日本建築学会論文集の2025年9月号に掲載された全45編の論文を分野別に網羅的にご紹介します。構造系19編、計画系21編、環境系5編の最新研究成果から、建築学の最前線を探ります。
- 構造系論文集(JOURNAL OF STRUCTURAL AND CONSTRUCTION ENGINEERING)
- 膨張材を用いたコンクリートの膨張挙動予測モデルの構築に関する研究
- 高経年鉄筋コンクリート造建築物の中性化進行に関する解析的研究
- ツバメの巣に倣う壁土の圧縮材料特性の向上に向けた基礎的研究
- 特定層への変形集中を緩和する心棒に必要とされる剛性と強度(その1)
- 極配置法に基づくマックスウェルモデルで表現したダンパによる連結制振の基本特性
- 外殻鋼管付き既製コンクリート杭の曲げ変形特性の簡易評価手法の提案
- VaRTM 成形された構造用 CFRP パイプの基本的な力学特性
- 大型振動台実験における学校体育館を模擬した支持架構付き屋根型円筒アーチの多重 TMD による地震応答低減
- 屋根変形を考慮した放射型ケーブル屋根構造の風応答性状および等価静的風荷重に関する研究
- 柱梁接合部のせん断降伏が先行する木質ラーメン架構の開発 (その2)
- ラグスクリューボルト (LSB) の引き抜き挙動に関する解析的ならびに実験的研究
- 上下入力動が滑り基礎構造を有する2層木造住宅の水平応答に与える影響
- 一定引張軸力と繰返し曲げを受ける角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動
- Gファクタを用いた柱の座屈長さ係数評価の現況
- 局部座屈崩壊形式を考慮した H形断面梁部材の構造性能評価
- 計画系論文集(JOURNAL OF ARCHITECTURE AND PLANNING)
- 要介護高齢者による就労的活動の実施場所に着目した運営および環境整備の比較
- 既存建物を利活用した宿泊施設による地域の維持・活性化の取り組みについての研究
- 伝統集落における民家活用の宿泊施設による建築ストック再生の課題と可能性
- 広瀬鎌二の木造住宅作品にみる構法の変遷とその持続可能性に関する考察
- 高密度居住の集落における居住者の入れ替わりと転居の実態
- 公共施設の再編からみた都市機能の集約実態に関する研究
- 東京都における河川占用空間の活用実態に関する研究
- まちづくり活動におけるプレイス・エンゲージメントとその構造特性
- 地方中枢都市居住者の都心部に対するイメージと満足度の評価に関する研究
- イタリア最初の風景法 (1922年クローチェ法)と美学
- 人口規模からみた自治体のご当地キャラクター活用実態と効果に関する研究
- 支払意志額に基づく戸建て空き家の流通ポテンシャル評価手法に関する研究
- 中古戸建て住宅購入に際してのリフォームの潜在的需要とリフォームに対する支払意志額
- 建築大工技能の効率的な指導方法に関する研究(その2)
- 近世期の河口港における御蔵所の空間構成に関する研究 (その8)
- 夕雲開の新田開発と筒井家住宅
- 戦前期日本の旧制高等教育機関における欧米建築系雑誌の受容について(その1)
- 建築家ヴィクトール・オルタのヴァン・エートヴェルド邸の平面計画と芸術作品の配置に関する研究
- “COMMERCIAL REPORTS RECRIVRD AT THE FOREIGN OFFICE FROM HER MAJESTY’S CONSULS.” にみる 1860-80年代における nail-rod の世界的な供給動向について
- メガシティのイメージ形成の枠組みに関する研究 (その2)
- TRADITIONAL WATER SUPPLY NETWORK AND DRAINAGE SYSTEM IN THE OLD CITY OF HERAT
- 河岸地の歴史的変遷に見る近代東京の水際空間
- 地震後の宿泊施設のレジリエンスと古民家活用の課題
- 環境系論文集(JOURNAL OF ENVIRONMENTAL ENGINEERING)
構造系論文集(JOURNAL OF STRUCTURAL AND CONSTRUCTION ENGINEERING)
膨張材を用いたコンクリートの膨張挙動予測モデルの構築に関する研究
飯田 康介, 塚本康誉, 藤下大知, 野口 貴文
