用語解説

建築業界のデジタルトランスフォーメーションの基盤「BIM」とは?

日本の産業界では、第4次産業革命(Industry 4.0)や超スマート社会(Society 5.0)を実現するために、AI(人工知能)やビッグデータ、IoTやブロックチェーンといった先端技術の活用が活発化しています。先端技術を用いて、従来の方法を変革しながら新しい付加価値を創り出すことをデジタルトランスフォーメーション(DX)といいますが、この動きは建設・建築業界も例外ではありません。

人手不足や長時間労働といった建設・建築業界が抱える問題解決のために、さまざまなツールやアプリケーションが開発・導入されてきました。その中の一つであるBIMは、建設・建築業界におけるデジタルトランスフォーメーションの基盤として期待されており、国もその動きを後押ししています。

ここでは、BIMの基本的な解説から活用事例、CIMとの違いについてご説明します。

BIMとは?

BIM(Building Information Modeling)は、もともとの3D-CAD を発展させたもので、設計から施工、維持管理・運用に至る一連の工程において、建物の3次元モデルに、2次元の建物の図面情報だけでなく、建物に関するさまざまな情報を紐付けて、活用するための概念またはプラットフォームです。

ここでいう「建物に関するさまざまな情報」とは、以下の項目です。

  • 材料・部材の仕様・性能
  • コスト
  • 品質
  • プロジェクト管理情報
  • 室名・室面積
  • 仕上げなど

工程ごとに図面の作成と修正が必要である2D-CADに加え、全工程の建物のデータを一元管理して、どの工程からでも建物に関する情報を扱えるようにしたのがBIMです。

BIMとCIMの違い

BIMを調べていると、CIMという言葉に行き当たります。

BIMもCIMもそれぞれ、従来の図面や紙の資料に代わって、パソコンの中に建物や土木構造物の外観や内部構造、設備などを忠実に再現した3Dモデルを作りながら設計や施工管理、維持管理を行う手法です。しかし、BIMとCIMは活用される場面が異なります。

そもそもCIMとは?

CIM(Construction Information Modeling/Management)とは、2012(平成24)年に国土交通省によって提言された、土木分野の業務効率化を目的とした取り組みで、土木工事において、コンピューターで建築物の3次元モデルを作りながら設計・施工を進める手法です。

計画から設計、施工、維持管理の各工程における建築物の情報を一元化することで、業務や工事の効率化を図ります。同時に、公共事業の品質確保やコスト削減、環境性能の向上の達成を目指しています。

BIMとCIMの違い

先ほども少し触れましたが、各工程における建築物の情報の一元化で活用される点では、BIMもCIMも同じです。では、何が違うのでしょうか。

BIMは主に建築分野、建築・建設業界の民間企業が、個人や企業の依頼で請け負う工事に用いられます。建築分野では現在、材質や仕様、メーカー名などの属性情報をBIMモデル(コンピューター上に作成した、実在の建物と同じ立体モデル)の内部に格納する方法が主流です。

CIMは主に土木分野における公共事業で用いられます。土木分野は複雑な地形や自然を相手に工事を進めること、地権者や土地所有者、発注者、近隣住民、地元自治体、設計者、施工者など関係者が多いことが特徴です。写真や図面など、建築物の維持管理に関する情報も多いので、複数いる工事関係者に属性情報を共有する場合、CIMを用いた情報の一元化が役に立つのです。

ちなみにCIMは日本独自の呼び方であり概念なので、日本でCIMと分けているところを海外ではまとめて「BIM」と呼んでいます。こうした背景から、日本では「BIM/CIM」という呼び方もします。

BIMが注目される理由とBIM活用のメリット

BIMが注目される理由

ここ数年の建設業界では、以下の2つの課題がクローズアップされてきました。

一つは、2024(令和6)年4月から建設業にも適用される時間外労働(残業時間)の上限規制です。残業時間の上限を「原則月45時間、年360時間」と定め、年間の上限を計720時間、単月の上限を100時間未満などとし、違反企業には罰則を科す内容で2019(令和元)年に施行されました。建設業には5年間の猶予が与えられましたが、2024(令和6)年3月には終了します。また、週休2日制も達成できている企業は非常に少ないのが現状です。

もう一つは、少子高齢化による人手不足と、間近に迫りつつある建設技能者(職人)の大量離職問題です。これまでは10人で行っていた作業を7人、6人……と少ない人数でこなすことが、今後求められます。また、一般社団法人日本建設業連合会が2015(平成27)年3月に発表したレポートの中で、2014年度の50歳以上の技能労働者 153 万人のうち、7 割以上にあたる109 万人が2025 年度までに離職するという試算を発表。さらに2024年ごろからは、技能者だけでなく、ゼネコンの技術者も減っていきます。

以上の課題を解消するだけでなく、これまで人間が行っていた作業の効率を高めるため、建築・建設業界ではロボットやAI(人工知能)、ドローンを積極的に導入してきました。BIMは、そうした最新技術同様に生産性向上と省人化のためのツールとしても注目されているのです。

BIM活用のメリット

BIM の導入は、設計者だけでなく、設計から施工、施設管理までに関わる全ての技術者に以下のメリットがあります。

設計の可視化(見える化)

BIMを用いて設計することで、設計の可視化(見える化)が促進され、設計中の建物であっても、完成後の姿をいつでも簡単に閲覧可能です。また、建物各部の情報が可視化されることで、建築の専門家ではない建物のオーナーや近隣住民との間で建物に関するイメージを共有しやすいうえ、施主と近隣住民、建築を手掛ける会社、設計者や施工の元請会社と専門工事会社などの間でスムーズな合意形成、打ち合わせ回数や製作図の作成工数の減少などが期待できます。

