用語解説

CASEとは?注目される背景や先行事例を解説

2020年、世界最大級の技術イベント「CES(Consumer Electronics Show、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2020」で、トヨタ自動車は東日本東富士工場(静岡県裾野市)の跡地に、未来都市「ウーブンシティ(Woven City:「woven」は、「織る」という意味を持つweaveの過去分詞)」の建設プロジェクトを発表しました。その時のスピーチで、ウーブンシティのコンセプトを思いついたきっかけとしてCASEに触れています。

トヨタ自動車をはじめ、自動車関連企業が注目しているCASEについて、その背景やCASEを構成する技術も含めて解説していきます。

CASEとは?

CASE(ケース)とは、2016年にパリで開催されたモーターショーにおいて、ドイツの自動車メーカーであるダイムラー社長のCEO兼メルセデス・ベンツの会長(全て当時)のディエター・ツェッチェ(Dieter Zetsche)氏が提唱した、次世代自動車産業で重要となる以下のキーワードの頭文字をとった造語です。

  • コネクテッド化(Connected)
  • 自動運転(Autonomous)
  • シェアリング&サービス(Shared & Services)
  • 電動化(Electric)

CASEはあくまで自動車業界における変化を表しているので、ライドシェアや鉄道、航空、船舶などの移動サービスはCASEの概念に含まれていません。自動運転やシェアリング、電動化といった技術はスマートシティの設計にも深く関わっています。

MaaSとCASEとの関係

CASEの発表から遡ること5年前の2011年、フィンランドのベンチャー企業で提唱されたのが「MaaS(Mobility as a Service)」です。MaaSとCASEは、どちらも自動車業界でよく用いられるようになったキーワードで、類似点と相違点があります。

<CASEとMaaSの違い>

  CASE MaaS 備考
コネクテッド 利用者のためか、事業者のためかという視点が異なる
自動運転 利用者にとって自動運転であるか否かは無関係
シェアリング MaaSにおいても既存交通を補完するシェアリングは重要
電動化 利用者にとって電動車両であるか否かは無関係
公共交通 × CASEは自動車業界用語であり公共交通は想定外
シームレス 自動車主体のCASEにシームレスという発想そのものがない
事前決済 CASEの事前決済はシェアリングなど特定分野限定
サブスクリプション CASEのサブスクリプションはシェアリングなど特定分野限定

「最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本(楠田 悦子・森口 将之 ソーテック社、2020年)」より、編集部で作成

MaaSは、人々の移動をより便利で快適に、環境に負荷を掛けずに行えるかという考えが根底にあり、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用して公共交通などの利便性をさらに高めようとしました。サービスとあるように利用者視点、社会視点の概念で、公共交通をはじめモビリティ全体を対象としています。

一方CASEは、自動車業界が今後どの分野に注力してビジネスすべきかを示した、技術視点、事業者視点の指標です。しかもモビリティ全体ではなく、あくまで自動車に限った話です。

経済産業省は、IoTやAI(人工知能)などを用いて展開されている移動サービスを「(広義の)MaaS」、CASEの「S(サービス)」の部分に関係するのがMaaSであると認識しています。

MaaS、自動運転に関してはこちらの記事もお読みください。

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CASEが注目される背景

もともと特権階級の人々のものだった自動車が大量生産され、誰もが所有できるようになってから100年あまりが経ちました。この間、自動車業界は目覚ましい進歩と発展を遂げるとともに、ユーザーの多様なニーズに応える自動車を次々とリリースしていきました。

自動車関連企業は2030年までをCASEの移行期と捉えており、さまざまな戦略を打ち出しています。CASEが自動車業界を中心に注目されるようになった背景には、自動車業界で起きているさまざまな動きや変革が大きく関係しています。

経済構造の変化

日本は現在、生産年齢人口の減少と超高齢化社会、地方から都市部への人口流出が進んでいます。これらの傾向は地方での交通の担い手不足、それに伴う路線廃止など移動手段にも大きな影響を与えており、今後も続いていくことが予想されます。

