイトを構築できます。

他にも、B2Bサプライヤーの調査、Amazonストアの売上分析、気候変動レポートの作成、ハイキングトレイルのリスト作成など、非常に幅広い分野で活躍しています。これらの活用例からわかるように、Manusは単純なタスクだけでなく、複数のステップを要する複雑な作業も自律的にこなせるのが大きな特徴です。

他のAIとの比較(何が違うの?)

では、Manusは従来のAIや他の似たツールと比べて何が違うのでしょうか。初心者にも分かりやすいポイントで比較してみます。

  • チャットボットとの違い:
    ChatGPTのようなチャットボットは会話をしたり質問に答えたりするのが主な役割です。基本的にはユーザーからの問いに反応する受け身のスタイルです。一方Manusは、会話するだけでなく自らタスクを遂行する積極的なスタイルです。目標を与えられると、その達成のために必要な手順を自分で考えて動きます。例えるなら、チャットボットが「質問に答えてくれる百科事典」だとしたら、Manusは「目的を達成してくれる有能な部下」のような違いがあります。

 

  • 従来の自動化ツールとの違い:
    今までもRPA(業務自動化ツール)など、人間の定型作業を自動化するソフトは存在しました。しかしそうしたツールでは、人間があらかじめ細かな手順やルールを設定しておく必要がありました。つまり、「○○をしたら次に△△をする」という流れを事前にプログラムしておく必要があったのです。Manusの場合、人間が細かい手順を教えなくてもAIが自分で手順を考え出すという点が大きく異なります。まさに自律的に動くところが新しいポイントです。

 

  • 他のAIエージェントとの比較:
    Manus以外にも最近は自律型のAIエージェント(AutoGPTなどと呼ばれるもの)が登場しています。それらも似た理念で動いていますが、Manusは総合力の高さで注目されています。先ほど触れたように、Manusはさまざまな外部サービスを統合し、最新のAI技術を組み合わせているため、タスクの達成率や処理速度が高いとされています。ただし、まだベータ版であり、初期のバグやパフォーマンスのバラつきも報告されています。

要するに、Manusは「自分で考えて動く」という点で他のAIとは一線を画す存在であり、その実行力と柔軟性の高さが他のツールとの違いを生み出しています。

Manusの課題と懸念点

非常に便利に思えるManusですが、まだ新しい技術であるため懸念や課題も存在します。ここではManusを使う上で注意すべき点や、今後解決していく必要がある問題について述べます。

  • 誤った情報を生成するリスク:
    Manusの頭脳である生成AI(大規模言語モデル)は、ときどき事実と異なる情報をそれらしく作り出してしまうことがあります(これを**「幻覚」**と呼ぶこともあります)。もしManusが間違った情報に基づいてレポートを作成したり判断したりすると、ユーザーは誤った結論を得てしまう恐れがあります。そのため、Manusから出てきた重要な結果は人間が最終確認するなどの対策が必要です。

 

  • 機密情報・プライバシーの問題:
    Manusを使う際には、業務データや個人情報などをクラウド上のAIに送る場面があります。もし適切な対策を講じないと、外部のサーバーに送ったデータが漏洩したり不正利用されたりするリスクがあります。秘密にしたい情報を扱うときは、暗号化や必要最小限のデータだけ送るなど配慮が求められます。企業向けには、社内だけで動かせるプライベート版の提供なども検討されています。

 

  • セキュリティ上の懸念:
    Manusは自動でウェブサイトにアクセスしたりプログラムを実行したりします。そのため、悪意のあるサイトにうっかりアクセスしてウイルスをダウンロードしてしまう、といった危険性もゼロではありません。これに対しては、Manusを安全な仮想環境(サンドボックス)内で動かすことや、Manusに与える権限(できることの範囲)を制限することでリスクを下げる工夫が必要です。

 

  • 法的な問題・責任の所在:
    Manusがインターネットから集めたデータによっては、著作権に触れるものや利用規約に違反する形での使用が行われる可能性もあります。また、Manusの判断ミスで損害が出た場合、「誰が責任を取るのか?」という問題もあります(開発した会社なのか、利用したユーザーなのか)。今後、AIを利用する際のルール作りや、契約上での責任範囲の明確化が求められるでしょう。必要に応じてManusの出力を人間がチェックし、重要な決定は最終的に人間が承認する、といった運用も大切です。

 

  • バイアス(偏り)の問題: AIは学習データに偏った傾向があると、公平でない判断を下してしまう可能性があります。例えば、人事採用や融資審査などにManusを使った場合に、過去のデータの偏りから特定の属性の人に不利な評価をしてしまう、といった懸念です。このような差別的・偏った結果を避けるために、AIの判断過程を透明にして定期的にチェックする仕組みや、必要ならAIの調整(再学習)を行うことが重要になります。

以上のように、Manusを活用するには人間側の注意とサポートもまだ欠かせない状況です。最新のAIだから万能というわけではなく、正しく安全に使うためのルール整備や技術的な改善が今後の課題となっています。

Manusの将来展望(今後どうなる?)

Manusのような自律型AIエージェントは、これからの数年でさらに進化し、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与える可能性があります。将来に向けて期待される展望を、分かりやすくまとめます。

  • さらに多くのツールやシステムとの連携: 現在でもブラウザやExcelなどと連携できるManusですが、今後はビジネスで使われる様々なソフトウェア(例えば顧客管理システムや会計システムなど)とも直接つながることが期待されます。そうなれば、会社の中のあらゆる事務作業をManusが肩代わりする「デジタル社員」のような役割も現実味を帯びてきます。人間のチームにAIの同僚が加わるイメージです。

 

  • マルチモーダルへの対応強化:
    現在のManusは主にテキスト情報(文字で書かれた情報)の処理が中心ですが、将来は画像や音声、動画といった多様なデータも扱えるようになるでしょう。例えば画像を読み取って内容を分析したり、音声を聞いてそれに応答したり、動画を見て必要な情報を抜き出すといったことです。これが実現すれば、医療の分野で医用画像を解析して診断を助けたり、工場で監視カメラの映像から異常を検知したりと、専門的な現場での活用範囲も広がるでしょう。

 

  • 複数AIの協調(群れとしてのAI):
    一つのManusでも賢いですが、将来的には複数のAIエージェントがチームを組んで協力し合うような仕組みも考えられています。まるで人間のプロジェクトチームのように、いくつかのAIが役割分担しながら大規模なプロジェクトに取り組むイメージです。こうした「AI同士の協調」が進めば、より大きな課題や長期的なプロジェクトも自律的にこなせるようになり、人間は最終的な判断や創造的な部分に専念することができます。

 

  • ユーザーコミュニティとフィードバックによる進化:
    Manusは現在β版(試験運用版)で、限られたユーザーしか使えませんが、正式リリースに向けて世界中のユーザーからの意見やフィードバックが集まるでしょう。その声をもとに、使いやすさの向上や新機能の追加、そして安全性の強化が進むと考えられます。AIはリリースして終わりではなく、使われながらどんどん改善していくものなので、Manusも皆で育てていくように進化していくでしょう。

このように、Manusには大きな可能性があります。適切に発展させ活用していけば、私たちの仕事の仕方や生活を大きく変えるイノベーションになり得るでしょう。一方で、安全性や倫理面にも配慮しながら、人間とAIが上手に協力していくことが重要です。Manusをはじめとする自律型AIエージェントは、今後の社会において次世代の効率化と新しい価値創出の鍵になると期待されています。

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