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基本情報技術者試験とは? 試験内容や受験のメリットを解説

ITエンジニアを目指している人にとって、「基本情報技術者試験」はぜひ受けておきたい試験の一つです。基本情報技術者試験とは、ITを活用してさまざまなサービスや製品、システム、ソフトウェアを開発するために必要な知識と技能を問う試験です。こう書くと、ITパスポート試験と少し似ていますが、それよりは少し専門的かつ幅広い知識と技能が試されます。ITエンジニアはもちろん、DX推進を任されることになった非エンジニアにも役に立ちます。

 

本記事では、基本情報技術者試験の概要や合格のメリット、業界の評価、おすすめの参考書やYouTubeチャンネルなどをご紹介します。

 

基本情報技術者試験とは?

基本情報技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律(第7条)」に基づき実施されている、情報処理技術者試験の区分の一つです。ITを活用したサービスや製品、システムなどの開発や活用に必要な知識・技術の保有を証明する国家試験で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が試験運用を担い、経済産業省が認定します。キャリアをスタートさせたばかりのITエンジニアにとっては、受けておきたい試験の一つとも言えます。受験資格は特になく、誰でも受験可能です。

 

試験の形式と科目、合格基準

基本情報技術者試験は、受験会場に用意されたコンピュータを使用するCBT(Computer Based Testing)方式で、科目A(午前)・科目B(午後)の2科目が実施されます。2023年4月から試験を随時行っており、3カ月先の月末まで試験日時を選択可能です。事情によりコンピュータを用いる方式で受験が困難な場合、4月と10月にペーパー方式で受けられますが、科目Aと科目Bを別の日に受験することはできません。

 

科目A・科目Bともに1,000点満点の配点で、それぞれの科目で評価点が全て基準点(600点)以上を取れば合格です。

 

各科目の試験時間や出題数、出題分野は以下の表を、下記に関する詳細な内容は公式サイトをご参照ください。 

科目 試験

時間

出題数

解答数

出題形式 出題分野
科目A

(知識)

90 分 60 問 多肢選択式

(四肢択一)

テクノロジ系 コンピュータシステム、アルゴリズムとプログラミング、データベース、ネットワークなど
ストラテジ系 プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査など
マネジメント系 システム戦略、法務、企業活動、経営戦略マネジメントなど
科目B

(技能)

100 分 20 問 多肢選択式 アルゴリズム+

プログラミング

擬似言語による出題、80%
情報セキュリティ 20%

 

科目A試験免除制度とは

科目A試験免除制度とは、IPAが認定した講座を受講して修了試験に合格するなどの基準を満たせば、基本情報技術者試験の科目A試験が免除される制度です。免除有効期間は認定開始日から1年間で、基本情報技術者試験の受験申し込みの際に合わせて申請します。

 

なお、免除の申請には「修了認定者管理番号」が必要ですので、ご注意ください。

 

試験のメリット

基本情報技術者試験に合格することで、応用情報技術者試験やITストラテジスト試験などの上位試験に挑戦しやすくなる以外にもさまざまなメリットが得られます。では、合格するとどんなメリットがあるのでしょうか。

 

ITの基礎知識が体系的に身につく

 

出題内容は最近の技術、IT業界や市場の動向を反映しており、基本情報技術者試験を通してITの生きた知識が身につきます。また、Windowsのみ、Macのみといった特定のOSに限定される問題は出題されず、システム開発やソフトウェア開発管理などのIT技術の知識が幅広く学べます。また、ITエンジニアとしてステップアップするうちに、開発を管理する側として従事することもあり、ITのスキルに加えてマネジメントの知識も欠かせません。基本情報技術者試験で知識を身につけておくことは、キャリアのステップアップにもつながるのです。

 

ソフトウェア開発の基礎知識が得られる

ソフトウェア開発には、プログラミングやセキュリティ、ネットワーク、データベースなどの幅広い知識が必要です。これらの知識を一つずつ学ぶよりも、試験勉強をすることで体系的かつ効率よく身についていきます。

 

企業によっては就職や転職に影響することも

基本情報技術者試験に合格していることで、IT系・非IT系問わず就職や転職の際に有利に働くことがあります。また、入社後に新人教育の一環として受験を求める企業や、合格すると資格手当を支給したりする企業も数多くあります。

 

基本情報技術者試験が求められる場面

基本情報技術者試験は多くの技術者やエンジニアが受験しています。しかし、ここ数年は企業のDX推進に伴い、技術者やエンジニアでなくてもITの知識、それを企業のさまざまな活動に応用する力が求められるようになってきました。

 

基本情報技術者試験を受けることは、プログラミングやアルゴリズム、システム開発、セキュリティなどのITの知識に加えてプロジェクトマネジメントなどの経営の知識が身につくだけでなく、今後の企業の成長にも貢献できます。また、エンジニアであればプロジェクト参画時の商談や単価交渉が有利に進められる他、「基本情報技術者試験にパスしていること」を条件とする案件を請け負えるでしょう。

 

業界での評価

技術革新が日進月歩で進む現代では、あらゆる業種でITや情報処理の幅広い知識が求められるようになってきました。基本情報技術者試験にパスしていることを重視する企業や自治体は、IT・非IT問わず徐々に増えています。例えば、合格者に対して一時金や資格手当を支給するケース、新入社員は新卒・中途問わず受験を勧めるもしくは受験を必須にするケースなどです。そうした企業が採用試験を実施していれば、「基礎知識を持っていること」をアピールできます。

 

基本情報技術者試験の対策

基本情報技術者試験の合格率は社会人の場合52.5%、そのうちIT系は49.9%、非IT系は53.3%(データは全て2023年9月現在)となっています。決して難易度が低いわけではありませんが、十分に対策を練って勉強することで合格を目指せます。科目Aと科目Bで出題される分野が異なり、それぞれに科目評価点を600点以上取らなければ合格できないので、どちらか一方だけではなく、バランスよく勉強することが大事です。