エトリンガイト消石灰複合体(CSA型)膨張材を用いたセメントペーストの膨張予測モデル構築を目的とする研究。置換率2.6~12.9%のセメントペーストについて膨張ひずみ測定と力学試験を実施し、マイクロCTスキャナーと走査電子顕微鏡で水和後の状態を観察。置換率が6.4%を超えると膨張材の水和メカニズムが変化することを確認した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.934
—
高経年鉄筋コンクリート造建築物の中性化進行に関する解析的研究
角田宗士, 桝田 佳寛
老朽化鉄筋コンクリート建物において、モルタル等の仕上材厚さとコンクリート中性化深さに負の相関が現れる現象を定常拡散モデルで解析。コンクリートとモルタルの中性化速度係数、二酸化炭素拡散係数比、水酸化カルシウム含有量比を最小二乗法による回帰分析で算出し、中性化進行を予測可能とした。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.945
—
ツバメの巣に倣う壁土の圧縮材料特性の向上に向けた基礎的研究
吉沼 大季, 石田哲朗, 高岩裕也
ツバメの巣の材料組成を分析し、壁土の圧縮材料特性を改善することを目的とする研究。一軸圧縮試験により、繊維の配向、長さ、直径、含有量、および凝固剤としてのムチンが特性に与える影響を評価した。圧縮力に垂直に配向した繊維が圧縮材料特性を向上させることを明らかにし、短い長さ・大きい直径・低い含有率の繊維、およびツバメの唾液由来ムチンが固化剤として有効であることを確認した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.951
—
特定層への変形集中を緩和する心棒に必要とされる剛性と強度(その1)
田川 浩之
3・5・10層の連成せん断-曲げ梁(SFB)モデルを用い、連続柱の曲げ剛性を変化させて20のSAC近接断層地震動に対する応答解析を実施。連続柱の曲げ剛性不足により特定階でのドリフト集中や非弾性挙動が顕著に発生し、十分な曲げ剛性を持つ場合は等価SDOFモデルとほぼ同等の応答となることを確認。特定階ドリフト集中防止と弾性挙動維持に必要な連続柱の剛性・強度要件を定量的に評価した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.963
—
極配置法に基づくマックスウェルモデルで表現したダンパによる連結制振の基本特性
松本祐輝, 池田 芳樹
連結ダンパーで接続された2つの隣接建物について、制御理論の極配置法に基づく逆問題を定式化。各建物を1自由度の集中質量減衰せん断モデルに単純化し、連結ダンパーをダッシュポットと接合ばねを直列配置したマクスウェルモデルで表現。従来のダッシュポットのみのモデルと比較し、同一制御目標下での2つのモデルの違いと制振効果の現実的評価について検討した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.975
—
外殻鋼管付き既製コンクリート杭の曲げ変形特性の簡易評価手法の提案
池嵜大輔, 酒向裕司, 永野正行
鋼・コンクリート複合(SC)杭の曲げモーメントと曲率の関係を評価する手法を提案。実際の杭仕様を用い、軸方向力をパラメータとして変化させた解析的シミュレーションを実施し、得られる関係をマルチリニアモデル(多直線モデル)で表現。SC杭のファイバー解析と部材実験により検証し、設計モデルとして十分な精度を有することを確認した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.987
—
VaRTM 成形された構造用 CFRP パイプの基本的な力学特性
山崎陽祐, 樋口彰悟, 大槻桃子, 松井孝洋, 伊藤潤一郎, 原野泰典, 箕輪健一, 瀧內雄二, 中澤祥二, 松本幸大
外型を用いたVaRTM法で製造されたCFRP管の機械的特性を明らかにすることを目的とする研究。CFRPの軽量性、高剛性、適度な弾性により軽量空間構造の建設を可能にするため、材料および部材レベルでの機械的試験を実施し、構造設計の発展への貢献を期待する。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.999
—
大型振動台実験における学校体育館を模擬した支持架構付き屋根型円筒アーチの多重 TMD による地震応答低減
熊谷知彦, 高橋陽, 黒崎竣, 竹内徹, 寺澤友貴, 藤原 淳
