インタビュー

文系・未経験、新卒でSEに。”運用設計”をするエンジニアの仕事とは?|ふぁにさんインタビュー

本記事では、文系大学から新卒でIT企業にSEとして入社して間もなく4年目となるふぁにさんにお話を伺いました。ふぁにさんの仕事は”運用設計”。会社の中でもまだあまり知られていない業務だといいます。SEの中でもプログラミングをしない、インフラの構築や保守もしない運用設計とはどんなことをしているのか、どんな知識が必要なのか。日々の業務や勉強についてお話ししていただきました。

まだまだ知られていない”運用設計”の仕事

私は現在BtoBのアウトソーシング事業における、システムの運用とその運用設計や、サービス運用、それを作るためのプロジェクトマネジメントの業務をしています。あくまでも運用そのものや運用の設計なので、プログラミングやネットワークの設計などはしていません。

お客様からもらう「こういうことがしたい」という要件に沿って設計をしていくのですが、それにはシステム側の設計と運用の設計の2つがあるんです。それらを平行して進めていき、サーバーやネットワークなどの設計が進むのと一緒に、どうやったら要件を満たして運用していけるかを考えます。例えばバージョンアップであったり、バッチの配信であったり、その配信を手動でやるか自動でするかであったり…。

「SE」と聞くと、プログラミングやネットワークなどのインフラ関連の業務を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、システムの運用の設計やサービス設計という仕事も実はあるんです。私も入社して配属されてから初めて知りました。

そもそも、”運用のために設計をする”という考え方を知らない人が多くいます。お客様のシステムを今後運用する、となったら、それをどうやっていくのか考えないといけないんですが、なかなかその運用設計にはスポットライトが当たらないんですよね。もし運用設計なしに運用してしまうと、その方針や認識に齟齬が生じるなどして、お客様のシステム運用に影響を及ぼす自体になりかねません。そういう事態を避けるためにも運用設計は必要なんですが、会社の中でもまだまだ知られていない業務なのかなと思っています。

現在の働き方やスケジュール

今は週1~3日くらいで出社、それ以外は在宅勤務をしています。出社の時は7時半くらいに家を出て9時から業務開始、在宅の時は8時から業務を始めていますね。先月や今月で言うと残業は20時間くらいで、1日1時間ほど残業をして19時前後に終業します。

日々の業務としては、週の1/3くらいはお客様のシステムを運用するうえでの課題や進捗の確認をする定例の打ち合わせです。あとは、いつも1日に1~2時間ほど会議があるので、そのためのドキュメント準備や定例作業をしています。ひとりでもくもくとドキュメントを作るなどの作業をしていることもありますが、そのレビューなどもあるので、大体1日の半分くらいは人とコミュニケーションをとる時間になっていると思います。

「もっと良く」を追求するのが仕事の醍醐味

運用業務はミスをしないのが当たり前で、そのうえでどれだけ「効率良く」「品質良く」設計や運用をすることや、求められていることを100%をやりつつ、もっと良くできないかを考えて実行していくのが面白いと思っています。

また、プロジェクトマネージャーの業務は、決まった納期に合わせてスケジュールを逆算して考えたり、遅延が発生した場合に「どうやって」「いつまでに」取り戻して対応するかを考えたりして、納期にサービスインを必ずきっちりさせることがすごくやりがいに感じています。

あと、ひとりでは動かせない金額を動かせることも面白いところですね。今主担当で対応している案件が3つあり、半期で大体1500万くらいの売上ができるんです。そして運用はストック事業で、ずっと運用業務を受託すればその分継続的に売上を取ることができるんですよ。より品質を上げること、期待されている100%を出すことは当たり前で、さらに良くすれば継続して受託できて…という好循環で儲けを出せるのが面白いです。

コロナ禍をきっかけに、航空業界志望からIT業界へ

こうしてSEになったのは、もともと志望していた航空業界がコロナ禍で軒並み採用停止になって泣く泣くIT業界を選んだっていうのが正直なところです。4年次の8月でもまだ採用活動をしているところがIT系が多かったんです。その中でも、メーカー系で母体がしっかりしていることと、基本的にプログラミングをしないSIerであることを基準に会社を選び、最初に内定をもらったところに入社しました。

就活の始めの頃は、消去法でIT系を一番最初に消していて、本来選ばない職業だったんです。でもこうしてIT業界でSEをやってみて初めてこういう仕事があることを知り、この選択をしなかったら見れない景色が見れたことは、自分の人生において良かったなと思っています。

