インタビュー

職人やプロの動きを、いつでもどこでも~イマクリエイト株式会社~

JDXピッチの最後にご登壇いただいたのは、Tokyo Contents Business Award 2021において、動きのシェアを可能にするVRプラットフォーム「NUP(ナップ)」で優秀賞を受賞したイマクリエイト株式会社です。

職人見習いの方が職人さんの動きを完璧に自分のものにするには、師匠の動きを仔細に観察したり師匠から教えてもらったりするなどしてイメージを作り、自分の脳内に落とし込んで真似る作業を何度も繰り返す必要があります。この方法では、互いの理解に齟齬があると、間違った解釈のまま次の世代に引き継がれてしまうかもしれません。

イマクリエイト株式会社の代表取締役である山本 彰洋さんに、「NUP(ナップ)」と、
多分野にわたるVR活用の事例についてご紹介いただきました。

イマクリエイト株式会社
所在地:東京都品川区東五反田5-22-7 池田山KAY&KAY West 101号室
設立:2019年1月
事業内容:
・VR/AR/MRシステムの企画・開発・運用
・VR/AR/MRのコンサルティング
・セミナー、イベント運営


体の動きは属人的かつ感覚的――言葉で伝えきれない動きを教えられる「NUP」

山本さん:「NUP」はイマクリエイトが開発した、体の動きを3Dデータ化し共有できる
ようにするVRプラットフォームです。例えばベテランの職人やプロの動きを初心者にシェアする、といった活用ができます。

スポーツとビジネスのカテゴリで、弊社が提供するサービスに既に導入しています。コベルコE&Mと共同開発した「NUP溶接トレーニング」、自社サービスとして「NUP:診察」、「CanGolf」、「けん玉できた!VR」などがあります。

「けん玉できた!VR」を例にとってご説明します。
けん玉が上手くなりたいおじいちゃんが、ヘッドマウントディスプレイをかけてXR上で練習を重ねるうちに、けん玉が上達している。ヘッドマウントディスプレイには、けん玉のチャンピオンの動きが映し出されています。人の体の動きは属人的で分かりづらいところがあって、こういう形で可視化されると動きをそのまま真似ることができますし、加えて難易度やけん玉の場合だと球の重力も調整可能です。

人が五感から情報を取得するとき、諸説ありますが、情報量の8割が視覚、1割が聴覚と言われています。そこにVRの体験を持ってくると脳が勝手に現実と錯覚するので、「感覚を多角化して現実に」っていうところを目指しています。

職人の「守破離」をデータ化かつ可視化し、次世代の職人育成につなげる

山本さん:溶接の場合ですと、溶接中に目に当たる光が明るすぎるし、逆にマスクをかけると真っ暗で何も見えなくなってしまいます。これでは自分の手元もよく見えないうえ、
ベテランの溶接工の手の動きを学びにくいので、弊社ではコベルコE&MKobelcoグループと「NUP溶接トレーニング」というバーチャルトレーニングサービスを共同開発、共同販売しています。また、JISっていう溶接の検定試験に向けて、18種類の研修を行っています。

熟練者の動きをVR上でそのまま再現するんですが、ミリ単位の動きを再現できるのが、「NUP溶接トレーニング」の強みです。VR上に表示されたお手本にコントローラーを合わせると、直感的に動きが学べるだけでなく、実際の自分の動きにフィードバックが出るようになっています。

またさまざまな溶接の種類、同じことをやっても電流を変えると溶接の後の残り方が細いといったものも実装しています。あとは内部調整、溶接用のマスクをしているときは実際ホントに真っ暗で何も見えないんですけども、お手本を真似て明るい状態から溶接用のマスクを被った暗い状態で練習するところまでがセットになってます。

森戸さん:唯一無二の技術を持つ職人の方や技術者の動きを、いきなり一般の方が見て学ぶのはちょっと難しいですよね。「守破離」と呼ばれる基本的な型や動作に加えて、職人の方のオリジナルな動きを、段階を踏みながら訓練することもできますかね?