 

ここでは、効率よく学習する方法や計画、おすすめの参考書やYouTubeチャンネルをご紹介します。

 

効率的な学習法

知識習得には、インプットとアウトプットの繰り返しが大切です。基本情報技術者試験に初めて臨む場合はまず、参考書を最後まで通読してみましょう。

 

初心者も2回以上挑戦する人も、参考書を読んだり、YouTubeの動画を観たり、スマートフォンアプリを利用したり、書き写したりと、いくつかの方法を組み合わせて自分なりの勉強方法を作っていきます。インプットをしっかり行ったら、問題集を解くこと。解いたら正解を見るだけで終わらず、その理由もきちんと確認しましょう。

 

また、科目Aでは過去問題からそのまま出題されるし、科目Bは科目Aで身につけたアルゴリズムやプログラミング、情報セキュリティに関する応用問題が出題されるので、用語を暗記し過去問題を数多くこなしましょう。

 

あとは移動時間や通勤時間、寝る前の10分などといった短い時間を利用した勉強方法もおすすめです。

 

効率的な学習計画

基本情報技術者試験を勉強するときは、まず試験日を決めましょう。そこから逆算して当日までのスケジュールを作成し、学習を進めていきましょう。試験勉強にはモチベーションを維持することも大切です。勉強内容が多く気持ちも途切れがちですが、計画の立て方や柔軟性を持たせた計画を立てるなど工夫することで、勉強への意欲を保ちやすくなります。

 

おすすめの参考書やYouTube

IPAは数年ごとに出題範囲の見直しと、シラバスの変更を実施しています。参考書は最新の情報に対応しているものを使い、新しい制度に対応していない古い参考書を使い回すのは避けましょう。YouTubeも、なるべく数年以内にアップされた解説動画をチェックするようにしましょう。

 

また、移動中や仕事の休憩中に学習したい人には、電子書籍に対応している参考書を、あまりコストをかけたくない人には解説と問題集がセットになっている参考書を選ぶとよいでしょう。

 

キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 令和05年

きたみ りゅうじ 著 技術評論社 2022年12月

『キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 令和05年』は、情報処理技術者試験本「キタミ式イラストIT塾」のシリーズのうち、基本情報技術者試験に特化している対策本です。出題範囲がかなり広くかつ専門的な知識を問われるので、プログラミングやアルゴリズムなどの仕組みや用語の意味を理解しながら、さまざまな計算問題に慣れることを目的としています。こちらの書籍は電子書籍にも対応しているので、移動中やすきま時間にスマートフォンやタブレットで読むことができます。

 

令和5年度 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集

高橋 京介 著 SBクリエイティブ 2022年

『令和5年度 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集』は、試験に合格することのみを目的に企画・構成された参考書です。章ごとに、基本情報技術者試験に過去何度も出題されている頻出の過去問と解説を掲載しています。解説には図版が多用されていて、問題集と参考書がセットになっている本を探している人に向いています。

 

情報処理教科書 出るとこだけ!基本情報技術者 科目B 第4版

橋本 祐史 著 翔泳社 2022年

『情報処理教科書 出るとこだけ!基本情報技術者 科目B 第4版』は、基本情報技術者試験の科目Bの対策に特化した参考書です。2023年4月の試験体系の変更に対応しています。IPAの公式サイトにて公開された「サンプル問題セット」の解説がついており、翔泳社の公式サイトからダウンロード可能です。

 

【基本情報技術者試験YouTuber】すーさん

チャンネル登録者数 4.14万人(2023年10月現在)

https://www.youtube.com/@kihonzyouhou

 

「【基本情報技術者試験YouTuber】すーさん」は、基本情報技術者試験の受験対策に特化したYouTubeチャンネルです。ITの知識をアニメーションで分かりやすく解説しています。科目ごと、出題分野ごとに解説動画を分けてあるうえ、2023年から実施されている新形式の解説動画もアップされているので、初めて受験する人や苦手分野を強化したい人におすすめです。

 

エンジニア養成コーチ:IT学校さいとうさん

チャンネル登録者数 4,280人(2023年10月現在)
https://www.youtube.com/channel/UCs9fwogwJdnn4wBy-Gr-K3Q

科目Aよりも難易度が上がる科目Bは、参考書でも単独で対策本が出版されているほどです。「エンジニア養成コーチ:IT学校さいとうさん」では、主に【基本情報技術者試験】科目B対策に特化した動画をアップしているチャンネルで、コミュニティ機能を使ってユーザーとコミュニケーションを取ったり、ユーザーからの質問に答えたりしています。

サンプル問題と模擬試験の活用

サンプル問題とは、出題範囲に変更があったときに、IPAが出題形式や出題割合などを参考にするために公開されている問題です。IPAでは、令和5年度及び令和元年度以前に出題された問題の一部とサンプル問題を公式サイトにて公開しています。

 

問題への対策はサンプル問題と公開されている過去問題、参考書の併用がおすすめです。

まとめ

基本情報技術者試験は、体系的にITの知識を身につけたい人だけでなく、ITエンジニアとしてキャリアをスタートさせた人、キャリアアップを図りたい人、社内のDX推進に関わることになった非IT系の職種に従事する人などに最適の国家試験です。合格すれば、応用情報技術者試験やプロジェクトマネージャ試験といった情報処理技術者試験の上位試験受験も目指せます。

 

IPAの公式サイトや参考書、YouTube動画、解説サイトなどをフルに活用し、自身のキャリアアップのためにぜひ受験してみてはいかがでしょうか。