用語解説

自動運転とは?社会課題解決の効果や、わが国での現状、事例を解説

近年、自動車メーカーのCMやニュースなどで「自動運転」の話題を目にする機会が増えてきました。

我が国の自動運転技術とはどこまで進歩していて、わたしたちがその技術・サービスを日常生活の中で享受できるようになるまでに、あとどれぐらいの年月が必要なのでしょうか?。

この記事では「自動運転」について知りたい方に向けて、その実用化までの道のりにおいて我が国でどのような課題があるのか、国内外の事例も交えて解説します。

1.自動運転とは?

近年、車の「自動運転」に関してニュースで見聞きしたり、自動車メーカーのテレビCMなど何かと話題になる場面が増えてきました。

自動運転とは、運転の主体が運転者ではなく、システムに委ねられた状態のことを指します。

これは言わば、「未来の技術」として日本国内ではまだまだ発展の途上にありますが、自動運転技術の安全性が十分に確保されれば、運転者のミスによる交通事故削減や、交通渋滞緩和につながると考えられており、政府としても、我が国の道路環境に適した自動運転技術が早期に実用化されるよう、積極的に取り組みを進めています。

さらに、「移動が変わる」「暮らしが変わる」「街が変わる」「物流が変わる」といった角度から大いに社会課題解決の効果が期待されています。

[参考]SIP cafe 〜自動運転〜 |自動運転社会を考えるコミュニティ
https://sip-cafe.media/

2.自動運転の「レベル1〜5」

政府としては自動運転技術の開発・推進にあたり、その技術段階を「レベル1〜5」に段階分けして考えています。

下記に示す図は、そのレベル分けについてまとめたものです。

現在市販されている車の多くは「レベル2」相当であり、運転主体はあくまで「ヒト」である段階です。

レベルが上っていくにつれ、運転主体は「システム」になっていきます。

[図1]自動運転のレベル分け

レベル 概要 運転主体 詳細
レベル1 システムが前後・左右のいずれかの運転操作を支援 ヒト 衝突被害軽減ブレーキやオートクルーズコントロールのように加減速の支援、または車線維持のようにハンドル操作を支援するクルマ
レベル2 システムが前後・左右の両方の運転操作を支援 ヒト 加減速支援とハンドル操作の両方を支援するクルマ。運転の責任はすべてドライバーにあり、「運転支援車」と呼ぶ。現在市販されているクルマはレベル2相当。
レベル3 特定条件下でシステムが運転制御を実施/作動継続困難時等は運転者が応答 システムの作動が困難な場合はヒト 特定の環境下において自動運転が可能。ただしシステムが自動運転を継続できない場合、ドライバーはすぐに運転に戻れる状態でなければならない。
レベル4 特定条件下でシステムが運転制御を実施/作動継続困難時等もシステムが応答 システム 決められた条件下であれば、すべての運転操作をクルマに任せることができる。
レベル5 常にシステムが運転制御を実施 システム 完全な自動運転。センサー類やAIなどの技術のさらなる進化や、法整備、交通インフラ整備等、解決すべき課題が多く、実現までには時間を要する。

[参考]
自動運転の実現に向けた警察の取組|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/NPA-initiative.pdf

自動運転ガイド|SIP cafe〜自動運転〜
https://sip-cafe.media/guide/

自動運転のレベル分けについて|国土交通省https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf

3.日本における自動運転の現状

国内各地において自動運転の実証事業も展開されていますが、やはり現時点では「レベル2」相当での運用事例が複数、見受けられます。

<例>

  • 都内 臨海副都心エリア
    …国産の自動運転車両を使用し、添乗員を配置のうえ「レベル2」相当で運行。エリア内で自動運転車両を回遊させ、新たな移動サービスの事業性、受容性、有効性の検証を行っている。令和3年11月〜12月に実施予定。
  • 横浜みなとみらい・中華街エリア
    …自動運転車両(レベル2)を用いた、オンデマンド配車サービスの実証実験。令和3年9月21日から開始予定。