山本さん:職人さんの動きがレベルゼロから100まであるとしたら、NUPを使って見てる人の動きをゼロから50まで向上させるイメージです。90〜100っていうのは、職人さんのオリジナルなので、今まで見えなかったものをVRで真似てみることはできるのかなと思ってます。

大久保さん:工場等での新人研修ですごく使えそうですよね。コンテンツは個別に作り込んでいくのでしょうか?

山本さん:手の動きが多い工場などの新人研修とか、塗装や左官工事といった工事現場の
職人さんの育成とも相性がいいと思います。コンテンツは個別に作り込んでいくんですけども、8割ぐらいはわりと何か見ながら作ってる感じです。

医療分野への進出、大学・企業との積極的な協業

山本さん:コロナ禍で医療機関に実習に行けない医学生が多くいます。今のままでは、
全く患者に触れたことのない医者が生まれてしまうので、こうした危機的状況を解決するべく「NUP:診察」を開発しました。

新型コロナウイルスの影響は医療に携わる人材の教育のあり方を変えてしまいました。
今後は遠隔非接触をキーワードに、対面が主流だった研修からVRなどを使った研修が徐々に増えると思っています。既に200台以上が稼働していて東大とか京大とかいろんなところと組んでいます。

工場をオートメーション化していく中で、ロボットの性能を上げるためにも人の動きのデータをなるべくたくさん集めなくてはなりません。スキルをシェアする機会が増えていけば、医療に従事する人材育成のDX化をさらに進ませていくでしょう。


動きを学び、教える場面での問題点とは

大久保さん:スポーツの教材を作る時は、腕の振りなど速い動きも再現できるのでしょうか?

山本さん:一定程度はできますけどF1レーサーみたいな、人とものがセットで、ものすごいスピードで動いてるものは難しいですね。例えば弊社のサービスである「CanGolf」だと、
1秒間に300度ぐらい動くんですが、ある程度の速度までは取れます。。ボクシングとかなら、多分再現できるんじゃないかなと思います。

また動きの学習時には、ゲーミフィケーション(達成度のインセンティブ)との相性がよさそうとも思いました。ゲーミフィケーション的なことをやることで、モチベーションを保った状態でできるんじゃないかなって。

森戸:僕もずっと教育の世界にいて思うんですけど、こちらが喋ってるのを録画してYouTubeみたいなところで流したり、教材をPDFで共有したりするのをeラーニングですよって言われても、単純にインプットの方法を増やしてるだけで、教育のDXに合ってないなっていつも感じてるんですね。

イマクリエイトさんの場合、知識だけではなくて実技とかも全て共有できていくところがいいですね。それこそ今はGIGAスクールで小・中学校にタブレットとかパソコンが配られてますけど、イマクリエイトさんのこの技術を使って展開していけば、子供たちも学ぶことに楽しみを見出していってくれそうですよね。

山本さん:東京都の工業高校には「NUP溶接のトレーニング」が導入されているので、
今後もGIGAスクール構想の流れでどんどん導入していってもらえたらと思っています。VRのところはログを取っていて、誰がいつどれくらい何をしたか、ビフォーアフターでどれくらい上手くなったかが分かるようになってます。

弊社の「NUP」はアウトプットを意識したインプットにつながるようにコンテンツを提供している点が、他のコンテンツとの大きな差かなと。今後多言語展開をやろうとしていて、
今年アメリカに展開していく予定です。

まとめ

新型コロナウイルス感染症が流行しだしてから、3年目になりました。
いまだ収束の気配がなく、コロナ前では当たり前にあった実習や対面授業、実地研修も軒並みオンラインに切り替わったり形を変えて実施されたり注視になったりしていて、感染症の流行が落ち着くまではこの動きは続いていくことが予想されます。「NUP」は、実物に触れて学ぶ機会が減った学生たちにとっては、もうひとりの先生とも言うべき存在になりえるでしょう。

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