少子高齢化などの経済構造変化への対応は、自動車業界にとっても喫緊の課題となっているのです。

環境問題への対応

自動車業界は現在、「100年に一度のモビリティ革命」と呼ばれる大変革時代へと突入し、自動運転の実現と電動化を積極的に推し進めています。

20世紀は自動車の大量生産に成功し、自動車、バス、飛行機や船舶といった交通手段を誰でも選択できるようになった時代でした。一方で、世界的な人口増加に伴って、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量は年々増加傾向にあります。デジタル化や自動車の電動化、水素エンジンを搭載可能な車の開発に取り組みながら、自動車から排出される二酸化炭素の量を削減することが求められています。

車は所有からシェアする時代へ

都市部では、マイカー所有率と車の新規購入者が年々低下しています。購入にかかる費用、毎月の維持費、高額な駐車料金といったお金の部分で、二の足を踏む人が多いためです。とはいえ、「必要なときに、必要なだけ車を利用したい」というニーズもあり、カーシェアリングや車のサブスクリプションサービスも徐々に普及しています。

CASEを構成する技術

「CASEとは」の段落にて、CASEを構成する技術には4つあることをご説明しました。ここでは、4つの技術を細かく見ていきましょう。

コネクテッド(またはコネクティッドとも)(Connected)

コネクテッド(またはコネクティッドとも:Connected)とは、自動車から生成される映像データや走行データ、地図データなどのやり取りを、クラウド、サーバー、スマートフォン、タブレットなどの機器やサービスと車両に搭載した通信機器で行うことです。

Connectedという単語には「接続する、つなぐ(つながる)」という意味があります。車がインターネットなどの通信とつながって、情報のやり取りをしたり、サービスの提供を受けたりすることです。他にも車が車や人(スマートフォン)、IoTデバイス、街(インフラ)といったものがインターネットで通信してつながることも含んでいます。

CASEでは主に、コネクテッドカーを指します。コネクテッドカーとは、狭義にはICT端末機能を持った自動車ですが、広義ではスマートフォンなどのIoTデバイスと連携したり、車両の状態や周囲の道路状況、車のセンサーの情報をネットワークで集積・分析したりする機能を持つ車を意味します。

車は今後、車単体からクラウドやサーバーなどを標準搭載したIoTデバイスに生まれ変わり、車から発信されるさまざまな情報が社会のインフラ形成に大きく貢献するでしょう。

自動運転(Autonomous)

自動運転(Autonomous)は、人間が運転するときに行う認知・判断・操作の3要素をセンサーやAI(人工知能)などで置き換え、自動走行を行う技術です。CASEでは、自動運転につながる技術を搭載した「運転支援システム」、またはそうした機能を装備している車を指します。

<市販車に搭載されている主な運転支援システム>

  トヨタ 日産 ホンダ
被害軽減ブレーキ プリクラッシュセーフシステム

先行車だけでなく歩行者まで検知して、高速域でも衝突回避や被害軽減をサポート

インテリジェントブレーキアシスト

追突しそうなときに警報。衝突が避けられなくてもブレーキが作動し、被害を最小限にするようにサポート

衝突軽減ブレーキ

ミリ波レーダーと単眼カメラの検知機能で、先行車、対向車、歩行者を認織。誓報や自動ブレーキで衝突回避、被害軽減を図る

自動車線維持 レーンキーピングアシスト

道路形状(白線・黄線)をカメラが認識し、車の走行状態に応じて電動バワーステアリングを制御

レーンキープサポートシステム

道路の傾きや横風によって乱れる進路を、ハンドルに補助的な力を加えてハンドル操作を支援

車線維持支援機能

単眼カメラで車線を検知。車両が車線の中央を維持するようにステアリング操作を支援

ACC(定速走行・車間距離制御装置) レーダークルーズコントロール

ミリ波レーダーによって先行車を認識。設定した速度内で適切な車間距離を保ちながら追従走行

インテリジェントクルーズコントロール

先行車がある場合、設定した車速に応じて車が車間距離を一定に保つように制御

アダプティブ・クルーズ・コントロール

ミリ波レーダーと単眼カメラで先行車との車間距離と速度差を検知。設定した速度で先行車に追従

自動駐車 インテリジェントパーキングアシスト

駐車の際、必要なステアリング操作をアシスト。駐車枠を認識して自動でステアリング操作

インテリジェントパーキングアシスト

アラウンドモニターの映像から駐車位置を指定すると自動的にハンドル操作

スマートパーキングアシストシステム

駐車の際、自動的にハンドルがまわり運転操作を支援

参考:「いちばんやさしい人工知能ビジネスの教本」(二木 康晴・塩野 誠、インプレス社 2017)より

「自動運転」と聞くと、ボタン1つ押すだけで自動的に家から目的地に到着するイメージを抱きがちですが、車線の中央を走るように自動でハンドルが動くシステムや、設定した車速に応じて前方の車両との車間距離を自動で一定に保つシステムなど、現段階では運転機能の一部を自動化するに留まっています。