TMD(同調質量ダンパー)は単一支持点での設置が可能なため空間構造の振動制御に適している。体育館を1/4縮尺で模型化し、屋根面に二重TMDを設置した大型振動台試験により、TMDの応答低減効果を実験的に検証。従来の解析的研究と異なり、実物大建物での検証に近い条件での評価を実施した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1006
—
屋根変形を考慮した放射型ケーブル屋根構造の風応答性状および等価静的風荷重に関する研究
鴛海昂, 江黑皓介, 岡田章, 宮里直也, 廣石秀造
内側テンションリングと外側圧縮リング間に放射状配置されたケーブル屋根構造を対象とした研究。国外では多数採用されているが日本では実例がないため、構造設計資料の整備を目的とする。屋根変形を考慮した強風時の構造挙動と風荷重評価方法を提案し、基本設計資料の拡充を図った。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1018
—
柱梁接合部のせん断降伏が先行する木質ラーメン架構の開発 (その2)
村上雅英, 笹野貴子, 小谷竜城
梁と柱に接続されたパネルゾーン接合金物がせん断により降伏する半剛接木造ラーメン構造の物理的挙動を研究。施工が容易なパネルゾーン接合金物の仕様を開発し、実験的・解析的研究でその性能を確認。パネルゾーン接合金物を用いた木造ラーメンの構造設計手順を提案し、提案手法に従って4階建て建物を設計してフレームの機械的特性を検討した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1030
—
ラグスクリューボルト (LSB) の引き抜き挙動に関する解析的ならびに実験的研究
小松幸平, 中谷誠, 石川遼, 岡部昭, 小松賢司
機械的継手の古典的解析に基づく新開発の非線形解析法を用いてラグスクリューボルト(LSB)の非線形引き抜き挙動を研究。ねじ径30・35mm、埋込み深さ150・300・450・600mmのLSBについて、ラーチ材・スギ集成材での実大引き抜き実験を実施。現行LSB設計マニュアルは保守的評価の傾向があるが、非線形解析はより現実的な荷重-すべり挙動を予測でき、埋込み深さと引き抜き強度に明確な比例関係があることを確認した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1042
—
上下入力動が滑り基礎構造を有する2層木造住宅の水平応答に与える影響
富田愛, 宮津裕次, 東城峻樹, 青木崇, 高橋祐貴, 永野正行
すべり支承システムを有する2階建て木造住宅の水平地震応答に対する上下動地震入力の影響を調査。OpenSeesで2次元フレームモデルを開発し、上下動地震入力有無での時刻歴応答解析を実施。上下動によりすべり支承での摩擦力が減少し、最大すべり変位が10cm増加することを確認。スライディング運動中の強い上下動入力により上部構造の層間変形角と水平加速度が増大した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1054
—
一定引張軸力と繰返し曲げを受ける角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動
上田 久道, 今津才, 浅田勇人、メイ ソーメートレイ、吉敷 祥一
RHS(角形鋼管)柱とH形梁を有する梁柱接合部における梁軸引張力が繰返し載荷性能に与える影響を調査。柱板厚と梁軸引張力の有無・大きさを変数として5体の試験体で繰返し載荷試験を実施し、有限要素解析で破断発生部の損傷度を定量化。梁端接合部の強度が柱ウェブの面外曲げ耐力で決まる場合、梁軸引張力増加により塑性変形能力が著しく低下することを確認した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1064
—
Gファクタを用いた柱の座屈長さ係数評価の現況
津田惠吾, 城戸將江, 西村拓真
G値法により算定される有効長係数(座屈長さ係数)の活用法を過去の論文に基づき体系的に整理。有効長係数の評価式を表にまとめ、G値法による係数が層座屈に関わる係数を与えること、G値を用いて一様架構のP-Δ効果によるモーメント増大係数を算定できること、多層・多スパン架構でも層座屈荷重と座屈関連層の概念で有効長係数を算定できることを示した。
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1073
—
局部座屈崩壊形式を考慮した H形断面梁部材の構造性能評価
