用語解説

街のデジタル化に貢献する「BEMS(ベムス)」とは?~注目される背景と事例~

街の構成要素であるビルの管理システムにも、デジタル化の波が押し寄せています。利用者の活動の基盤となる水や電気、ガス、空気、通信の使用量の測定と制御ができているビルを「スマートビルディング」といい、スマートビルディングの中核になるシステムが「BEMS(ベムス)」です。よりよい生活を実現する基盤に変わるという観点からいうと、ビル管理をデジタル化することは、DX(デジタルトランスフォーメーション)とも捉えられます。

およそ20年前から補助金制度が整えられ、建物内のエネルギー使用を最適化する取り組みとしても注目を集める「BEMS」とは何なのでしょうか。この記事では、BEMSの基礎知識や注目されるようになった背景、事例について解説します。

BEMSとは?

BEMS(Building Energy Management System、ベムス)とは、電力や水道、ガスといったエネルギーの使用量を「見える化」するとともに、ビルの空調や照明設備で使用するエネルギー量を管理して省エネを図るシステムです。BEMSはBMS(Building Management System:ビル監視システム)にクラウド・IoTといったIT技術が組み込まれており、建設会社やビル管理会社、電機メーカーなどが独自のBEMSを開発・販売しています。

使用状況に応じて、自動で制御できるものも多くありますが、BEMSでは、次のエネルギー量を管理できます。

  • 建物が電力会社から買う商用電力
  • 太陽光発電パネルや風力発電装置、燃料電池、ガスエンジンなどによって自家発電する「創エネ」の電力
  • ビル用蓄電池や電気自動車(EV)のバッテリーなどを使って電気を貯める「蓄エネ」の電力
  • 建物内の空調や照明エレベーターなどで使う電力
  • セキュリティーシステムと連動するBA(Building Automation:ビルディングオートメーション)
  • 離れた場所にある複数のビルの電力をまとめて管理できるシステム
  • ガスや水道の使用量など

その他、夜間電力の活用によるコストダウン、時刻や季節によって電力や太陽光発電、蓄電池の充放電を使い分けることで、省エネや電カピーク時の電力の使用を控えるピークカットが可能です。

ちなみに、BEMS以外にエネルギー管理システムと呼ばれるものには、以下の表のようにさまざまな種類があります。

エネルギー管理システムの種類

HEMS(Home Energy Management System) 家庭向けのエネルギー管理システム
MEMS(Mansion Energy Management System) マンション用のエネルギー管理システム
FEMS(Factory Energy Management System) 工場向けのエネルギー管理システム
CEMS(Community/City Energy Management System) 地域のエネルギー管理システム

 

BEMSが注目される背景

地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えるために、建物内のエネルギー消費量を減らすことが求められています。BEMSは、ビルからの二酸化炭素(CO2)排出削減に大きく貢献するツールと考えられているのです。

日本では、1979年にエネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下省エネ法)や、大規模事業所に対して二酸化炭素(CO2)排出量の総量削減義務を課す条例の制定(東京都)など、二酸化炭素(CO2)の排出の抑制に取り組んできました。特に省エネ法は、京都議定書の締結などを受けて数年間隔で規制を強化しています。

京都議定書が最初に締結された年の1990年、日本における業務用ビルのCO2排出量は全体の11.4%を占めていました。2003年4月に改正された省エネ法において、BEMSの活用が盛り込まれたことで、BEMSが一気に注目されるようになったのです。

2011年の東日本大震災をはじめとした地震、ここ数年の大雨による洪水被害の増加により、業務用ビルのエネルギー使用を効率化し、省エネルギーを進めることは喫緊の課題となっています。

BEMSの導入事例

ここでは、BEMSを実際に導入した事例をいくつかご紹介します。

霞ヶ関ビルディング(施工業者:三井不動産株式会社)

霞が関ビルディングは、日本の超高層オフィスビルのパイオニア的存在です。リニューアルのタイミングに合わせてBEMSを導入。既存の高効率設備を活用しつつ、新たに導入したBEMSによって、省エネの実現にあたっての課題発見が可能になりました。

具体的には、運転管理の効率化やエネルギー管理機能の強化を実現するべく、ビル全体のエネルギー使用状況を把握することで、今まで計量できなかった負荷系統別のエネルギー消費量の分析ができるようになりました。また、倉庫や駐車場の換気ファンの間欠制御、空調機の運転制御のための温度センサーも導入したことで、大幅な省エネを達成しています。

近三ビルヂング

2011年に発生した東日本大震災に基づく節電対応を契機として、近三ビルヂングを所有する近三商事株式会社は、2012年9月に「平成23(2011)年度のエネルギー管理システム導入促進事業補助金(BEMS導入事業)」に応募。計測器の設置と配線工事に着手しました。

2013年2月に、古い分電盤設備にBEMS計測器を設置したことで、電力の見える化を実現。Webサイトからビル全体およびテナントの賃借スペースにおける電力の消費量を閲覧できるようにしました。また、2014年~2015年の耐震工事時には分電盤の回路も分岐。電力の消費量に加え、以下のエネルギー使用量が賃借スペースを利用する全てのユーザーが閲覧可能になりました。

  • 自社使用の電気使用量
  • 共用部のテナント面積按分の電気使用量
  • ビル全体の電気
  • ガス(空調熱源)、空調ポンプの電気量とデマンド

さらに、ビル全体とテナント賃借部分および共用部の電力状況を月次レポートにして、テナント利用者に渡しています。

まとめ

ビルから排出されるエネルギーの削減が求められているにもかかわらず、BEMSはあまり普及しているとは言えず、BEMS設置後も未使用のまま放置する企業が多いのが現状です。

せっかくBEMSを導入したにもかかわらず、分析したデータをどのように使用していいか分からないといった技術的な面、導入しても効果が見えにくく、BEMSを導入しなくても、省エネをある程度達成できているので、データの収集や分析ができる専門家に依頼するといったさらなる投資には二の足を踏んでいることなどがその理由です。

ビル全体のエネルギーの利用方法を見直したり、消費を抑えたりするための動きは、今後も活発化していきます。そのための方法の1つとして、BEMSの導入を検討する企業も増えていくでしょう。

 

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