インタビュー

AI発信の先駆者KEITOさんが明かす情報収集の極意

本記事では、約4.7万人の登録者を持つYouTubeチャンネルにてAI関連の情報を発信しているKEITOさんにお話を伺いました。日々目まぐるしく更新される情報をどのように見て、どのように取捨選択しているのか。AIの情報発信の先駆者として発信し続けているKEITOさんだからこその感覚や考えに迫ります。

KEITOさん
YouTube:https://www.youtube.com/@keitoaiweb
X:https://twitter.com/keitowebai
生成AIやWEBに関する情報共有&勉強コミュティ:https://discord.gg/ai-aos

AI情報発信の先駆者 KEITOさん

AI × WEB YouTuber 兼 ディレクターの仕事を個人でしています。YouTubeでは主に生成AI関連の、ChatGPTや画像生成AIのMidjourney、Stable Diffusion、DALL E 3(ダリ3)などの最新情報や活用方法を発信しています。ほかにも、新しく出てきた3Dアセットを作るAIや動画生成AI等も含めて、AI関連の情報は全体的に紹介しています。

元々は会社員としてWEBディレクターの仕事をしていて、2023年の1月に独立しました。2022年の11月ごろにChatGPTが出てきて、それを使いながら仕事をしたらすごく効率よく仕事が進んだんですよ。すごく驚きましたし、感動しました。そのAI技術を以って独立することを決め、前職関連の案件をやりながら、将来の可能性を広げられるかもしれないとYouTubeでの発信を始めました。

当時はまだ生成AIがブームになっておらず、今なら先陣を切れると思いましたし、「めちゃくちゃ面白いしすごいから皆も使ってみてよ!」みたいな感覚でした。すると数ヶ月後にとんでもないAIブームが起き、その波にも上手く乗ることができて今に至ります。

でも最近はAIが当たり前の存在になってきているので、その凄さを楽しむよりも、実際にどう活用すれば実務に落とし込めるか、というような地に足をつけた発信を意識しながらやっています。

Xによる情報収集の秘訣

AIが流行る前は誰も情報発信しておらず、一次情報しかない時がありました。その頃は、Open AIなどAIの開発元の会社のブログ記事やXアカウントなどの一次情報を見て最新の情報を得て、発信していましたね。

でも、AIは今すごくブームになっているので、情報収集はXだけでも十分にできています。というのも、興味がある人が入手したAIの情報を共有して、さらにXで情報収集している人がまた発信して…とX内での情報共有の流れができているんですよね。

特に普段見ることが多い発信者は木内翔大さんチャエンさんです。こうした方々は、一次情報を翻訳したものを発信してくれていることが多いので、大元の情報を取る効率を上げることができます。

また、海外のポストを見ることも多いです。AI関連の情報や事例って海外の方の発信がすごく早いんですよ。これはAIが流行る前からずっとそうで。

例えば今は普通になってきている、「プロンプトを売る」という概念はそうでした。そんな発想がなかった時に、生成AIを使ったおしゃれな画像を100枚ぐらいまとめていて、その画像を出すためのプロンプトをまとめて1万円位で売っているのを見たんです。それが海外でバズっているのを見て、僕も取り入れてプロンプトを販売してみたところ、話題になりかなり売れたという経験があります。

なので、AIを活用する事例なんかは特に海外のポストをよく見ていますね。そのためにXのアルゴリズムはすごく意識していて、AI関連の情報の発信をしている人にしか反応しないようにしています。そのおかげで僕のXの画面はAI関連のポストだけで埋め尽くされていますね。

情報精査は冷静な目で

情報の精査ってなかなか難しいですし、感覚になってしまう部分も多いです。あえて言語化するなら、自分でAIを触ってみることで感覚を養い、情報を俯瞰して冷静に見ることだと思います。

感覚に関しては、「自分でやってみてそれができればそれは本物だ」ということの積み重ねです。僕の場合は、YouTubeで発信する中で、自分で調べたり触ってみたりアウトプットしたりして蓄積された知識や経験があります。それによって、Xなどで情報を見た時に感覚で「これは誇張しているな」とか「これは無理じゃない?」みたいなものが分かるんです。そして、そうした感覚とその情報を冷静に考えてみることで精査をしています。

例えば「AIだけで映画予告を作れます!」というポストを見たとして、本当にAIだけで映画予告として使えるようなものを作ることはできないと感覚的に判断できるんです。いくらAIがすごいと言われる世の中でも、一部にAIによる動画を使ったとしても、映画予告になるクオリティのものは、動画制作ソフトを使って作る方がずっと良いです。これは、これまでに培った感覚と、「本当にそうなのか?」と冷静に考えてみることで判断できています。