シェアリング&サービス(Shared & Services)

シェアリング&サービス(Shared & Services)は、複数の人間による家電や自転車、駐車場、住居、オフィスなどの共同利用を想定したサービスで、CASEでは自動車や自転車などを共同で利用するサービスを指します。

こうした考え方を導入しているサービスに、カーシェアリングやトヨタ自動車が展開する「KINTO」があります。

電動化(Electric)

CASEでは電動車(EV:Electric Vehicle)や自動車の電動化を指します。大気汚染問題や各国のエネルギー政策、産業政策などが主な理由です。

自動車の電動化に関しては、まず企業レベルでは、中国や環境規制の厳しいヨーロッパなどの自動車メーカーが先行しています。一方で国レベルで言うと、先進国や新興国の一部でガソリン車やディーゼル車といったエンジンを用いた新車の販売禁止政策、環境を汚染しないゼロ・エミッション車への移行政策などを打ち出しています。

今後は車を動かす燃料も、ガソリンまたはディーゼルから電気に取って代わるでしょう。

CASE導入事例

それでは、CASEの各種技術やサービスを導入した事例をいくつかご紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車はCASEの各分野において、早い時期からCASEを意識して多様な事業を展開しています。

2018年、トヨタを「自動車をつくる会社」から「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを発表。以降、ソフトバンクやNTTなどとの協業・提携、「e-Palette」(モビリティサービス専用次世代電気自動車(EV)とそのプラットフォーム)構想や「Autono-MaaS」(自動運転とMaaSをかけ合わせた造語で、移動、物流、物販など多目的に活用)事業を進めていくとしています。いずれも、モビリティサービスを見越した動きであり、2020年代半ばまでの実用化を目指しています。

株式会社デンソー

自動車部品メーカーである株式会社デンソーは、競争が激化するCASE領域の競争力を高め、全社のCASE戦略に横串を通し、開発・営業の効率化につなげる狙いから、2020年に自動運転分野とコネクテッドカー分野、それぞれに専門部署を新設しています。

また自社のソフトウェア開発人材を、2025年までに1万2,000人にすることを公表。日本や海外の拠点をフル活用し、大規模ソフトを24時間体制で開発できるようにしました。

今後の展望

テレワークやリモート授業といった通勤通学スタイルの変容、車所有へのニーズのさらなる低下、生産台数の減少など、新型コロナウイルスの流行による影響を色濃く受けています。自動車業界も例外ではなく、コロナ以前から続いている構造変革の動きはさらに勢いを増していきます。

国は自動車産業のモビリティ産業への変革を促すべく、脱炭素化・電動化に向けた対応やサプライチェーンの維持・強化など、構造変革の方向性に沿うものを重点的に支援しています。

既存の売り切りビジネスの将来像についてはさまざまな予測があるものの、モビリティ産業において、今後CASEはますます加速していくでしょう。

まとめ

CASEは、自動車業界で今後起きる改革の波を具現化したものです。2020年代は、CASEを中心に自動車業界が動くと言っても過言ではなく、通信業界や行政などの異業種を巻き込みながら、自動車や移動の概念を少しずつ変えていくでしょう。

参考書籍:
「CASE革命 2030年の自動車産業」中西 孝樹 日本経済新聞出版 2018年
「ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS&CASE」中村 尚樹 プレジデント社 2020年
「最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本」楠田 悦子・森口 将之 ソーテック社2020年
「図解入門 最新CASEがよくわかる本」神崎洋治 秀和システム 2020年
「60分でわかる! MaaS モビリティ革命(60分でわかる! IT知識)」楠田 悦子 技術評論社 2021年

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