勉強したこと、勉強しておけばよかったこと

入社前~入社後は、これらの勉強をしてきました。

・ITパスポート(大学1年 2017年1月)
・TOEIC 830点(大学在学時)
・基本情報技術者(入社1年目 2021年11月)
・簿記3級(入社1年目 2021年3月)
・ITIL 4 Foundation (入社2年目 2022年10月)
・Microsoft Azure Foundation (入社3年目 2023年4月)
・応用情報技術者(入社3年目 2023年10月)

ITパスポートは授業の関係で大学生の時に取ってはいましたが、会社から指定はなかったので、入社前は特にITの勉強はしていませんでした。入社後は、どの資格を取るか上司と相談して、会社からお金を出してもらって勉強しています。業務に関わるものを選んでいるので、基本的にはどの勉強も役立っていますね。ITILはITサービスマネジメントのベストプラクティスを体系化したもので、それを使って動く部署なので必要ですし、現在Azureを使用したユーザ向けサービスデスクの運用管理者を担当しているので、それらの資格は特に業務に直結しています。

基本情報や応用情報も、技術的な基礎知識や、問題課題への考え方として役立っています。それに、お客様がSIerを選ぶ際の入札要件に「応用情報技術者」がある場合があるので、参加できるプロジェクトが増えるという意味でも役立っていますね。

今は、今年度中に「Microsoft Azure Administrator」の取得と、5年目までに「ITサービスマネージャー」というITサービスのシステム設計、開発構築、運用における高度情報処理技術者の資格の取得を目指しています。

逆に、入社前にこれをしておけば良かったと思うのが簿記の資格取得ですね。会社のお金の動きを理解するために最低限必要ですし、プロジェクトを動かしていくにあたって外注費や自分の工数と費用と睨めっこしたり、人件費がどれくらいまで下げられるかなどを考えたりしていて、そこに簿記の知識が必要になってきます。仕事をしながら資格の勉強をするのは大変なので、とっておいた方が良かったなと思っています。

自分の知識に落とし込むための勉強のコツ

勉強は、仕事の後にしたくなかったので、まずあまり仕事の外でしようとは思っていないんです。なので、「自分の業務だったら…」と脳内変換をして、具体的に理解して覚えるのを特に意識してやっています。実際、応用情報技術者試験の午後試験は実務により近い内容なので、そういうことを自分の中で蓄えながらやっていたのは結構理にかなった方法だったのかなと思っています。

あとはとにかくアウトプットですね。参考書を読むなどのインプットは3割、アウトプットが7割くらいにしていて、実例を交えながら自分の言葉で説明できるようになることを意識しています。アウトプットはOne Noteを使って、「どのように対応したか」や「どういう背景やシチュエーションでそのことが起きたのか」などをあとで見返せるように記録して整理します。また、何かやり方などを教えてもらったら、メモを残してそれも自分の言葉で説明できるように整理します。

上司からは今は圧倒的に経験が足りてないと言われてるので、もうほぼ100%実務での経験がメインになっていますね。知識はそれの補助と考えていて、勉強はあくまでもわからない単語ができてきたら、その都度調べるくらいです。

一つ一つ知識や経験を積み重ね、”未経験・文系”を乗り越える

最初は単純に技術の知識がなかったので、配属されてすぐにアサインされたプロジェクトで製品の名前や技術的な話に全くついていけず、お手上げ状態でした。少し知識があってなんとなく分かるという同期がいるのに対し、私はそうじゃなかったので、単語をひとつずつ全部調べていくのは結構大変でしたね。でも今もそうなので、出てきた単語をひとつずつ調べて常に勉強をしていく大変さはあります。

そんな中でも、できなかったことができるようになるのが嬉しくて、モチベーションになっています。話についていけるようになるにはどうしたら良いかを考えてやってみて、少し分かるようになってきた、少し自分から発言できるようになってきた…。そうやってひとつひとつ段階を踏んでいくのが楽しいです。今も目標を決めて同じようにやっています。

文系だから、未経験だからエンジニアは難しい、といったことはなく、その人次第だと思います。私の同期には理系の中でも医学系(化学系)がいて、理系でもITと離れた分野の人もいるんです。なので、理系かどうかや経験/未経験もあまり関係がないと思っています。