三井和也, 五十嵐規矩夫
単調載荷を受けるI形断面梁部材の局部座屈崩壊モードを調査し、構造性能評価精度の向上を目指す研究。パラメトリック有限要素解析で部材形状と応力状態が局部座屈崩壊モードに与える影響を検討。塑性化後に発展する局部座屈崩壊モードを分類する指標PFBとαpを提案し、これらを活用した新しい構造性能評価指標WFpを提示。様々な部材形状に対応した局部座屈崩壊モードを考慮したより精
https://doi.org/10.3130/aijs.90.1085
—
計画系論文集(JOURNAL OF ARCHITECTURE AND PLANNING)
要介護高齢者による就労的活動の実施場所に着目した運営および環境整備の比較
尤琨琦, 三浦研
介護を必要とする高齢者を対象に就労関連活動を取り入れたデイサービス施設を研究。活動場所を「施設内」「併設店舗」「屋外」「外部店舗」の4つに分類し、場所特性が運営方法や環境整備に与える影響を分析。「施設内」では介護度の高い高齢者でも可能なクラフト系活動、「併設店舗」では調理・接客活動(既存建物転用ではバリアフリー設計に課題、新築では柔軟性あり)、「屋外」では身体を使う作業、「外部店舗」では清掃などを職員と一緒に一般職場環境で実施することを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1867
—
既存建物を利活用した宿泊施設による地域の維持・活性化の取り組みについての研究
荻原雅史, 山田 あすか
人口減少による地域過疎化対策として旅行者誘致を図る宿泊施設を対象とした研究。物流・人流・経済規模・建物利用・景観の維持を目的とした活動を念頭に運営される宿泊施設について、組織が設定する条件と組織に属さない事例の実態を「横断的」に調査・確認。歴史的背景や関連制度・枠組みを体系的に整理し、多様な活動の広がりの全体像を明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1879
—
伝統集落における民家活用の宿泊施設による建築ストック再生の課題と可能性
李奎告, 徳尾野徹, 西野雄一郎
伝統的村落住宅が地域文化を育み、伝統文化の保存・継承に果たす重要な役割に着目した研究。中国雲南省大理市喜洲古鎮の民宿クラスターの現状と歴史を調査し、建築ストックの地域資源としての修復・活用が文化保存と観光による地域活性化の両方に効果的であることを検証。地域価値の再発見における外部要因の有効性、内部発展の誘発・促進方法、内外協力の実態を分析し、文化保存と観光主導の地域活性化のバランスにおける課題と可能性を探究した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1891
—
広瀬鎌二の木造住宅作品にみる構法の変遷とその持続可能性に関する考察
小見康夫
SHシリーズの建築家として有名な広瀬謙の木造住宅作品における架構システム設計の変遷を、原図面の解読と3Dモデルでの再現により追跡した研究。当時の住宅生産状況を踏まえた設計意図を検証し、特に後期作品では木造住宅の持続可能性を寿命延長の観点から考慮した最初期の建築家の一人であり、伝統技術の復活・応用を目指していたことを明らかにした。現存しない作品や設計意図が不明な作品についても解明を図った。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1903
—
高密度居住の集落における居住者の入れ替わりと転居の実態
松下藍子, 森友里歌, 佐久間 康富
インタビュー調査により才ヶ崎地区の住民の住み替えと転出入実態を明らかにする研究。以前は子どもや親戚への住民の住み替えが多かったが、現在は非親族への住み替えが増加していることを確認。住民の住み替えは本人・親戚のアプローチだけでなく不動産業者を介しても実現。転出の主な理由は5つあり、特に2010年以降は職業・年齢に関係なく「生活環境の改善」を目的とした転出が一般的。従来住民にはアクセスの利便性が重要だが、新住民にはこの条件はそれほど重要でないことも判明した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1911
—
公共施設の再編からみた都市機能の集約実態に関する研究
石原 周太郎, 野嶋慎二