建物情報の集約・一元化

1つのBIMモデルに建築物の設計や建築に関する情報を集約し一元管理することで、建物の統合データベースとして活用できます。設計から施工、意匠、構造、設備などの各プロセスで作成される図面の設計情報の整合性も保たれる他、図面の版管理や属性データのバージョン管理など、煩雑な作業の大幅な効率化を実現可能です。

施工段階の効率化

設計だけでなく、施工段階でもBIMは活躍します。2次元で作成したCAD図面による総合図では見落としていた不整合箇所も、BIM ツールに搭載されている干渉チェック機能の利用により、再検討や手戻りを省き、作業の効率化を図れます。また、BIM モデルと工程管理を連携させ、仮設計画や施工手順のシミュレーション、出来高管理などの実施により、工期遅延の問題解決や施工の安全性確保にも貢献可能です。

以上に挙げたメリットの他、建設コストや建物の運営・維持管理コストの削減、コミュニケーションツール(情報交換)としての活用、バーチャル建物による建物内外の干渉チェックなどがあります。

BIM活用の課題

一般社団法人日本建築士事務所協会連合会の「BIMと情報環境ワーキンググループ」が2019年3月~5月に実施した調査によると、955件の回答のうち、BIMを既に導入している建築事務所は30%(内訳:「導入済で活用中」17.1%、「導入済みだが未活用(検討中・研修中含む)12.9%」」となっています。100人以上の職員を抱える事務所では導入率が57.7%と高くなっていますが、全体的に導入済みの事務所の方が積極的に回答している可能性があり、もう少し低くなっているのが現状であると言えそうです。

BIMのメリットは多いのに、導入している企業や建築士事務所が少ないのはなぜでしょうか。日本国内のゼネコンや大手建設・建築企業では、設計・施工、デザイン業務を中心にBIM導入の動きが活発化しています。一方で、中小企業では2Dの図面データもいまだ広く利用されている事情もあり、BIM導入はあまり進んでいません。

また、ICT(Information and Communication Technology)ツールを導入してBIMの運用環境を整えても、実際に活用するにはBIMモデルにトラブルが起きたときの責任の所在、BIMの運用体制の整備やネットワークに精通した業者の手配、BIMにかかる費用など、多くの課題が存在します。BIMのメリットは豊富ですがデメリットも多いので、こうしたところもBIMの導入が増えない原因であるといえます。

参考:「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査」(2019 一般社団法人建築士事務所協会連合会)
https://www.njr.or.jp/list/01277.html

BIMの活用事例

国土交通省がBIM活用を後押ししていることもあり、BIM専用の部署を立ち上げ、ガイドラインを制定する企業、実際に現場で活用している企業が増えてきました。ここでは、BIM の活用事例をいくつかご紹介します。

株式会社大林組

ゼネコン大手の株式会社大林組は、2013(平成25)年には建築本部にBIM推進室を発足させるなど、他のゼネコンに先駆けてBIMを導入した企業です。

北海道北広島市は北海道日本ハムファイターズの本拠地の移転に伴い、2018(平成30)年に新たな球場「エスコンフィールド北海道(ES CON FIELD HOKKAIDO)」の建設を発表。大林組はエスコンフィールド北海道の設計(ただし、アメリカの設計事務所HKSとの共同設計)と施工を手掛けています。コンペの段階からBIMを導入し、コンペ時に作成したBIMモデルをそのまま基本・実施設計、生産設計、施工管理、造成工事の進捗管理まで継承し、各フェーズで情報を更新するという方法で活用しています。

日本郵政グループ

日本郵政は、グループ全体で郵便局や宿泊施設、オフィスビルなど数千を超える施設を所有しています。2012年に東京駅前にあった東京中央郵便局を、商業施設やミュージアム、オフィスフロアが入居するJP TOWERへの建て替えを皮切りに、経営の柱の一つとして不動産事業に注力。グループ内企業の日本郵政一級建築士事務所が中心となって、既存建物を対象にコンバージョン・建て替えを推進しています。

日本郵政グループの多数の検討案件に対応するため、建物の計画・設計・施工・維持保全の各フェーズにおいて、企画提案の可視化や比較、容積率や法規などの技術的なチェックに適したBIMを導入しています。

まとめ

BIMはこれまで図面だけ、フェーズやプロセスごとで管理していた建築物の情報を、設計から施工、場合によってはコンペに出展する際のイメージから施工後の建物管理まで一元管理できるシステムです。コスト面や運用面での課題は多くありますが、働き方改革や2024(令和6)年を境にさらに減少が見込まれる技術者の不足などにより、BIMを導入する企業は今後増えていくでしょう。

<参考図書>
「CIMが2時間でわかる本-コンストラクション・インフォメーション・モデリング 3Dで土木インフラの造り方はこう変わる」家入 龍太 日経BPマーケティング 2013年

「BIM その進化と活用 建築を目指す人、BIMに取り組む人のガイドブック」公益財団法人 日本建設情報技術センター(JCITC)『BIM その進化と活用』編集委員会 2016年

「図解入門 よくわかる最新BIMの基本と仕組み[第2版] 」家入 龍太 秀和システム 2019年

「BIMのかたち Society5.0へつながる建築知」日本建築学会(編)彰国社 2019年

「建設DX デジタルがもたらす建設産業のニューノーマル」木村 駿 日経BP 2020年

「建設ITガイド 2021 特集:BIM/CIM&建築BIMで実現する“建設DX”」経済調査会 2021年