インタビュー

医療に従事する人材に、3次元教材を~Holoeyes株式会社~

新型コロナウイルスの流行は、対面授業を主流としていた学校教育のあり方を大きく変えました。なかでも、医療従事者を育成する学校では実習の機会が激減し、授業の多くがオンラインに切り替わっていきました。立体になっている人間の体は、教科書だと具体的なイメージがわきづらく、人によっては理解も進みにくいので、立体模型を見つつ頭の中に人体のイメージを落とし込むことが必要です。

そんな状況に一石を投じる製品が「Holoeyes Edu(ホロアイズエデュ)」です。
Holoeyes株式会社が開発した3DのスマートフォンVRアプリで、Tokyo Contents Business Award 2021で奨励賞を受賞しました。Holoeyes株式会社の取締役 兼 CTOである谷口 直嗣さんにご説明いただきました。

登壇いただいた方:谷口 直嗣さん(Holoeyes株式会社取締役 兼 CTO)
モデレーター:森戸裕一(一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会)アシスタント:大久保誠子さん(九州DX研究会、富士通ジャパンの福岡支社)

Holoeyes株式会社
所在地:東京都港区南青山2-17-3 モーリンビル303
設立:2016年10月
事業内容:
1.医療領域における、臨床・トレーニング・教育向けVRアプリ等開発及びサービス事業
2.医療領域における、臨床・トレーニング・教育向けデータ提供サービス事業

医療分野の人材不足に貢献するVRアプリ「Holoeyes Edu」と開発背景

谷口さん:弊社は、スマートフォンのVRを活用した解剖教育コンテンツ制作&配信プラットフォーム「Holoeyes Edu」を提供しております。「Holoeyes Edu」は、国立看護大学や看護の専門学校で導入試験をはじめています。

2025年問題は、「団塊の世代」と言われる人たちが2025年に75歳に到達すると、看護師や医師などのヘルスケアに従事する人材が少なくなる問題で、2017年頃から言われています。追い打ちをかけるように2020年〜2022年、コロナの影響で病院に行けなくなって看護師や
医師の実習機会が減り、オンラインでの授業が増えてますと。さらに外科医に関しては、
医師の中でもわりとハードワークな部類に入ることから、外科医のなり手が不足していて年々減少傾向にあるのが現状です。

医療系人材の課題に加え、3次元の人間の体を紙の2次元の教科書で学んでいるという、
文字通りのギャップがあるために看護医療で解剖を苦手とする学生が多いです。

こうした背景から、デジタル技術による教育のアップデートが必要であると考え、
スマートフォンのVR「Holoeyes Edu」を開発するに至りました。

「Holoeyes Edu」では、解剖を解説する身ぶり手ぶり、音声を同時に収録できます。
またVR空間に描いた補助線も再現できます。で弊社のVRアプリを使って作ったVRの教材データを、弊社の専用ウェブサイトにアップロードすると、即座に「Holoeyes Edu」に配信されます。配信された解剖の解説は、スマートフォンアプリで3DVRで見ることができます。まるで先生が、自分の目の前で模型を使って指し示してくれるような形で学ぶことが可能です。


歯科医療で実施している遠隔医療の実証実験

大久保さん:看護の分野では教育に使う画像や映像を撮り溜めてe ラーニング形式でっていうことをやってるんですけど、人体は立体なので、画像や映像だけだとどうしても限界がある。そこをこういったVRアプリで補ってくれるのは凄くいいなと思いました。離島や山間地などの僻地に赴任した医師と、大学病院の間での合同カンファレンスなどに5Gを応用できる可能性といいますか、そういった事例や使い方ってありますか。

谷口さん:弊社は別売りで遠隔カンファレンス機能をVRアプリにつけられます。オプションとして購入されている施設もあれば、5Gのユースケースとして実験で利用したケースもあります。

例えば歯科の領域なんですけれども、大阪のある歯科クリニックと、東京のソフトバンクのオフィスをつないで、経験のある東京の歯科医が大阪の歯科医にインプラントの指導をしました。あとはシンガポールのSingTel(シングテル)というキャリアと、四谷にあるドコモのラボをつないで、5Gでシンガポールと東京を繋いで新しい歯科器具をVRの空間の中で解説するという実証実験をした事例があります。

現在は敷地の広い病院の中では5Gの届く場所が無い一方で、大通りに面している歯科クリニックは5Gの電波が入るクリニックがあるという事で、歯科での実証実験をまず行いました。

大久保さん:結構大きい病院さんとかだとローカル5Gを引いてるところあるんですけど、
確かに今おっしゃられているように、敷地広過ぎるから病院の中だと電波問題、結構確かにありますね。

谷口さん:病院の中に5Gのアンテナが架設されれば、そういった問題は解決されると思っています。


学研HDが主催する投資プロジェクトからCVC投資を受ける

谷口さん:弊社は2022年2月に、学研ホールディングスが運営する投資プロジェクト「Gakken Innovation-Tech Fund(Gakken Capital)」において、株式会社学研ホールディングスからCVC投資を受けました。学研さんに関しては、学研メディカル秀潤社という
看護師や医師向けの雑誌・教科書を販売している会社と、学研メディカルサポートという、
病院向けに看護師のeラーニングシステムを導入してる会社と弊社で、既存の事業と弊社のVRコンテンツを組み合わせて新しいデジタル事業を作って行きます。

森戸:学研っていうと、教科書とか書籍のイメージが強いんですけれども。今、学研さんでは介護というか医療に関する事業が半分以上を占めていて、CVC投資もそういうふうな形で出資を決められたんですね。

警察、法医学者も激減しているので、経験の少ない法医解剖のサポートや検視官研修、
法医学解剖とかでも使えそうですね。

谷口さん:非常に興味深いところですね。ただあまりそういうユースケースはなくて、
おそらく殺人とかでどうなったみたいな場合、可能であれば死体をCTで撮るところから再構成して、死体が受けたダメージなり死因なりをサンプルとして保存・運用していくっていう可能性はあるかもしれませんね。

症例データの教育への活用と今後

森戸:実際に教育のコンテンツを作るときに、こういうふうな3DのVRを使っていくと、
コンテンツの価格的にも若干高くなると思うので、例えばですけど伝統文化の技術伝承とかに使うのは若干難しいところありますかね。

谷口さん:弊社の手術支援事業で得た実際の症例のデータ、3次元データを教育に利用していくことを今考えています。いずれはデータベースにして、データの流通を最終的なゴールと捉えていて、データの改ざんを防ぐためにブロックチェーン(※)の技術の導入も検討中です。実際のいろんな症例のデータを使って勉強していただくようになると、症例データの
生態系、エコシステムが生まれるなと思ってます。

あとは手術予定患者への事前説明にも使えると医師の評価を得ています。マネタイズが今後の課題です。

森戸:システムだけで全部完結するものでもないし、逆にシステムがなくなるものでもないので、こういったソリューションとシステムとを、いかに組み合わせながら患者様と地域社会に貢献できるシステムを、みんなで力を合わせてご提案できるかが肝になっていくんでしょうね。

まとめ

世の中に無数にある教育のコンテンツの中には、ケースバイケースでコンテンツを増減するなど、教育の仕組みだけではサポートできないところもたくさんあります。教材を映像化してデジタルで残せるだけでなく、自由にコンテンツを加えられる「Holoeyes Edu」は、
今後看護や医療の分野に限らず、さまざまな分野での活用が期待されています。

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