立地適正化計画下での公共施設再編による都市機能集約を明らかにし、都市・地区拠点への都市機能集約のための効果的な再編方法に関する知見を得ることを目的とした研究。日本の地方都市81市を分析し、都市機能誘導区域外での公共施設減少と都市・地区拠点での新設施設増加を確認。施設統合は進展したが再編のみでは都市機能集約は不十分であり、地区拠点の80%以上で施設再編が行われていないという大きな課題を明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1923
—
東京都における河川占用空間の活用実態に関する研究
池田隆一, 藤賀雅人
東京における河川占用の運用状況について論じた研究。東京の河川占用は民間企業による小規模空間利用に限定される傾向があり、占用者は地域貢献や占用料などの責任を負うことを確認。利用形態が多様な場合は補助金などの公共空間活用のための行政支援も提供されている。河川空間をより効果的に活用するには、河川管理者と民間企業が協力するビジネススキームの確立が重要であると結論付けた。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1933
—
まちづくり活動におけるプレイス・エンゲージメントとその構造特性
藤本 浩樹, 熊野稔, 平岡透
場所愛着(place engagement)の構成要素と構造特性を明らかにするためアンケート調査を実施した研究。因子分析により場所愛着が「コミュニティ関与・貢献志向因子」と「場所愛着・結束志向因子」から構成されることを確認。因子分析結果から抽出した潜在変数を用いて共分散構造解析を実施し、「コミュニティ関与・貢献志向因子」は「まちづくり活動でのリーダーシップ因子」に正の影響、「場所愛着・結束志向因子」は負の影響を与えることを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1943
—
地方中枢都市居住者の都心部に対するイメージと満足度の評価に関する研究
小沢啓太郎, 田村 将太, 田中貴宏, 楠本正幸, 早川輝, 竹中俊平
都市中心部の魅力向上への示唆を得るため、札幌・仙台・広島・福岡の住民を対象に都市中心部のイメージと満足度評価を把握するアンケート調査を実施した研究。これらと総合的魅力の関係を分析した結果、すべての都市で年齢や中心部居住の有無に関係なく、飲食・買い物・歩きやすさに関するイメージと満足度評価が総合的魅力に最も大きな影響を与えることを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1955
—
イタリア最初の風景法 (1922年クローチェ法)と美学
宮脇勝
20世紀初頭イタリアにおける風景保護の法的枠組み確立過程を研究。一般的な「風景」の保護が困難だった時代に、クローチェ大臣が「美学」理論を用いて価値を明確化し、法律の対象を「自然美」と「景観美」に限定した方法を明らかにした。クローチェ法案(1920年)は「自然美」保護の目的を国家の公益とし、「自然美」を見る際の感情は芸術鑑賞の快楽と同じ源泉から派生し、視覚や直観から生まれることを説明していることを確認した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1964
—
人口規模からみた自治体のご当地キャラクター活用実態と効果に関する研究
榎谷芽衣, 丹羽由佳理
日本の関東地方149自治体を対象に、人口規模の違いに着目したゆるキャラの活用状況と効果をアンケート調査で分析した研究。ゆるキャラの活用パターンは比較的類似しているが効果は大きく異なることを確認。マトリックス分析により自治体を効率的活用型・積極的活用成功型・改善要型・消極運用型の4タイプに分類。人口規模が大きい自治体ほど内的・外的効果のバランスが取れ、小規模自治体は効果にばらつきが大きいことを明らかにし、キャラクター衣装の維持管理と運用コストが主要な課題であることを確認した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1976
—
支払意志額に基づく戸建て空き家の流通ポテンシャル評価手法に関する研究
五十石俊祐, 佐々木 優二, 小野塚仁海
空き家戸建住宅が売却される際の買い手発見可能性を評価する関数を推定することを目的とした研究。戸建住宅購入を検討する世帯を対象に、中古住宅購入意向とフルリノベーション済み中古住宅への支払意思額についてアンケート調査を実施。調査結果の分析により空き家戸建住宅の流通可能性を評価できる関数を推定し、流通可能性が低いほど市場での残存期間(売れ残る期間)が長くなる傾向があることを検証した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1985
