用語解説

BIMの推進企業を強力にサポートする「Revit」とは?

BIM(Building Information Modeling)(※)とは、パソコン上に実物と同じ形や構造(意匠)、大きさ、設備で3Dの仮想の建物を設計する手法です。BIMを推進するためのソフトウェアは数社から発売されており、なかでもアメリカのAutodesk社が開発したRevitは、ArchiCADに次いで建設業界のさまざまな事業所で使われています。

今回はRevitについて価格や使用方法、特徴などをまとめました。

▼BIMについて知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

Revitとは?

Revitは3Dモデル作成のための、BIMに特化した多機能型ソフトウェアです。建設分野だけではなく、土木分野の構造物や設備の配管まで、幅広い分野の業務に対応できます。以前は意匠設計向け、構造設計向け、設備設計向けと分かれていましたが、2016年にリリースされたRevit2017で3つの製品を統合。そのため、Revitと同じようなソフトで、日本でも導入事例が多い「ArchiCAD」からRevitに移行する建設関連企業が増えています。

Revitは単体で導入可能ですが、AutoCADやCivil3Dなど、Autodesk社製のさまざまな製品と連携して使用できます。海外の設計事務所や工場とのデータ連携がしやすく、日本市場を重視して開発された機能を多く有しています。

AutoCADとの違いは?

RevitもAutoCADも、3Dで図面を作成できるところは同じです。また、両方のソフトウェアを導入・活用している企業も多いですが、以下のポイントで相違点があります。

Revitは建物の3Dモデルを作成するためのツールを備えていますが、BIMを推進するために開発されたソフトウェアです。建築プロジェクトに関連する全ての工程で作成されたファイルを一つのソフトウェア内で管理できるうえ、設計図書(※)も作成できます。

AutoCADは2Dおよび3D図面作成のために使用される、設計および作図ツールです。AutoCADがRevitと同じようにして設計図書や配管経路の図面などを作成するときは、上述のツールセット、もしくは別のソフトウェアを使います。

※設計図書:平面図、立面図、断面図などの図面や、建具表、仕上表などのリスト類といった建物を設計する際に必要な各種書類。Revitでは、ソフトウェア内で作成した3Dモデルから半自動的に、設計図書を作成できる。

レポート作成機能

実際の建築物を3D空間にモデリングすると、モデルデータから平面図、断面図、立面図、3Dレンダリングイメージなどの図面やイメージはもちろん、負荷計算書、数量集計表、干渉チェックレポートなどさまざまなレポートを出力できます。またBIMモデルと各図面などが連動しているため、設計変更の際もBIMモデルだけを直せば関連する図面などが自動的に修正され、整合性も保たれます。それにより、複数のフェーズを経てデータを作成していたさまざまな工程を、1つのモデルで完結できるうえ、修正漏れも起きないのです。

ワークシェアリング機能

ワークシェアリングの機能により、例えば事務所と現場、国内の事務所と海外の事務所や現場など、建築意匠、構造、設備などで専門分野の設計を行うたびに、同時にかつ複数人でネットワーク通信を利用した共同作業が可能です。つまり、Revitで作成したモデルを全ての関係者で共有しながら設計を進められます。建築以外にも、衛生や空調、消防、電気などの設備の分野でも、工種ごとに分けて同時に設計できます。

また、クラウドベースのプラットフォームAutodesk BIM360を利用すると、いつでもどのデバイスからでもコンテンツやサービスにアクセスできます。

Revitが使えるシーン

建築設計

建築設計における平面図や立面図、断面図などの図面、集計表などの設計図書を作成できます。初期設計での建物パフォーマンスの最適化、コストの見積もり作成、プロジェクトと建物の存続期間にわたるパフォーマンスの監視といった解析が可能です。

構造エンジニアリング

コンクリート、鉄鋼、木材、石材、合金、複合材料など、特定の建築材料を使った建築物の、鋼材の構造設計と詳細設計のワークフローを連結できたり、正確で詳細なドキュメントを作成したりできます。また建築物の構造解析とシステム全体の構造設計、解析設計アプリケーションに解析モデルで書き出し、Revitで物理モデルを作成可能です。

機械・電気系統・配管などの設備

Revitにより、建物の着工前に、BIMモデルを使って設計意図を伝達できます。消火、空調、排換気設備、電力供給設備、上下水道や雨水排水設備などの設計、モデリング、ドキュメント作成が可能です。また、製作用にモデルレイアウトを自動化するツールを使って、機械・電気系統・配管などのモデルを作成します。

施工管理・設計

設計意図を示すモデルを再利用し、計画や着工前における決断を迅速に下すためのサポートをします。また、構造設計と詳細図面との連携に優れたツールを使用して、製作までの時間を短縮できます。Revitで作成したモデルを使うことで、事務所から現場への情報伝達がしやすくなる他、統合した製品のデータを使用して、設計以外の工程の意図も関係者に伝達可能です。

Revitの入手方法と使用方法

ここからは、Revitの入手方法と、使い始めるまでの方法をご紹介します。

(1)お使いのパソコンの動作環境を確認する

まずは現在使用中のパソコンの動作環境をチェックしましょう。
動作環境はAutodesk公式ホームページにも記載されていますので、導入を検討したらこちらもチェックしてみてください。また、30日間無料で利用できる体験版があり、実際にRevitを導入後のパソコンの動作を試してみたい方は、そちらもおすすめです。

(2)ライセンスを購入する

販売店やAutodeskのオンラインストアで、業務内容や目的に合わせて、サブスクリプションを購入します。

AutoCADと同様にRevitも永久ライセンスではなく、料金を支払って利用するサブスクリプション制に移行しました。月払い・年払いと3年の3種類から選択可能で、Autodesk社の公式Webサイトより必要な期間分購入後、ダウンロードしてお使いいただけます。費用は以下のとおりです。

1ヵ月契約:53,900円
1年契約:427,900円
3年契約:1,155,000円

(3)Autodeskのマイアカウントにサインインしてインストールする

事前登録しておいたメールアドレスにメールが届きますので、表示に従ってサインインを行い、ソフトをダウンロードします。

(4)パソコンを再起動したらRevitを起動し、利用規約に同意する

インストールの完了後、パソコンを再起動します。Revitを開くと利用規約(オートデスクプライバシーステートメント)が表示されるので、目を通して利用規約に同意すれば、Revitを利用できます。

まとめ

日本建設業連合会が2018年に実施したBIM動向調査によると、実際にBIMに取り組んでいる会社の割合は全体の70%でした。また、日経BPコンサルティングと日経BPが、RevitをはじめとしたBIMソフトウェアの活用実態を調査したところ、Revitが最も多く使われているのは建設会社で、構造設計、施工管理、解析シミュレーションで主に活用されていることが明らかとなりました。

大手ゼネコンでは、Revitで作成したBIMモデルを使って、建築確認申請の法適合審査を行うシステムの共同開発(清水建設と日本建築センター(指定確認審査機関)など、Revitの活用の動きが活発化しています。BIMに取り組む企業の増加に伴い、Revitを活用するケースが今後増えていくでしょう。

参考:
施工BIMのスタイル事例集2018
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/pdf/bimstyle_2018.pdf

BIM活用実態調査レポート2020年版
https://damassets.autodesk.net/content/dam/autodesk/www/apac/pdf/bim-report-final.pdf