その一方で、令和3年4月の道路交通法改正によって、「レベル3」までの公道走行が可能になっています。一定の条件の下であれば、運転者がハンドルから手を離すなどしてシステムに運転を任せられるようになる、ということです。

この法改正を受け、令和3年3月には国内大手自動車メーカーが「レベル3」相当の市販車をごく僅かに数量限定で販売しました。

つまり、現在の日本国内における自動運転の現状は、「レベル2」から「レベル3」への過渡期に該当する、と言えます。

 

[参考]
令和3年度 東京都による自動運転の実証実験プロジェクトが決定|SIP cafe
https://sip-cafe.media/news/6992/

日産自動車とドコモ、自動運転車両のオンデマンド配車サービス実証実験へ|SIP cafe
https://sip-cafe.media/news/6952/

ついに日本で走り出す! 自動運転“レベル3”の車が走行可能に|政府広報オンラインhttps://www.gov-online.go.jp/useful/article/202004/1.html

レベル3解禁。自動運転の実用化が見えてきた|SIP cafe
https://sip-cafe.media/column/3104/

市販車初のレベル3自動運転車、ホンダが100台限定で発売|日経クロステックhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05249/

4.自動運転はいつから実用化できるのか?

車の運転主体が「ヒト」から「システム」へと移行していく過渡期にある現在。

それでは、「レベル4」「レベル5」のようにシステムに任せられる自動運転が実現するのは一体、いつ頃なのでしょうか?

それには、2025年が一つの節目となりそうです。

次に掲げる図のように、政府は自動運転実現のためのロードマップを描いており、現在、これに沿って各地の実証実験や、自動運転車両の開発が行われている途上にあります。

[図2]政府のシナリオ

 

[出典]
自動運転の実現に向けた警察の取組|警察庁https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/NPA-initiative.pdf

[図2]の中で、2025年と2026年の境目を見ると、「自家用車」「物流サービス」「移動サービス」いずれにおいても「レベル4」の実現時期として目標に据えられていることが分かります。

これはあくまでシナリオではありますが、開発・実証実験がうまく進めば数年後には「レベル4」の自動運転車が私たちの生活の中に登場することになりそうです。

[参考]自動運転基礎知識その2|自動運転に関する政府方針https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/kisochisiki2.pdf

5.国内外の事例

ここからは、自動運転に関する国内外の事例をご紹介します。

(1)中国(雄安新区)

2017年4月に中国政府が設立を発表した国家級新区(新興開発都市)『雄安新区』。

ここでは、都市整備に合わせて自動運転専用の一般道路を整備し、自動運転の実証実験を展開しています。

さらに、この「雄安新区」と北京市を結ぶ「京雄高速道路(全長97km)」には、自動運転専用レーンを設置。

専用レーンでは、交通インフラ側から提供されるリアルタイム交通情報と、車両から取得される情報(速度等)との双方向通信(5G)により、自動運転車両の運行を支援しています。

(2)静岡県(裾野市)「Woven City」(トヨタ自動車)

トヨタ自動車は、静岡県裾野市にあるトヨタ自動車工場跡地(約70.8万m2)を利用し、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」の街づくりに取り組んでいます。

初期段階では、トヨタ従業員やプロジェクト関係者をはじめ、2000名程度の住民が暮らすことを想定。

この街の中では、道路を「自動運転車」「歩行者とパーソナルモビリティ」「歩行者のみ」の3つに分類し、それらが網の目のように織り込まれた街を構想して開発を行っています。

このうち、自動車専用道路は完全自動運転かつゼロエミッション(=排気ガスゼロ)のモビリティのみが走行する道となることを想定しています。

[参考]国内外の事例―特に生活圏への自動運転導入事例―|国土交通省https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/road_space/pdf05/03.pdf

6.まとめ

日本国内においては、「レベル4」「レベル5」のようなシステムに任せた自動運転の実現に向けて、自動運転車両そのものの開発、5G回線ネットワークの整備、道路交通法の整備など、まだまだ課題が山積している状況だと言えます。

ここ数年で見込まれている技術の進歩や、法整備に要注目です。