—
中古戸建て住宅購入に際してのリフォームの潜在的需要とリフォームに対する支払意志額
五十石俊祐
中古戸建住宅購入を検討する人々のリノベーションに対する潜在需要と支払意志額を明らかにすることを目的とした研究。北海道でアンケート調査を実施し、「熱源交換」以外のすべてのリノベーションで潜在需要が高いことを確認。自分の好みに応じてリノベーションしたい人への支払意志額調査の結果、中古戸建住宅の流通促進には高額な補助金設定が必要であることを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.1996
—
建築大工技能の効率的な指導方法に関する研究(その2)
塚崎英世, 片岡遥, 西口光太郎, 佐畑友哉
若年作業者の効率的な技能習得支援のため、鉋がけ作業の実践的なコツを形式知として提示することを目的とした研究。41件の文献レビューと20名の熟練作業者へのアンケート調査を実施。作業材料の適切な高さ、最適な姿勢、正しい鉋の持ち方、適切な力のかけ方という重要なコツを明らかにし、これらの知見を形式知として整理することで若年作業者の技能習得支援に貢献した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2008
—
近世期の河口港における御蔵所の空間構成に関する研究 (その8)
相模誓雄
加賀藩領内の河口船着場に所在し「廻米」に使用された4つの御蔵所を対象とした研究。これらの御蔵所が空間構成の原理や東北地方の「日本海型」御蔵所の性格との違いを持つことを確認。加賀藩所有の御蔵所と信濃川河口に所在する御蔵所の性格比較により、加賀藩領での「廻米」用御蔵所の特徴を明らかにし、その特徴の原因が加賀藩領内の特殊な環境と藩による管理・建設にあることを解明した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2020
—
夕雲開の新田開発と筒井家住宅
清水 重敦
寛永年間に堺近郊の百舌野平野で開かれた新田「関雲開き」の実質的開発者の住宅として建立された国登録有形文化財筒井家住宅の建設年代と変遷を明らかにする研究。改修痕跡調査と放射性炭素年代測定結果を統合し、この住宅が大阪近郊の新田開発管理事務所の原型を表し、江戸時代後期の庄屋住宅への発展過程を示す事例研究として機能することを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2032
—
戦前期日本の旧制高等教育機関における欧米建築系雑誌の受容について(その1)
佐藤安乃, 笠原一人, 三宅拓也
第二次世界大戦前の日本の高等教育機関における学生のモダン西洋建築受容を、各機関の西洋建築雑誌コレクション調査により明らかにする研究。機関は主にドイツ・英国・米国から多様な雑誌を購読し、これは語学教育と関連している可能性があることを確認。『The Studio』や『Moderne Bauformen』など多くの機関が購読した雑誌は特に図版・写真が豊富で、雑誌購読は1920年代と1930年代に活発化し、1941年頃に停滞したことを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2040
—
建築家ヴィクトール・オルタのヴァン・エートヴェルド邸の平面計画と芸術作品の配置に関する研究
倉谷 優美
19世紀後期のヴァン・エートヴェルデ邸におけるヴィクトル・オルタの設計哲学を、建築内での絵画等の美術品展示方法の分析を通じて深く理解することを目的とした研究。アール・ヌーヴォー特有の曲線装飾で広く研究されているオルタについて、この邸宅の曲線装飾だけでなく、インテリアデザイン全体に関連する美術品配置の設計にも焦点を当て、古い写真・先行研究・論説に基づいて分析・考察を行った。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2052
—
“COMMERCIAL REPORTS RECRIVRD AT THE FOREIGN OFFICE FROM HER MAJESTY’S CONSULS.” にみる 1860-80年代における nail-rod の世界的な供給動向について
平山 育男