また、AIが注目を集めている今、「○○が流行っている!」みたいな情報がいろいろなところで出回っていると思います。でも、それは本当に流行っているのでしょうか。

例えば今はディープフェイクがすごく流行っている、という情報が出回っているのを目にします。でも実際はどうでしょうか。その発信者の周りでは流行っているのかもしれないですが、世間一般でも流行っているとは言えないのではないでしょうか。

「何事も疑って見ろ」とまでは言いませんが、一旦冷静に考えてみて、何が本当で何が誇張されているのかを判断するのです。地に足をつけて現実的に考えるイメージですね。

ただ、情報発信する側はやっぱりインプレッションを高めたいという気持ちがあるので、少し誇張したポストをするのも分かるんです。僕自身も、事実であることを大前提に、人の興味関心を刺激するような発信はしていますし、それが正攻法だと思います。でも、裏にある意図を理解したり推測したりして精査するようにはしていますね。

養った感覚が良い判断をもたらす

感覚の部分は、流行るか流行らないかや、良いものかそうではないものかを見定めるにも、すごく重要だと思います。

先ほども出したディープフェイクの例で言えば、出回っている動画を見てみると境界線が分かる不自然なものが多いんですよ。それで実際に自分で使ってみても、ディープフェイクだとバレバレのものができてしまう。もし、作られたものだと本当に分からないような動画が作れるなら流行るものだと分かりますが、実際そうではないから流行るものではないんだということが感覚で分かります。それが分かれば、別に流行ってないから今はそんなに追う必要もないな、という判断もできます。

逆に、本当に良いものを判断するためにも感覚は重要です。AIとは関係のない例なのですが、以前「Braveブラウザ」というブラウザアプリが話題になった時期があったんです。このアプリは機能性が良くて、広告ブロックやプライバシーをオープンにしないモードなどがあったり、高速で開けたりして、すごく良いものでした。

そのように、すごく良いものだから話題になるのも分かるな、というのを理解できるのも感覚の一つだと思います。そうすれば、得た情報の中で、何を追って何を追わないかを的確に判断することもできます。そういう意味でも、感覚を養うことはとても重要です。

「なにができるか知っている」ための情報収集

自分に必要な情報だけを取るのが理想ですが、それは無理だと思います。本当に必要な情報と必要でない情報は常に目利きしなければなりません。その中でも最速で必要な情報を取るために、圧倒的な量の情報収集が必要です。

また、仕事を奪われないためにも情報収集は大切だと思います。ただし、奪うのはAIではありません。AIを扱える人に仕事を奪われるのです。そうならないために、AIを使ってできること、できないことを理解している必要があります。

例えばエンジニアだとしたら、生成AIが組み込まれたツールを使えば、プログラムコードでエラーがあればAIに相談したり、AIが直してくれたりするんです。実務に落とし込んで使えるレベルなので、これを使えば従来より圧倒的に良いアウトプットができるんですよね。

一方で、ChatGPTでブログ記事が書ける、という情報。それを深く調べていくと、その出来上がりのレベルは低いことが分かると思います。目的にもよりますが、レベルの高い記事を作りたい場合には適さないのです。そのように、できることとそのレベルを理解して、自分の仕事に活用していく判断をすることが大切です。

これは僕の経験談でもあります。これは僕の特徴ですが、突出したクリエイティブな能力は持っていないんですよ。動画編集はできるけど、会社に納品できるような編集技術は持っていない。デザインもできるけど、デザイナーみたいなことはできない。ディレクターという仕事柄、横に広く色んな技術を知っている立場なんですよね。でも、そのような「できないけど、なにができるかは全て知っている」みたいな状況はすごく今に生きていると思っています。

AIができること、人間ができること

これからのAIへの期待として、本当に全部なんでもやってくれるようになったらいいなと思いますね。今のAIって、何でもできるにはできるんですが、求めたものではないことが多いんです。そうではなくて、求めているものが求めているクオリティで出てくるようになってほしいですね。

ただ、それってめちゃくちゃ難しくて、多分無理なことなんだと思います。というのも、「求めているもの」は人間にしか持ち合わせてない感性だったり、言葉にはできない何かだったりするんだと思うんです。

例えばWebデザインだったら、キャッチコピーを目立たせて商品に興味関心を持ってもらえて、実際に商品ページを見てくれるという導線をデザイナーさんは考えてくれます。そしてそのうえでフォントのインパクトを考えたり、背景に動画を使ったりと、いろいろなデザインをしてくれます。

でもAIってその人間の感覚って分からないんですよ。だから、キャッチコピーを目立つように一番上に置いて、その下に「商品がありますから見てください」って文章を入れて、背景はシンプルにしてキャッチコピーが目立つように…みたいになってしまう。

確かにそうすれば目立たせたいとか、見てほしいといった要望にはかなっているのかもしれないですが、でもそうじゃないんですよね。AIが人間の感性を理解できない限りは、求めたことを100%以上で出してくれることは難しいんだと思います。