英国外務省に提出された領事商業報告書の分析により1860-80年代の釘棒の国際的供給動向を検討した研究。この期間中71地域からの報告のうち、釘棒に関する報告はイタリア・オランダ領東インド・スウェーデン・トルコ・米国の5地域のみで、これら5地域では釘の供給も観察された。この時期、釘棒は世界的に廃れていたが、日本では継続して輸入されていたという特殊性を明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2064
—
メガシティのイメージ形成の枠組みに関する研究 (その2)
高小涵, 香月歩, 奥山 信一
中国の急速な経済発展と都市近代化の中で、地方政府が制作する都市プロモーション映像が都市イメージ形成に与える影響を明らかにする研究。人口が多く経済的に重要な都市からの18本の都市プロモーション映像を分析し、カメラ技術とシーン構成に基づく描写形式について議論した後、包括的分析を実施。映像メディア特性が都市イメージ形成の枠組みに与える影響のパターンを明らかにし、映像による都市の近代的イメージ形成への寄与を確認した。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2073
—
TRADITIONAL WATER SUPPLY NETWORK AND DRAINAGE SYSTEM IN THE OLD CITY OF HERAT
Tetsuya ANDO, Sayed Abdul Baset SAMIMI, Sayed Shoaib SAMIMI
現在使用されていないヘラート旧市街の伝統的給水網と排水システムを地形調査により復元する研究。歴史的給水網は北東角の運河水を起源とし、地形に基づいて貯水槽を接続して4つの地区を通ることを確認。伝統的排水システムは各地区内で組織化され、雨水と排水を旧市街全体の80以上の溝に誘導し、排水は地面に浸透するかテラコッタパイプを通じて城壁外の堀に排出されていたことを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2085
—
河岸地の歴史的変遷に見る近代東京の水際空間
高道昌志
明治期東京における貸地(河川沿いの土地)の空間・機能変容を、都市空間内での役割と借地人の活動に焦点を当てて調査した研究。江戸の水インフラから継承された貸地が水路と都市空間を結ぶ重要な節点として機能していたことを確認。河岸地所台帳・地図・賃貸借文書等の史料により空間再編と土地利用・統治の変化を追跡し、行政政策と借地人の実践の動的相互作用を分析することで、貸地の再構築が東京の水辺を形成し、都市構造の広範な変容に貢献したことを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2091
—
地震後の宿泊施設のレジリエンスと古民家活用の課題
金谷直政, 倉田陽平
地震後の宿泊施設継続の観点から宿泊施設のレジリエンス(継続性の要因)を調査・分析する研究。2024年1月1日に発生した能登半島地震後の宿泊施設継続性について現地調査を実施。1981年以前開業・1981~2000年開業・2000年以降開業の宿泊施設間で継続性に違いがあることを確認し、いわゆる「伝統家屋」で構造補強が行われていない場合に事業継続ができないケース(非継続性)が観察されることを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aija.90.2103
—
環境系論文集(JOURNAL OF ENVIRONMENTAL ENGINEERING)
百貨店における火災時の避難手段選択に関するインターネットを活用した調査分析
出口 嘉一, 森部碧, 吉岡 英樹
百貨店火災避難時の利用者の退避経路選択(階段・エスカレーター・エレベーター)傾向と周辺状況の影響を明らかにし、有効な避難経路を検証することを目的とした研究。インターネットを利用した仮想空間による調査を実施し、男性は女性よりもエスカレーター避難を好む傾向、90%以上が周辺状況に関係なくエレベーター使用を避ける、階段が優先的に選ばれるが混雑時や直接見えない場合はエスカレーターが選択される傾向を明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aije.90.391
—
大学キャンパスにおける学生の交流に適した屋外空間に関する研究
周玥含, 山下蓮, 西名大作, 金田一清香, 侯寧
広島大学の屋外空間における学生の環境ニーズと着座行動を、3つの利用シナリオ(一人での滞在、親しい人との交流、親しくない人との交流)で調査した研究。一人での滞在や親しい人との交流だけでなく、学生間のより広範な交流を促進するのに適した屋外空間の設計を明らかにすることを目的とする。具体的な調査手法や詳細な結果については抄録からは確認できない。
https://doi.org/10.3130/aije.90.400
—
24GHz帯における自由空間法による建築用ガラスの特性評価
増子佑基, 遠藤哲夫, 山口晃治, 橋本修, 須賀良介
フロートガラス・Low-E・遮熱ガラスの24GHz帯における伝送特性を自由空間法で測定した研究。フロートガラスの特性は−0.7〜−3.5dB、Low-Eガラスは−19〜−33dB、遮熱ガラスは−2.6〜−9.9dBと測定。フロートガラスの比誘電率は6.9±0.05、誘電損失正接は0.02±0.003を確認。Low-Eガラス中の金属箔のシート抵抗は1.9〜14Ω/sq.と推定され、スパッタリング薄膜が高い遮蔽性能に適していることを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aije.90.412
—
パッシブデザイン手法が快適・省エネルギー性能に及ぼす影響度に関する研究(その1)
菅健太郎, 大岡龍三
パッシブ設計の影響をHVAC負荷(空調負荷)とThermal Autonomy(熱的自律性)の両方で評価することを目的とした研究。大規模コンピューターシミュレーションと多変量回帰分析により、断熱・室内蓄熱・各種日射遮蔽/取得技術などのパッシブ設計要素の影響を定量的に算出。パッシブ設計要素の影響が地域により異なることを定量的に示し、各地域で有効なパッシブ設計手法を特定。HVAC負荷とThermal Autonomyによる評価では影響が大きく異なり、時には相反する結果となることも確認した。
https://doi.org/10.3130/aije.90.419
—
天井放射パネル CFD 非定常解析における熱容量補正法及び表面温度挙動解析に関する研究
柳 建安
放射冷房パネルのCFD解析では詳細な形状再現が困難なため簡略化モデルが使用され、材料体積の変化により実際のパネルと異なる熱容量となる問題を解決する研究。この熱容量の相違により非定常解析での動的放熱・蓄熱・表面温度変動を正確に予測することが困難となるため、CFDモデルが非定常条件下で放射パネルの表面温度応答を正確に再現できる熱容量補正手法を提案した。
https://doi.org/10.3130/aije.90.428
—
猛暑日の都市域における気象擾乱を考慮した乱流場・温熱場の推定に関する研究
新井舞子, 田村哲郎, 河合英徳
都市部での熱中症予防のため熱リスク評価を目的とした研究。2018年夏の東京の極暑日において、放射・伝導モデル結合LES手法を使用し、流入乱流には気象擾乱とWRF-LES結果に基づく大気安定度を考慮。解析結果を北の丸気象観測所の観測データと比較し予測精度を確認した。WBGT(暑さ指数)が31℃以上(「危険」評価)となる状況が、高層ビルの日向・後流域など低風速域で断続的に発生することを明らかにした。
https://doi.org/10.3130/aije.90.440
—
都市計画指標・物理評価・心理評価を連携する河川景観評価に関する研究 (その7)
唐笑宇, 西名大作, 姜叡, 金田一清香, 大森 勇輝
河川景観の複雑性と開放性の心理的評価を予測するために使用できる景観要素の特徴を記述する指標を提案することを目的とした研究。先行研究で景観画像に適用可能な指標を提案し、建物と樹木の異なるパターンを示す48枚の画像を用いて心理評価実験を実施。結果に基づき樹木を含む景観画像専用の指標を追加し、最終的に緑地のある景観の複雑性と開放性を予測するのに適用される良好な性能の予測モデルを構築した。
https://doi.org/10.3130/aije.90.451
—
竹集成材のカーボンフットプリント
滿園大翔, 鷹野 敦
集成竹材(GLB)の環境特性を3つの観点で分析した研究。(1)GLBのプロダクト段階でのカーボンフットプリントとGLBの炭素貯蔵能力を評価、(2)輸送プロセスの合理化などGLB生産の低炭素対策を議論、(3)木材製品(集成材)と比較した竹とGLBの資源効率性を議論。GLBの環境負荷特性と持続可能性について包括的な評価を行った。
https://doi.org/10.3130/aije.90.463




